書く仕事

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石田衣良氏著「4TEEN」

2006年03月22日 20時50分09秒 | 読書

池袋ウエストゲートパークシリーズの石田衣良氏が綴る,
4人の14歳の青春ストーリーです.
2003年の直木賞受賞作.
それぞれに悩みを抱えながら,友情という絆のもとに成長
していく中学生4人組が爽やかに描かれます.
物語は,4人のうちテツローの目を通して描かれますが,
テツローは主人公というより,ストーリーと場の雰囲気を
伝える語り部としての立場に徹しています.
ナオトはウエルナー症候群という,通常の何倍もの速さで
年を取り,平均30歳くらいで死亡してしまうという難病
にかかっています.中学生で既に髪は白髪だし,皺も多い.
しかし,心はテツローらとなんらかわらない中学生です.
ダイは相撲取りなみの体形ですが,家では父親の暴力に


悩んでおり,後にこれが悲惨な事件につながります.
ジュンは小柄で秀才,他の3人の家の母親らから絶大な
支持を集める「良い子」です.しかし,出会い系サイトで
知り合った人妻から災難をしょい込んでしまいます.
この4人が,恋,性,病気,死,暴力などのさまざまな
できごとを受け止め共に成長していくのです.
物語としては,出会い系サイトあり,援助交際あり,
ドメスティックバイオレンスあり,ホモセクシャルありと,
時代を反映しているわけですが,その捉え方が石田衣良氏
なんですね.
つらい出来事に対して本人はなんとか自力で解決しよう
とするんですよ.解決できないならせめて,友達には迷惑
をかけないようにしようとする.でも,友達の立場からは
ほっておけないわけですね.この「隠す」←→「助ける」
という展開が石田氏のストーリーの根幹をなしていて,
それが読む人になんともいえない暖かさと安心感を与えて
くれるんです.
できごとの一つ一つは,4人の友情を裂こうとする方向で
作用することが多いわけですが,結果として4人の絆を
強めることになるんですね.
言葉で表すと「友情」というひとことになってしまうん
ですが,それ以上の深い何か,「思いやり」「やさしさ」
とか「人間愛」とかにも通じる「何か」を石田氏の文章
から感じます.「人間が好き」ということなのかなあ.
この「何か」は,IWGPシリーズや「娼年」からも読み取れ
ますし,私自身とても興味を持っているテーマなので,
他の作品も,もっと読んでみたいと思っています.
折りしも王JAPANのWBC優勝で,日本中が沸いているところ
です.まもなく,サッカーワールドカップも始まります.
日本中の野球少年や,サッカー少年が,夢を持てることは
とてもすばらしいことです.しかし,あえて言わせてもら
うと,「夢」と同じくらい,場合によってはそれ以上に
「友情」そして友情とともにある「何か」も大切なんだよ
って言いたくなります.そんな気にさせる小説でした.