ISOな日々の合間に

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30年後には関東平野が水没する?

2006年12月14日 | 温暖化/環境問題
日経新聞12月13日朝刊の社会42面で次のように報じている。「米国立大気研究センターなどの研究グループは地球温暖化で40年夏には北極海の氷が消滅すると予測,従来の予測より30年早まる」と。

これに関連してかなり前から多くの報道がされている。例えば、2004年9月の『サイエンス』誌ウェブサイトに発表された論文では、「南極大陸西側のアムンゼン海に流れ込む6つの氷河がこの15年間で流れの速度を上げており、しかもそのペースが最近になってさらに速まっているとしている。その中でも最も速いパインアイランド氷河は、1日約5.5メートルのペースで流れており、地球上で最も動きが速い氷河のうちに数えられるまでになっている。この速度は、1970年代と比べると25%も上がっている。」と報じていた。当然、他の氷河や棚氷でも以前より早く溶け出していると報じられていた。

国連の機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の資料では、温暖化により海水面は2100年までにさらに100センチ上昇する可能性があり、そうなると高水位線がおよそ90メートル内陸に移動し、フロリダ州やバングラデシュ、マンハッタンの大半でさえ水に浸かることになると言われている。

しかし、このシナリオは、グリーンランドや南極の巨大な氷床が今の状態を保つという仮定に基づいている。すなわち温暖化による水の体積膨張による海面水位の上昇のみを計算しているのだ。
溶け出した水の量も考慮するとどうなるか。プリンストン大学のマイケル・オッペンハイマー氏によれば、グリーンランドや南極西部[ウェッデル海から西、ロス海から東の部分]の氷床がもし融解するようなことになれば、海水面は12メートル以上上昇すると予測されている。

世界水没地図をご存知だろうか。URLは<http://flood.firetree.net/>。例えば、日本の関東地方を表示し、左上の海面水位を12mにセットするとどこまで水没するかが表示される。

あと30年でこの事態がやってくるとの予測である。予測は、種々の仮定の基に計算するので、予測どおりになるとは断定できないが、何よりも一刻も早く温暖化にブレーキを掛ける必要がある。

2005年度のCO2排出量は、前年と比較して工場等の産業界は微増、運輸部門は0.6%減であったが、オフィス部門が3.1%増、家庭部門が何と4.5%増であったという。90年度比でマイナス6%という約束を実現するのは、日本は今年度の排出量から14.1%の削減が必要になる。

個人に環境への取組を強制することは不可能だ。だが、温暖化を抑制するためには個人一人ひとりのライフスタイルを変えてゆく必要がある。「こまめに電気を消す」、「家電製品などの購入に際しては省エネ製品を選ぶ」、「冷暖房の温度を調整する」、「シャワーや水道を流しっぱなしにしない」などの他にも工夫の余地はまだまだ十分あるはず。

図は、気象庁の海洋診断表から、1979~2005年における北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化の図を引用した。北極海ではより顕著に海氷域が減少する傾向にあるようだ。