風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

二月文楽公演 第三部 @国立劇場(2月12日)

2014-02-15 17:23:01 | その他観劇、コンサートetc




昨夜は殆どの日本国民と同じく男子フィギュアを明け方まで観戦しておりました。
なんかいっぱい元気もらった~。
彼らに比べると、私の普段の仕事のプレッシャーなんて蚤のようだわ。
ソチのみんな、感動をありがとう

話は変わりまして。
先週水曜日の夜、人生初の文楽に行ってきたのですよ。
先月初春歌舞伎を観に行った国立劇場で、たまたまこのチラシ↑が目に入り。
その時の衝撃といったら――。

え、これ、人間・・・・・じゃないんだ

と。
魂や心などないはずの人形から溢れ出るこの恋情・・・。
もしや文楽って、私が思ってるよりずっとモノスゴイものなのでは・・・。
この八重垣姫の如くすっかりこの写真の虜になってしまった私は、この人形が動いているところが見たいっ!と、帰宅し即チケットをGet。

※6列目中央
お〇ぴで4200円という格安で譲っていただきました。
初文楽を最高のお席で観ることができて幸せでした。


【御所桜堀川夜討~弁慶上使の段~】

今回の2演目は歌舞伎でも見たことがない、完全な初見でした。
なにしろ初文楽なので、何もかもが新鮮。
とーざいとか言っちゃうんだ!床の紹介とかするんだ!動かないでじっとしてる人形がふっと動き出すのも仮名手本と同じだ!うわ、人形って目まで動くんだ!なんか時々宙に浮いて見える!

しかし歌舞伎は観ているものの未だに義太夫に不慣れな私は、舞台左右の字幕にどれほど助けられたことか。。事前に床本に目を通してはいたものの、やはり有難かったです。
そんなド素人な私にも今どの人形が喋っているかがすぐにわかる大夫さんの語りって、すごいわぁ(ちなみにこの段は英太夫さん) 
そして歌舞伎も派手ですが、文楽も派手ですね~。もっと厳かなものかと勘違いしていたので、意外でした。見せ場は思いきり見せ場!って感じで(おわさも弁慶も語る語る、笑)、なるほど歌舞伎の元?なだけある。

お話としては、一言、弁慶にムカツキましたyo。
熊谷には腹が立たないのに、どうしてこの弁慶にはこんなに腹立つのかしらと思ったら、殺す相手が息子じゃなく娘だからです。男の子の場合は、主のために死ぬのも仕方ないかなと思えなくもないのですが、女の子はなぁ。。
信夫ちゃん、切なかった。。人形の動きも本当に若い女の子という感じで。この人形遣いさん(吉田一輔さん)、まだお若い方なんですね。

とまぁ、なかなか楽しめた前半ではありましたが、ゾクゾクするほど大感動!というわけでもなく。
このときは、なるほど文楽ってこういう感じなのかぁ、ふむふむ、という感じだったのです。
しかし次の演目で、私は文楽の本領を見ることになったのである。


【本朝廿四孝~十種香の段/奥庭狐火の段~】

もう。。。。。八重垣姫(簑助さん)が凄すぎて。。。。。。。。。
勝頼(玉女さん)も濡衣(文雀さん)もとってもよかったけれど、目が自然と八重垣姫を追ってしまう。
ちょっとした小さな仕草もひどく魅力的で、この人形から全然目が離せませんでした。
この自由さ、華やかさ、可愛らしさ、いじらしさ、一途さ、そして少女と大人の狭間の艶。
なんか、玉三郎さんを思い出しました。
例によって肉食系な赤姫さまですが、嶋大夫さんの語りとともに、どこか古風な雰囲気も漂っているところが素敵。

そんな姫さま、後半の『狐火~』ではガラリと雰囲気が変わります。
ここから大夫は呂勢大夫さんに、人形遣いは勘十郎さんに交代。
同じお人形でも、大夫さんと人形遣いさんが変わるとこんなに個性が変わるんですねぇ。驚きました!
こちらは、好きな人のためなら諏訪湖どころか太平洋だって渡っちゃいそうな現代的なお姫さま


八重垣姫@アルジェリア(from 産経新聞

いやぁ、楽しいですねぇ。
同じ役を色んな役者が演じる歌舞伎がクセになるのと同じで、文楽も同じ演目を色んな演者で見てみたいと思わせられました。
「コクがあって華やか」なのは前半の演者さん達で、「クールで派手」なのは後半って感じ?
簑助さん&嶋大夫さんで後半を演ったらどんな感じになったのか、ちょっと見てみたかった気もしましたが。
でも勘十郎さんの八重垣姫、ちょっと上を見上げる角度は綺麗だったな~。透明で澄んだ夜の空気を感じた。呂勢大夫さんのお声とも、とても合っていたように感じました。

あとこの『狐火~』、三味線がもっのすごくカッコいいですね。
三味線の音って大好きなんですけど、歌舞伎ではあまり意識したことありませんでした。どうしても視界に入るものが人間だとその表情とかに意識がいってしまって、なかなかそこまで余裕がないといいますか(なにしろ歌舞伎もド素人なので)。
でも今回は床が近かったせいもあるかもしれませんが、思わず三味線を見てしまいました。清治さんていうのかφ(・_・

来週は一部と二部に行ってまいります!(←節約はどうした)

しかし今回、橋下市長の発言などを考えながら改めて思ったのは、歌舞伎もバレエも文楽も能も、こういうものの素晴らしさは理解できない人にはまったく理解できないのだろうなぁ、ということでした。
そういう人達にとっては、人生に完全に不要なものなんですよ。なくても生きていけるどころか、本気でまったく良さが理解できないのだと思います。こういうものに感動したことが一度もないから、「伝統」も単なる「古い因習」にしか思えないのでしょう。私などからすると、ぞっとするほど味気ない人生だなぁと思いますが。
しかし実際にチケットが売れていないのだとしたら(今回は満席でしたけど)、国の大半の人が必要としていないものに公的資金をあまり使うのはどうか、というのも正直わからないでもありません。
でも考えてみていただきたいのは、いま大半の国民が必要としていないとしても、それはあくまで「現代の客」だということです。「未来の客」は違うかもしれない。それは私達の子供たち、孫たち、そして更にその子供たちの話ですよ。決して現代の私達の一般的な価値観が“正しい”とは限らないことは、歴史が証明しています。
時代も人も変わります。そして「伝統文化」というのは、一度途切れたら二度と取り返しがつかないものです。
伝統文化がどういう性質を持ったものか、何百年も続いてきたものの価値を一時の数字で安易に判断することが、いかに自国の未来に重大な損害を及ぼしうるか。
決して、簡単に答えを出していい問題ではないのですよ。
文化を大事にしない国に、未来はありません。


※アーティストインタビュー:豊竹呂勢大夫(主に『曽礼崎心中』についてですが、なかなか興味深かったので)

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