書く仕事

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「三国志(1)」吉川英治

2007年05月14日 23時00分13秒 | 読書

時は後漢、西暦200年頃の中国
後漢も時代が熟れ、政治は腐敗しています。
世の常で、そんな時代には、天変地異が起こり、盗賊が横行します。
特に黄巾賊と呼ばれる凶悪な集団が、各地で悪行の限りを尽くし、世の中は乱れきっています。
そんな背景の中、桜桑村の一青年劉備は、逞しい武将、関羽、張飛と同士の契りを交わし、黄巾賊を討ち、世の中を救おうと立ち上がるのですが...

いやあ、ついに三国志に手を染めてしまいました。
吉川英治さんの小説はあの宮本武蔵以来2作目、いや2シリーズ目です。
宮本武蔵のときは、NHKの大河ドラマ「宮本武蔵」がきっかけでした。
今回の三国志は、先日読んだ「蒼穹の昴」です。
中国の歴史ものに目覚めちゃったというしだい。
全8巻中の、まだ、第1巻しか読んでいないわけですが、すっかりはまっています。
面白いですよ。

劉備、関羽、張飛の三者三様の性格の描き分けも面白いし、劉備の高貴さ、関羽の知恵、張飛の力と武力が物語を多面的に展開していくのが痛快です。
しかし、ただ、三人の活躍でとんとんと物語が進んでいくのは、ほんの最初だけで、いきなり困難にぶつかります。
三人は地方の義士ですから、中央官庁の官位がないのですね。
だから、どんなに大活躍しても、出世に結びつかないのです。
日本の戦国時代だと、どこかの殿様に見出されて、それこそ秀吉のように出世するのでしょうが、この時代の中国は官位がないと、出世できない。
スタート地点にすら立てないのです。
戦国時代の日本よりはるかに封建的なんですね。
この第1巻では黄巾の乱が治まった後、董卓仲穎(とうたく・ちゅうえい)が霊帝死後の宮中を牛耳り、幼帝を勝手に廃して、自分の傀儡となる献帝を奉じて、暴虐の限りをつくすところまでが描かれます。
主人公の三人は失意の中、ひたすら自分達の時代が来るのを待ち望むという状況ですね。
董卓の対抗馬として、第四の主人公、曹操が登場します。
曹操は最初は、野心だけが肥大した上昇志向の若武者として描かれますが、この巻の最後では、覇権争いの醜さに嫌気がさし、もう一度自分の使命を見つめなおすために故郷に帰ることになります。
さあ、第2巻はどうなるのか、楽しみです。