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日本文化のユニークさ33:縄文の蛇信仰(2)

2011年08月15日 | 現代に生きる縄文
◆安田善憲『森のこころと文明 (NHKライブラリー)

続けて、上の本を参考にしながら、日本文化のユニークさ5項目のうちとくに(1)「狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている」について論じていきたい。なぜ現代日本人の心の基層に縄文的な精神が受け継がれたのだろうか。著者は環境考古学の専門家らしく、日本列島の環境という側面からいくつかの理由を挙げている。

縄文人の暮らしは季節によって条件づけられていた。春には山菜をとり、夏には魚介類をとり、秋には木の実をとり、晩秋から冬には狩りをする。イノシシや鹿の狩りは、この時期、つまりいちばんおいしい時に集中している。このようことを著者が福井県での講演会で話したら、「そんなことはなにも珍しくない、私は今でもやっている」と言ったので、会場が爆笑につつまれたという。

つまり、縄文人がやっていた生活のリズムが現代人にも理解できるのだ。縄文人の蛇信仰の名残りも現代の日本に存在する。注連縄(しめなわ)や諏訪神社の御柱祭り、いくつかの地域の祭りでの蛇にみたてた綱の綱引きなどだ。私たちの心は縄文人のこころにどこかでつながっている。これは日本文化を考えるうえできわめて重要なことだ。

たとえばアメリカでは、先住民が縄文人と同様の生活スタイルをもっていただろうが、現代のアメリカ人はそれを体験的に理解することはできないだろう。かつてヨーロッパに広がっていた森の民・ケルト人の文化がキリスト教文化によって抹殺されてしまったことは、このブログでも何度か触れた。その意味で現代のヨーロッパ人も、森の民のアニミズムを忘れてしまった。

日本文化のユニークさ12:ケルト文化と縄文文化

北西ヨーロッパでは12世紀に大開墾時代と呼ばれる森の大開発が始まった。その背景には数頭の馬で粘土質の土を開墾できる重輪犂(すき)や水車・風車の開発などの技術革新があった。農地が広がって、森は急速に消えていった。その頃、この地域で動物裁判という奇妙な裁判が始まった。あらゆる動物が裁判にかけられて殺されていったのだ。それは、アニミズム的な信仰をもつ森の民とその森が消え、キリスト教が広まっていく過程にあらわれた特異な現象だった。動物の中でももっとも嫌われたのは蛇だった。キリスト教にとって蛇は邪悪の象徴だった(蛇の誘惑に乗って楽園を追放されたアダムとイブ)。

12世紀に中世ヨーロッパで動物裁判が始まった頃、日本では逆に動物の擬人化が進展した。日本の絵画の中で動物が主人公として盛んに描かれるようになるのは、平安時代末から鎌倉時代に入ってからだという。漫画のルーツともいわれる鳥獣戯画が成立したのも、まさにこの頃である。

この時代には日本でも、犂(すき)の利用や灌漑開発など農耕技術の革新がみられた。花粉分析の結果からも、12世紀から13世紀以降、関東平野の台地や丘陵で開発が進行し、アカマツの二次林が拡大し始めたことが分かるという。日本の場合は、原生林を破壊したあとに、二次林の資源に強く依存した農耕社会を作り上げたのである。アカマツや雑木林の二次林が生育する里山は、水田の肥料となる落葉、農機具用の木材、薪、キノコや山菜などの食糧源などが得られ、農民の生活と切り離せなかった。そして里山は、キツネやタヌキなどの野生動物の生息地でもあった。

ヨーロッパでは、日本の里山に相当する部分は牧草地に変えられてしまい、牛や羊など人間の食糧源としての家畜が飼育され、野生動物の姿は消えた。ケルトの民の森の生活と、キリスト教徒の農耕牧畜社会は断絶した。日本では、牧畜は存在せず、人間のすみかのすぐ近くに野生動物が生息し、動物と共存する世界が実現したのだ。

日本に森の多い風景が生き延びることができたのは、食肉用の家畜を飼育しなかったからだともいえる。山羊や羊などの、若芽を食べつくし森の再生を不可能にする家畜をもたなかったため、原生林が伐採されたあとにも二次林が再生できたのである。アニミズム的な縄文社会は、野生動物と共存する農耕社会と断絶することなく、原生林が里山に変わったとしても、野生動物が生息する森は保たれ続けたのだ。

こうして、日本文化のユニークさ(1)「狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。」と(2)「ユーラシアの穀物・牧畜文化にたいして、日本は穀物・魚貝型とで言うべき文化を形成し、それが大陸とは違うユニークさを生み出した。」とは、密接にからみあっているのが分かる。(2)については、以下の記事で考察しているので、参考にしていただきたい。

《関連記事》1
日本文化のユニークさ04:牧畜文化を知らなかった
日本文化のユニークさ05:人と動物を境界づけない
日本文化のユニークさ06:日本人の価値観・生命観

《関連図書》
文明の環境史観 (中公叢書)
対論 文明の原理を問う
一神教の闇―アニミズムの復権 (ちくま新書)
環境と文明の世界史―人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ (新書y)
環境考古学事始―日本列島2万年の自然環境史 (洋泉社MC新書)
蛇と十字架

《関連記事》2
日本文化のユニークさ03:縄文文化の名残り
日本文化のユニークさ17:現代人の中の縄文残滓
日本文化のユニークさ19:縄文語の心(続き)
『「かわいい」論』、かわいいと平和の関係(3)

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1 コメント

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ちょっと要望 (Unknown)
2011-08-16 11:00:46
せっかくの記事ですが、背景の絵と重なって
読みにくくなってます。
単色にするか、せめて線画を外してもらえませんか。

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