書く仕事

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「誰かが足りない」宮下 奈都

2012年07月01日 23時11分56秒 | 読書
「誰かが足りない」宮下 奈都




2012年本屋大賞ノミネート作品

タイトルだけ見ると,ミステリー小説そのものですね.
アガサクリスティを思わせるタイトルです.

足りない誰かとは?犯人?被害者?目撃者?
と思ってしまうのは私だけ?

ところが,ミステリーではないのです.

とても寂しくて,哀しくて,やがて心にランプが灯るような暖かい物語です.

6編の全く異なるお話から成る短編集です.

ただ,どの短編も暗く悲惨な状況から始まり,最後にかすかな希望が見え,そのうち皆でレストランで食事をしようということになる.
そのレストランの名前が共通していて,「ハライ」

人は生きているだけで,大変です.
不運もあれば失敗もある.
次々にいろいろなことが降りかかってくる.

いろいろな出来事を幸・不幸だけで受け止めていては,何時までも同じことの繰り返し.
人間として進歩が無い.

不運は不運,それはそれだけの事と受け止めて,新しい次の一歩を踏み出そうという強いメッセージに溢れた小説となっています.

特に大切な人に先立たれた不幸は,もちろん本人にしかわからないつらい出来事かもしれません.

しかし,例えそうであっても,やはり人間は新しい一歩を踏み出せば,また新しい人生の1ページが開けるのですね.

「誰かが足りない」という感覚は「不幸」ではなくて,新しい「幸福」のために避けて通る事の出来ないプロローグなんです.

というお話.

じんわりと来るお話でした.

ハンカチは不要だけど,忙しい時に読んではこの小説の良さはわからないだろうな.

少し,時間の余裕のある時がいいかもしれません.

渡部陽一チャリティ講演会

2012年07月01日 01時40分08秒 | 日記



戦場カメラマンとして有名な渡部陽一さんのチャリティ講演会を聴いてきました.

国際的なボランティア団体(NGO)であるケアサポーターズクラブの主催.

アフリカの内戦の悲惨さについてはマスコミが隠している(意図的かどうかは別にして)のであまり知られていないが,知ってしまうと,自分も死んでしまいたくなるような現状があると聞いています.

その酸鼻極まる中を取材し,こうして日本でも講演会を開いている渡部氏の努力には頭が下がります.

ただ,本当に悲惨な現状は巧みに隠しつつ,ボランティア活動の一環として,楽しくアフリカやイラクの一面をお勉強する材料を提供することが,彼が本当にやりたいこととは思えない.

本当はもっと伝えたいことがあるはずです.

しかし,その現状を伝えれば,まず会場に子供を呼べなくなる.あるいは,講演中に卒倒するおばさまが出てくる.
みたいな心配があるわけですね.

だから,こういうお勉強会にせざるを得ない.

その事情はよくわかる.

そういう意味でいろいろと考えさせられる講演会でした.