著作権法

著作権法についてしっかり考えてみませんか。

文化庁著作権分科会法制問題小委員会報告書

2006-06-25 03:40:08 | Weblog
 IPマルチキャストに関して文化庁が報告書を出したようです。
 放送を同時再送信する場合に限って、IPマルチキャストを「有線放送」と同様の扱いとし、自主放送は今後引き続き検討するという結論を出しています。
 総務省の竹中大臣の懇談会は「電気通信役務利用放送法で放送と位置づけられているものについては、著作権法上も放送にすべきだ」という趣旨の報告をまとめていますがそれに比べるとずいぶん小さな法改正を提言しているものだと思います。
 分科会の報告書によれば、今年の年末には地上波デジタル放送がIPマルチキャストにより同時再送信されることがスタートするとのことですから、察するに緊急に必要な措置ということで報告書をまとめたのでしょう。しかし、本来であれば「自主放送」部分も、有線放送と同様に扱うべきであり、その方向で今後急いで検討して結論を出さなければいけないのではないでしょうか。
 IPマルチキャストをつかう事業者は、NTT、KDDIとソフトバンクといわれています。事業規模が大きな会社で既存のCATVにとっては脅威でしょうし、全国展開が可能なので、放送局にとっても脅威でしょう。竹中大臣の懇談会の報告書でも、デジタル放送をIPマルチキャストで再送信する場合には、地域限定を書けるなという趣旨のことを言っています。都道府県単位で市場分割して経営を安定化してきた地方局にとっては、大きな脅威になるのではないでしょうか。
 いずれにしても、将来の姿として見えることは、既存のTV局のキー局・ネット局というヒエラルヒーとCATVの並存の現状に加えて、IPマルチの事業者が全国に張り巡らされたブロードバンド網を使用しての放送が加わり、両者の間に大変な競争が行われることです。ブロードバンド網の使用も、NTTが分割化されるかどうかは別として多くの事業者に開放され、複数の事業者が全国展開のサービスを競争的に行うようになるでしょう。
 そうしたなか、生き残っていくのはどんな事業形態なのでしょうか。すべてを生き残らせるために総務省はなにか行政的な措置を取るのでしょうか。
 著作権分科会報告書は、既存の秩序の再構築への第一歩を踏み出したことになります。今後自主放送も有線放送と同様の取り扱いとなるでしょうし、放送行政の観点からも両者は同様の扱いとなって、いわゆる「通信」と「放送」の垣根は撤廃されていき、競争が激化することでしょう。
 私は、こうした流れに対して、消費者の立場から意見の表明があっても良いのではないかという気がしてなりません。ポイントは以下の2点でしょう。
 ①既存の放送が衰退していくとなれば、CATVにしてもIPマルチキャストにしても、放送を受信するには一定の負担が必要となりますが、それでいいのかどうか。
 ②本当に消費者一人一人にとって必要な情報を得ることができるのか。地域に密着した情報の提供は今後も行われるのか。
 消費者団体はいつも「自分たちには情報が知らされていない」とか「自分たちが知らない間に物事が決まったのはけしからん」などというようですが、きちんと状況を把握して、必要な意見を言わなければいけないような気がします。