風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

簑助さんが引退

2021-04-17 00:16:22 | その他観劇、コンサートetc

©国立文楽劇場(2005年)


人形遣いの吉田簑助さんが、今月の国立文楽劇場の公演を最後に引退されるそうです。

華やかで可憐で、胸が苦しくなるような魂の震えが伝わってくる簑助さんの人形が大好きでした。
舞台の上で簑助さんの人形だけが、他の人形とは違って見えました。人形遣いと人形が完全に一体となっていて、人形自身が魂をもって生きているようにしか見えない。「簑助さんが人形で、人形の方が本体なんじゃないかと錯覚させられる」と冗談半分に書かれている方がいたけれど、本当にそんな感じで、その舞台を観ていると、蓑助さんは人間としてよりも人形を通してご自身の人生を生きて来られた方なのではないか、と本気で感じたほどでした。その人形を前にすると、至芸という言葉も生温く感じられました。

私が簑助さんの舞台を観られたのは八重垣姫、小春、長吉、菊の前、おかる、桜丸、深雪、中将姫、雛鳥の9回だけでしたが、私の人生の中であの奇跡のような人形を観させていただいたことは大きな大きな宝物で、感謝しかありません。
81年間お疲れさまでした。そして、本当にありがとうございました。
写真は、私が初めて観た文楽の演目で、文楽というものの素晴らしさを衝撃とともに教えてくれた『本朝廿四孝~十種香の段』の八重垣姫です。

以下は、簑助さんのコメント全文。

 私、吉田簑助は、2021年4月公演をもちまして引退いたします。

 1940年、三代吉田文五郎師に入門し、人形遣いの道を歩みはじめて今年でまる81年。その間脳出血で倒れ、復帰してから22年、体調が思うにまかせないこともありましたが、曽根崎のお初も八重垣姫も静御前も再び遣うことが出来、人形遣いとして持てる力のすべてを出し尽くしました。

 今まで応援して下さったお客様、支え続けて下さった文楽協会、日本芸術文化振興会の方々、同じ舞台をつとめた太夫、三味線、人形部の方々、そして何より私の門弟たち、本当に感謝しています。お世話になりました。ありがとうございました。

 皆様、どうぞこれからも、人形浄瑠璃文楽を宜しくお願いいたします。

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