風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『考える人 2016年夏号』 養老孟司

2019-09-06 00:03:35 | 




これまでの科学は、「こうなったらああなる」という因果律で考えるばかりでしたが、そこで抜け落ちるのは、ものごとの間にある関係性です。海、山、川、そして里はそれぞれ個別にあるのではなく、お互いにつながっています。田んぼで育った稲が米になり、それを食べて私たちの身体はつくられる。それなら、田んぼは私たち自身です。海で育った魚を食べてそれが私たちの身体になるなら、海もまた、私たち自身なんです。それをぶつ切りにして別物だと考えるのは、言葉や意識です。たとえば道志村は横浜市の水源地になっている土地だから、なにかあったら、横浜が困るんです。岸由二さんが言う「流域思考」は、川の流域単位で土地を見る考え方ですが、いま都会の人たちは、自分がどこの水を飲んでいるか、近くの川がどこから流れてきているか、知っているでしょうか。環境問題や里山の意義について、誰もが「持続可能性」を当たり前のように理解して唱えているのに、一向に実現しないことは不思議です。

(養老孟司 森の残響を聴く)

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