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『国土学再考』、紛争史観と自然災害史観(2)

2010年12月09日 | 侵略を免れた日本
◆『国土学再考 「公」と新・日本人論

城壁に囲まれた都市の住民は、勝つため、負けないために必死に研究しなければならない。情報を集め、それは正しい情報か、もれはないか、偽情報は含まれないかなどをつねにチェックしなければならない。あらゆる不測の事態や可能性を想定して作戦をたて、二重にも三重にもチェックしなければ、皆殺しにされてしうかもしれないのだ。

だからこそ、その思考は網羅性、俯瞰性、長期性などの特徴をもつ。合理的な判断を狂わせるような情報は厳しく排除される。合理的に判断する成熟した主体にこそ、最高の価値が置かれるのは、そういう歴史的は背景があったからではないだろうか。一方、日本人はそういう戦いの状況に置かれたことが歴史上あまりなかったため、厳しく合理的な思考訓練ができていない、必要ともされなかった。

他国に攻め込まれる恐怖もほとんどなく、食糧も豊かだった日本では、ぎりぎりの厳密で合理的な思考やその伝達にさほど重きを置かずにすみ、また「そぶり」や「以心伝心」程度のコミュニケーションで困ることはなかった。外敵に包囲され、防御策を綿密に決めて、誤解のない言葉でルール化しなければ全員の命がない、などという状況に身をおいたことがほどんどないのだ。

岸田秀の『日本がアメリカを赦す日 (文春文庫)』の中に興味深い日本人論があり、いつか紹介したことがあるが、上で語られたことと関連させて考えてみたい。

岸田によれば、日本人はある種の人間観を前提として行動しているが、その前提についてはほとんど無自覚だというのだ。それは一言でいえば「渡る世間に鬼はなし」という性善説。人間は、本来善良でやさしく、そして一人では生きることのできない弱い存在だから、互いにいたわり合い、助け合って生きていくしかない。中には裏切ったり悪いことをする人間もいるが、それはそうせざるを得ない事情があってのことで、根っから悪い人間はいない。だいたいこんな人間観を前提にして日本の社会や規範は成り立っているというのだ。

人間の誠意や真情を互いに信頼することで、社会の「和」や秩序が保たれる。自分のわがままを抑えることで、相手も譲ってくれ、そこに安定した「和」の関係ができるという性善説を前提として日本の社会はなりたっている。さらに日本人の問題は、このような人間観を他国や他民族にも共有される普遍的なもとの信じ込んで、行動することだ。しかし、日本人のような性善説に立つ人間観はむしろ例外的で、世界の大部分はそういう前提に立っていないから、日本の他国への期待は裏切られることが多い。

岸田秀は、こうした人間観のマイナス面を強調しているのだが、プラス面もひとつだけ取り上げている。それは、「一神教の文化のように、どちらが正しいかを徹底的に詰めないで、和の精神でごまかすほうが、あまり殺し合いにならなくてすむというメリット」だ。ヨーロッパの内戦、激しい宗教戦争などにくらべると、源平の合戦から、戦国時代、明治維新に至るまで、日本の内戦は桁外れに死者が少ないという。

しかし、メリットはそれだけではないだろう。岸田秀自身が(『官僚病から日本を救うために―岸田秀談話集』)でいう、「日本人は一神教の神をあまり信用しないが、欧米人は人間を信用しない。日本人が母子関係をモデルにしたポジティブな人間関係を結ぼうとするのに対して、人を信じない欧米人は、神を介することで人と人との関係を結ぼうとした。」と。

ここでようやく、私たちのテーマである「かわいい」文化との関係につなげることができた。「母子関係をモデルにしたポジティブな関係」にとって「かわいい」や甘えが重要な位置を占めていることは言うまでもない。今後は、河合隼雄や土居健朗などの論を参考にしながら、もう少しこのテーマをさぐってみたいと思う。

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日本文化のユニークさ16:自然環境が融和を促した

《関連図書》
★『世界カワイイ革命 (PHP新書)
★『「かわいい」の帝国
★『逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
★『「萌え」の起源 (PHP新書 628)
★『なんとなく、日本人―世界に通用する強さの秘密 (PHP新書)
★『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)』(G.クラーク)
★『日本の文化力が世界を幸せにする』(日下公人、呉善花)

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