何気ない日常に潜む人間の陰の意識-闇といった方がいいのかもしれません-を見事に文章で表現しています.
すごい才能だと思います.
例えば,同じ花を見ながら同じ色鉛筆を持っていても,画家と素人では描かれる絵は当然違う.当たり前のことですが...
この小説に出てくる出来事は,おそらく50%くらいの人が,長い人生のどこかで体験しているはず.私も体験しています.
でも,そのような出来事に直面した後,このような文章が書ける人は,おそらくほとんどいないと思うのです.
これって,才能以外の何ものでもない.
でも,やはり作者は女性なんだなあと思います.
男だと,体験することはあっても,そんなこと,そこまでは考えないです.
面倒くさくて.
少なくとも医者のみなさんがこの小説に出てくるような心理を体験したかどうか?
どうなんだろう.
わからないです.
大部分の男は,毎日目の前に降ってくる仕事を,必死で片付けているだけなんじゃないかな?
この小説のようなことを頭に描いていたら,身が持たない. ような気がします.
でも,小説としては凄い.
直木賞っていうより,芥川賞系の小説じゃないかなあ?