書く仕事

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「むかし僕が死んだ家」東野圭吾

2007年03月04日 19時19分38秒 | 読書

「謎」、それはたった一文字で、ミステリーファンの心を魅了し続ける言葉です。
東野圭吾さんの小説は「わたしが彼を殺した」「片思い」に続き3冊目です。
「わたしが彼を殺した」は、「犯人は誰だ?」的な純粋な推理を楽しむ小説、「片思い」は性同一性障害という重い課題に殺人を絡ませた社会派ものでした。
この本「むかし僕が死んだ家」は、中身より、「タイトル買い」です。
タイトルの謎めいた雰囲気が気に入ったのです。
そして、うれしい方向に裏切られました。
実はタイトルが気に入って読み始めた本は結構今まで裏切られているんです。
でも、この本は面白かった。
何が面白かったって、全編全て伏線とその解答からなっているんです。
ちょっとした記述がすべて伏線になっていて、1行たりとも目が離せないんです。
途中何度も前のページに遡って読み返したもの。
でも、それが読み飛ばせないくらいに、気になるように書いてあるんです。
読者が踊らされるミステリーです。
伏線=「謎」と思ってくださっていいです。
ふつう伏線は、さりげなく描写されます。
その方が、読者は気が付かずに、あとで「あっ」と言わせることができるからね。
でも、この本の場合、いかにもこれは伏線だよ、とこれ見よがしに出てくる。
でも、わからないんです。その謎が。
ほんとにうまくできてます。
なぜ、ここでこんな記述が出てくるのか、「え?」と思ってしまう。
そう思うように作られているんですけどね。
そして、後半にその謎が続々と解かれていくのですよ。
ところで、皆さん幼児期のことってどれくらい覚えていますか?
最初の記憶って何でしょうか?
ちなみに私の最初の記憶は、銭湯のベビーベッドに寝かされて、天井を見ているシーンなんです。
昔、うちの実家にはお風呂がなくて、銭湯に行っていたんです。
なぜ、ここだけ覚えているのか自分でもわからないんですけどね。
それはともかく、幼児期の記憶がこの小説のテーマです。
大学の理学部の助手をしている工藤のもとに、7年前に別れた恋人、沙也加から電話が入ります。
沙也加は「私には幼い頃の思い出が全然ないの」
というのです。
付き合っていた頃には聞いていない話でした。
彼女の失われた幼児期の記憶を取り戻す手伝いをして欲しいという依頼だったのです。
沙也加がつかんだ手がかりは、山の中に立つ白い小さな家で、そこに二人で、失われた記憶を求めて訪れるのですが、そこでは思いもよらない事実が隠されていたのでした。
この後は読んでのお楽しみですが、メモを取りながら読んだほうがいいかもしれません。
とにかく、伏線の山盛りですから、とても全部はチェックできません。
私なんか、ええい、後でまとめて教えてくれ、って思ってしまいましたが、時間がある時なら、まじに、メモを取りながら読んだかもしれません。
結局、東野さんの手の平の上で、あっちによたよた、こっちによたよたしながら、時々明かされる解答に感心しつつ、「へえ~、そういうことか」と、いいつつ、最後まで行ってしまったというしだいですね。
それはそれで、一つの読み方ですし、忙しい社会人にはこれ以外読みようがないでしょう。うん。