日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

言明について Ⅱ

2013年09月13日 | 日記

言明について Ⅱ


A.今日は、日本維新の会(以下、維新と略記します)の綱領を取り上げます。

 

1.同綱領は言います。

 

a.日本は今、国際的な大競争時代の中で、多くの分野で停滞あるいは弱体化し、国民

は多くの不安を抱えている。

 

b.この大競争時代の中で、国民の安全、生活の豊かさ、伝統的価値や文化などの国益

を守り、かつ世界に伍していくためには、より効率的で自律分散した統治機構を確立す

ることが急務である。

 

c.なぜなら、20世紀には長所とされた中央集権、官僚主義、護送船団型の国家運営

が、脱工業化と情報化が急速に進む今や、成長の大きな妨げとなっているからである。

 

2.維新の主張の核は、上記b.にあります。よって、これを検討します。

 

α.彼らの時代認識は、「大競争時代」です。政党の綱領として見た場合、この言葉は

既に古く、彼らは、日本をリードし世界と伍して行くことはできません。これについて

は、あとで触れます。

 

β.彼らは、「自律分散した統治機構を確立する」、と言います。「自律分散した統治

機構」とは、何でしょう?「統治」とは何でしょう。ここには、私が、「思考の傲

慢」、「思惟の不遜」と呼んだものと同様の態度が現われています。

 

γ.コーポレート・ガバナンスという言葉があります。しかし、これは私企業のあり方

をいう言葉です。そして、企業では現在、コーポレート・ガバナンスを、企業の法令遵

守や企業の社会的責任と共に統一的に語ります。

 

δ.しかし、綱領が対象にしているのは、国民です。現在、日本では国民主権の考え方

が定着しています。言葉にすれば、「国民は主権者である」となります。

 

ε.「統治」という言葉は、主語(統治者)で使っても、述語(統治する)で使って

も、そこには統治の対象が必要となります。それは誰でしょう?ここでは、国民が対象

とされています。これは、国民主権と相容(あいい)れません。また、「統治機構」の

統治者とは誰なのでしょうか? 選挙で選ばれた「首長」が意図されていますが、同時に

この首長は統治する「首長」です。こうして選ばれた「首長」が、独裁者となった例

を、私達は何人も知っています。この綱領の起草者は、そういう意図はないというかも

しれません。しかし、文面はそれを語っているのです。そして、首相公選によって、

「統治」する首相を作るというのが、この会の意図であり目的です。そしてまた、「統

治」という言葉には、極めて侵略主義的な内容を含むという事も、付け加えておかなけ

ればなりません。こういう政体を私達は必要としません。

 

ζ.この会は、NHKの大河ドラマの「竜馬ブーム=明治維新ブーム」に便乗して登場

したグループです。民主党の菅元首相でさえ、自分の内閣に「奇兵隊内閣」と命名した

程です。如何にブームが凄まじいものであったか分かります。国民の多くが維新の志士

達の心意気を持ちました。しかし、皆さん、目を覚(さ)ましてください。綱領の内容

は時代錯誤のそれでしかありません。もし、政治を志(こころざ)されるなら、ブーム

に便乗するのではなく、自分で政党を作るというぐらいの心根で「政治とは何か」を考

えられ、始められたら良いと思います。

 

B.世界の趨勢

 

1.今、世界の国々は一国では何事もなし得ない時代に入りました。

 

2.世界の1次エネルギー消費量は、1975年を100とすると、2010年に2倍

に増加し、2035年には約2,8倍に増加すると見込まれています。

(1975:6030Mtoe, 2010:12380Mtoe, 2035:16730 Mtoe  Mtoe:石油換算

100万トン、出所:IEEJ world energy outlook 2012

 

3.今年は、日本に限って言っても、太平洋沿岸、日本海沿岸の海水温は、1℃以上、

上昇しており(出所:気象庁「海面水温、海流 2013年8月中旬」データー)、気象の

異常をはっきりと感じさせます。そして、漁業では水揚げされる魚の種類に変化があっ

たと言われています。

 

4.経済は、昔から、一国だけの問題ではありません。これが更に、リーマンショック

後の世界金融危機から、各国は、話し合って問題を解決しようという態度を示すように

なりました。ギリシャ危機が良い例です。

 

5.今回の、シリアの毒ガス使用をめぐる問題も、従来の軍事行動によるその国の破壊

→再建というパターンとは異なった解決の方法を取るものと思われます。即ち、話し合

いによるベストの選択です。

 

6.昔、資本のグローバル化ということが言われました。この認識は今も変わらないと

思います。同時に「大競争時代」と言われた時もありました。と言っても、この言葉は

まだ生きているようです。

安倍首相が、本年4月19日の「成長戦略スピーチ」で使っていらっしゃいました。企

業が新卒採用情報で使っています。

 

7.これに加えて、10年程前(2002年)、私が、慶應義塾を卒業させてもらった

時、安西塾長が卒業式で、はなむけの言葉として「勇気」と「共生」という言葉を、卒

業生に贈られました。

 

8.安西塾長の先見の明は当然のこととして、人類は、今、自らに課題を与えていま

す。気象を含む自然、環境、資源です。(これに、食料と人口を加えることもできます

が、マルサスの例を持ち出すまでもなく、これについてはあまり心配していません。食

料は大地農法から工場農法へ転換すれば生産は飛躍的に増すと思っています)。

 

9.これらの問題の解決は、地球的規模の国々の何年にも亘(わた)る協力を必要とし

ます。決して一国では解決しません。このことを考えると、これからの時代を言い表わ

すには、「地球融合時代」という言葉がふさわしいと思っています。そして、私達は、

それらの課題を解決するためのモデルを、すでに知っています。国際宇宙ステーション

がそれです。今日、NASAのボイジャー1号が、太陽圏を抜けて星間空間に入ったこ

とを、ニュースは伝えています。

 

10.そして、時代は、世界の国々の協力という大きな流れの中に、古い時代のイデオ

ロギー (注: 「価値観」と書いていたものを「イデオロギー」に変更致しました。価

値の意識には、私達が歴史の中で引き継いできた、特に意識しなくても蓄積された「そ

れを善し」とするものがあります。こういったものは人々の多様性としてこれからも継

承されて行くものであろう思います。そう言ったものとの混同や、誤解を避けるため、

より限定的に「イデオロギー」と致しました。 2013.9.14 ) に固執する勢力が引き起

こすコンフリクト(衝突)が表層で渦巻いて進んでいくものと思われます。

 

 

         ツユクサ


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