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「茂木健一郎の脳科学講義」茂木健一郎・歌田明弘

2010年05月09日 11時19分42秒 | 読書




人間の脳の働きを認知科学の視点から捉えた啓蒙書
非常に面白いし,脳科学の「本当の課題」を示唆してくれている.
脳科学は大きく分けて,テクノロジーとサイエンスの2つの視点から進んでいる.
そして,これらは似て非なるものである.
テクノロジーの方は,例えば脳から体に向かって出ていく神経の信号を取り出して,それで義手・義足を動かしてやるような研究です.
手足を失った人が,頭で動かそうと思えば,手足(実際は義手・義足)が動いてくれるようにできるわけで,身体障害者に対する大きな福音となります.
しかし,茂木さんに言わせると脳科学の最前線はむしろ,もう一つの課題,つまり,サイエンスの方だという.
ここでは,人間の意識というもの,つまり周囲の状況を認識する「自己」というものが脳の中で,どのような神経細胞の反応や電気信号として捉えられているのかという問題です.
実は私はこれにすごく興味がある.
興味のある方は,是非読んでいただきたいし,非常にエキサイティングな内容になっている.
本当に面白い部分は本書に譲るとして,ポイントは2つ,インプットされた外界の情報をスクリーンに投影する脳(後頭葉)と,その投影された情報を認知するもうひとりの自分である脳(前頭葉)との2つからなるという話.
つまり人間の知覚は階層化されているということです.
階層化というのは,単純に外から入ってきた情報を受け入れる脳つまり後頭葉と,それをもうひとつ高い段階からスーパーバイズする前頭葉が別に存在していて,前頭葉の方が認識を受け持っているのじゃないかという考えです.

前頭葉で認識される内容は,単にものの形とか色とかの物理情報じゃないんです.
それは後頭葉の仕事.
前頭葉では,その結果を受けて,味わいとか印象とか深みとか物理情報で表せないものになっている.その物理情報で表せないものが「クオリア」なんですね.

まだ,私自身本書の内容を十分理解していないので,解説はこれくらいにしますが,いよいよ「哲学」と「科学」が近づいてきたなあという期待を抱かせる一冊であることは間違いありません.


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