風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

佐々木譲 『武揚伝』

2007-09-20 16:18:58 | 

【五稜郭】

「北斗七星と北辰、子ノ星のある場所をよく覚えておくのだ」と父親は釜次郎に言った。
「この星さえ見つかれば、見知らぬ土地でも、海の上にあっても、方位がわかる。この星は、不動だ。いつでも空の同じ位置にある」
「北斗七星の柄杓の柄の部分の星の名も知るといい。一番端の星を、剣先星とも言うし、破軍の星とも呼ぶ。・・・つまりこの星は、将軍の星だ」
「その破軍の星の横にある星は、武曲とも呼ばれ、開陽ともいう。開陽とは、陽が開く、つまり朝がくる、という意味だ」

(佐々木譲 『武揚伝』)

榎本武揚が主人公の長編小説。
うん、面白かったです(^^)
最終章がよかった。ありがちだけど、ああいうラストは好きだ。

榎本も、ほぼ私のイメージどおりに描かれていたし(=頭がよくて、坊ちゃんぽいくせに変に大胆なところがあって、開明派なくせに万年夢見がち少年)。
少々ヒーロー的に描かれすぎてる感はあったけど(もうすこしヘタレの方が魅力的だったと思う)、まぁ主人公なのでよしとします。

あと大鳥圭介の描かれ方もよかった。
司馬さんの『燃えよ剣』は大好きな作品だけど、大鳥の評価が酷くて不満だったのですよ。
一方佐々木さんは、勝海舟を相当酷い扱いにしていますね。この点が、ちょっと不満かな。
男性作家は敵味方をはっきり区別して描くのが好きですねぇ。
私などは「それぞれに事情があっただろうから、ここまでこき下ろさんでも。。。」とつい思ってしまうのだが(だから『地虫鳴く』のような作品にすごく共感する)。

土方歳三も悪く描かれていなくて安心しました。
箱館政府に関してはどの人物も私の理想的な描かれ方だったので、大変満足。

ブックオフで、まだ全然綺麗なのに文庫一冊105円で買いました。
以前私が100冊売ったときに買値が760円と言われ驚愕したのですが(一冊7円!)、この本を105円で売っているのなら、さもありなん・・・。

「これからは、ことあるごとに、自分はオランダに行きたいと言い続けなさい。それを口にしなさい。アメリカ人は言うのです。望まないことが手に入る確率よりも、望んだものが手に入る確率のほうがずっと大きいと」

【碧血碑】

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