取材日記

税金のむだ遣いについて取材過程を書いてます。かなりきわどいことも書いてるので他言無用。

ミント機構。

2005-07-05 | Weblog
ミント機構と書くとなんとなくかわいいけど。実際は民都機構。民間都市開発推進機構。

民都機構について調べてたら、こんな記述が出てきた。

 国土交通省所管の財団法人 「民間都市開発推進機構」 のいわゆる “民都事業” が “赤字” をたれ流しているという。「政府保証のもと金融機関から資金を借り受け、民間企業の遊休地を買い上げ、活性化して民間企業に買い戻させるという事業だが、とっくに破綻している。 結局、役人の天下りのための法人でしかなかった」 (社会部記者)

役人が天下ってるといのは本当。常勤役員8人中7人が元役人。当然、国土交通省がその大半を占めている。赤字を垂れ流しているかどうかは、まずBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)を見る。資産は1兆1394億円、負債は1兆544億円で850億円ほど正味財産がある。収支も4千万円ほどの黒字。現段階ではすぐに債務超過という話ではないので、「赤字を垂れ流している」というのは言い過ぎ。ただし、結構リスクの高い事業をしているのは間違いないので、会計検査院の指摘と東京新聞の特報記事を引用しながら実態について見ていきたい。

まず、この民都機構の事業について。民間企業が持つ遊休地を民都機構が購入、企業はその土地で事業を始め、10年内に売却価格に維持経費を加えた値段で土地を買い戻す制度として1994年度から2004年度まで実施された。企業は不良債権を切り離すこともでき、企業や土地を担保に融資をしてきた金融機関の救済策だとの批判もあった。

要するにバブル崩壊後に企業が持て余した土地について、開発計画のめどが立つまで民都機構が預かりますよ。その間の費用は国が最終的には責任を持ちます。バブル崩壊後の土地の流動化にはそれくらいやらなきゃだめでしょ。っていうのがこの法人の設立趣旨。民都機構が民間企業に買い戻してもらうときの価格は、民都機構の取得価格に税金、利息などを足した金額なので、基本的には民都機構は損をしない仕組みになっている。

でも、民都機構が土地を持っている間に売主の民間企業が倒産した場合にどうなるのか?
この場合は、民都機構が土地を抱えることになる可能性がある。しかも、その土地の時価が取得時よりも下がっていたら、当然機構は損をする。

九州産交のケースがこれに近い。東京新聞の記事を少し改変した。

1995年10月、九州産交は民都に土地を売却した。九州産交の売却益は約75億円に上ったが、いずれは土地を買い戻す制度である以上、返さなければならない「借金」だった。同社は民都に、この土地で「専門店中心の複合商業施設を開発」する事業計画を提出したが、実際は「事業計画は青写真の段階で止まっていた」(同社関係者)という。

そして、同社は土地売却から8年後の2003年、本業のバス事業の行き詰まりから、約27億円の実質債務超過に陥り、再生機構の支援先第一号となる。本来であれば九州産交は土地を買い戻さなければならないが、買い戻すお金はない。民都がこの土地を保有していた間に、地価下落は進み、土地は売れたものの民都機構は約36億円の損失を出した。取得したときの半分しか手元に戻っていない計算になる。民都機構は損失を内部留保を取り崩して処理した。

民都機構に損失が出たケースはほかに三件あり、その額は約83億円(ただし、平成15年の会計検査院の指摘では3件で118億円)に上る。いずれも、民都に土地を売却した民間企業が倒産してしまい、民都の手に残された土地を第三者の企業が購入したケースだ。

これだけだと、民都機構全体の経営状況が見えないので、会計検査院の指摘を精査してみる。民都機構が取得した土地は全部で222件。このうち148件が事業に着手しているので、全くでたらめな事業をやっているわけではない。

ただ、民都機構が持っている土地で、まだ事業に着手していない土地が53件ある。しかも、5年以上手をつけられていないものが46件。取得金額は2360億円。未着工の理由が危ない。地価の下落、市況の悪化等により事業の採算性の確保が困難になったことや事業施行予定者の経営状況が悪化したことなどによるっていうのは、九州産交の例と似ている。

最初に見たように、民都機構の正味資産は850億円なので、もし、この2360億円の半分が焦げ付くと債務超過に陥ってしまう。そうなると、政府が債務保証をしているので、税金で処理する可能性も否定できない。。。赤字垂れ流しではないけど、結構リスキーな状況には違いない。あと数年で問題が表面化する可能性があるので要注意かも。