日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

NHKスペシャル「人工知能の可能性」が見せたもの

2016年05月21日 | 日記

NHKスペシャル「人工知能の可能性」が見せたもの

 

1.先日(2016年5月15日、日曜)、NHKスペシャルで人工知能開発の現在を

報道しました。将棋界の第一人者でいらっしゃる羽生善治氏が、人工知能開発のトップ

スペシャリストと対談され、また、ロボットに触れられることで、その開発の今を視聴

者に届けようという番組でした。御覧になられた方も多いと思います。

 

2.特に次の二つのシーンには感銘を受けました。メーカーの紹介はありませんでした

が、形から言ってソニーのロボット(後記:これを書いた時は、ソニーと思いました

が、その時の記憶に残る形状からしてシャープと思われます。訂正いたします。

2019.8.27)です。最初のシーンは、ロボットは、机の上に置かれた状態にあります。

羽生さんに「こっちへ来て」と言われても、(ロボットは、机から落ちると判断して)

進むことができず、「受け止めてあげる」と言われて、彼(彼女)は、机の上を進みま

す。そして、机から落ちたところを、羽生さんに抱き留めてもらいます。2番目は、も

う一体のロボット(以下、これをBとし、先ほどのロボットをAとします)が登場し

す。Bは、積み木を重ねて構造物を幾(いく)つか作り、それをAに教えます。そし

て、ここに人間のスタッフが登場し、Bの作った構造物を壊せと命令します。ロボット

Aは、これはロボットBが一生懸命作ったものだと言って、壊しません。この命令が何

回か繰り返されます。そしてついに、Aは体を床に丸めて泣き出してしまいます。

  

3.これは人間の感情そのものです。最初は「信頼」、次も「信頼」とか、「友情」と

か「連帯」とかと言う、友人の努力の結果や、愛するものを無体に壊すことはできない

と思う気持ちです。さらに言えば、ここにAとBの「信頼」や「友情」を壊そうとする

命令が加えられると、(AとBには)葛藤が生じます。これは人間の歴史でもありま

す。人間は、例えば戦争で、人を殺せと命令されてそれを行い、建物を破壊しろと命令

されてそれを行います。そして一方、私たち人間はそれに対する葛藤を持ちます。これ

は、二つの方法で表現されます。一つは行為者の自責として、一つは行為される側の非

難と行為者に対する闘争としてです。

 

4.これを考える時、ここではすでに戦争と規定しているのだから、後者の行為は正当

な行為であり葛藤の範疇には入らないという論理は多々起こります。そうすると前者の

自責も不必要なものとして正当化(自責しないことを正当化)されてしまいます。そし

て、この際限のない戦いを繰り返しているのが現代の世界です。希望は持てないのでし

ょうか?希望はあります。人間はどういう訳か反省するのです。だがしかし、この行為

と反省は、国の違い、民族の違い、宗教の違いによってなかなか一致しません。またそ

して、ここで「反省」という概念を持ち出して、現代の戦争と現実を、「戦争→葛藤→

勝敗の決着→反省→和解」と、プロセスはこの通りなのですが、人間(相手・他者)へ

の理想主義的、かつ、主観主義的な期待で甘く考えないためにも、私たちは、「テロリ

ズムを根絶するまで戦いは続く」という強い決意とメッセージを世界の人々と共有する

必要があります。反省は1925年のジュネーブ議定書において化学兵器の使用を禁止

させました。「テロリズムを根絶する」という決意は、これを書いている者に、おそら

く第2次世界大戦における、日本に対する連合国の態度もこのようなものであったのだ

ろうと思わせます。とは言え、私は日本人ですから、日本人は大戦に至るまでの過程で

その選択と方法に誤りを重ね、太平洋の島々に展開した軍の戦闘にも正規戦で臨んだそ

の方法に疑問を持つものの、一つ一つの戦闘でのその戦いぶりを恥じるものではありま

せん。このように書いたとて私は軍国主義者でも排外主義者でもありません。自由主義

者です。

 

5.日本の技術者が作り上げているロボットの人工知能の素晴らしい現状を考える時、

話は、戦争にまで及びます。ロボットが人間の友であり、宇宙を含む社会の発展に寄与

する存在とさせるというその未来を考えれば、今後、私たちは、ロボットを戦争で使用

しない国際条約を作らなければならなくなるでしょう。中国も北朝鮮も、現在のように

一つの党と指導部による独裁が行われる国家から、言論と批判を行うことが自由であ

り、人々の基本的人権を保障する民主国家へと、やがて間もなく生まれ変わるでしょ

う。これを言う根拠は、私がマルクスの思考は誤りであると考えることができたよう

に、中国と北朝鮮の人々の能力を、私は信ずるからです。私たちは、些末にとらわれず

(とは言え、情報の発信と、社会を変える勇気の息吹は彼らに送り続けなければなりま

せん)、1000年、2000年、4000年、10000年の歴史の流れの中で、私

たちが生き残ることができる主権国家日本と世界の変遷をイメージして進んで行かなけ

ればなりません。これらの社会をイメージできることと、分からないと思うことの差は

大きいと思います。そしてベターなものを選択する思考の訓練を重ねることです。そし

て、私たちが選択する社会に通る一本の筋は自由主義です。私たちは、この思考も進め

なければなりません。少しSF的ですが、「ロボットは主権を持つ」と憲法に書く人々

が現れるとすれば、その人々の持つ社会はどのようなものなのでしょうか?これは思考

のトレーニングとして置くにしても、その前に私たちは、自由主義と格差の是正を考

え、それを実現して行くコンセンサスを得て行く必要がありましょう。

 

6.日本の技術者は、NHKスペシャルで、これから向かうロボットの素晴らしい未来

像を、見せてくれました。シンガポールの試みも、都市型国家の交通の最適なあり方を

実際に形として実現しようとする彼らの意欲は素晴らしいと思います。印象に残りまし

た。



                 

                                                                          バラ


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