書く仕事

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「流星の絆」東野 圭吾

2009年12月24日 09時33分16秒 | 読書


ほんのちょっと,ネタバレなので,要注意です.

ある洋食屋の主人が,深夜,妻とともに惨殺される.
小学生の3人兄妹の子供たちは,外出していて無事だったが,一時に両親を失い,その後の人生は苦難の連続となる.
2番目の男の子が逃げていく犯人の顔を見ていたが,決め手とならず,捜査は難航.
事件が未解決のまま,月日が流れる.
時効を迎えようとした時,事件の解決の糸口が発見される.
しかしそれは,3兄弟がしくんだ犯人への罠だった.
親の仇を討とうとする3兄妹の必死の犯人探し.
しかし,真犯人は想像もしない人だった...
っていうあらすじ.

小学生時代に一度に両親を失うことの喪失感や経済的な苦労,何より辛いのは親がいないということに対する世間の冷たさですね.
しかし,幸いというか,何というか,2人の男子と1人の女の子という3人の絆は,親のあだを討つという目的のため,とてつもなく強力なものとなるわけで.
タイトルは,親が殺されたとき,3人が見に行っていた流星群から.

仇の息子がいいやつで,犯人への憎悪の感情を揺さぶることになるし,なんと一番下の妹「静奈」がその息子に恋をしてしまうという,予想外の展開が兄達を苦しめます.

これだけ複雑なストーリーを,一切の混乱なく,息もつかせずに読ませるのは,さすが東野作品だけど,むしろ静奈と仇の息子との淡い恋心の揺れ動きが,物語の奥行きを拡げているように思います.
私など,犯人探しより,この二人がうまく行ってほしいと思いながら読んでいた気がするな.

3兄妹は生きていくために詐欺師のようなことをやっていくのだけど,その人格と,親の仇を討とうとする一途さのミスマッチも登場人物がステレオタイプに陥らせない効果をもたらしています.

惜しむらくは,犯人ですね.
確かに伏線は張られているし,ロジックは合っているんだけど,心情的に,この人はどんな状況でも殺人はしないだろうという気がするんですよね.

でもまあ,他が面白いから許すか,みたいな.