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海外メンタルヘルスニュース

スプーン一杯 9

2006年12月07日 | Weblog

10月には生活のパターンを固定しました。旦那の仕事は比較的自由がきいたのでKittyの昼食は旦那が一緒に食べて、万が一駄目なときだけ私がカバーするようにしました。その頃にはさらに6パウンド増えていましたよ。まあ、身長も1インチ伸びていましたけど。食べて体重も増えていたけど、Kittyは空腹感を全然得られませんでした。「ママお腹すいてない」これの繰り返し。この頃は食べたくないのではなくて、満腹感で食べられない状態でした。Kittyの体と脳はどういう状態になってるのか心配でした。

11月の第1週にはKittyの体重は90パウンドに増えていました。目標値まであと10パウンド。それ自体すごい嬉しかったんですが、それよりも嬉しかったのはKittyの情緒が素晴らしく安定してきていたんですよ。でも、長くは続かないものよね。11月の下旬はまた最悪。また食べることを拒否しだして、お昼もわざと床に落としたりしたのよ。Kittyは「ごめんなさい。落としちゃったの…わざとじゃないよ」と言ってたけど、そう何度もあるわけないですよね。

拒食症を経験した人の約50%は過食症も経験するんですよ。Kittyはいったいどうなるんだろう?これで今度は過食なったら、我が家は破産かしら?何て考えたものですよ。

12月。Kittyの体重は増減の繰り返しでした。で、結局90パウンドで1年が終了。始めた頃から比べたら増えてるんだから喜ぶべきだったのかもしれないけど、その頃は失望感が大きかったですよ。良いのか悪いのか知らないけど、少し自棄になってたのかしら?年始は1日4000キロカロリーを食べさせるように料理を工夫しました。ええ、体重は増えましたよ。

冬が去り、春がやってきてKittyの体重は完全に目標値に到達しました。順風満帆ではなかったけど、食べること、そして食べさせること完治への一番の近道と信じてやってきました。他人から見れば私のやり方は無理があったと思う人もいるかもしれませんし、私自身疑心暗鬼になることもありました。でも、このやり方で正しかったんですよ。

5月のある日、Kittyは学校から帰ってくると私にこう言いました。

「ねーねー何でしょう?」

「どうしたの?そんなニコニコして?」

「あのね。スーが学校にケーキ持ってきたの。でね、私はケーキ食べたんだよ。すごいでしょ!!」

翌日の朝食にゴマ入りのべーグルを出しました。別に珍しいことではなく、いつもの朝食ですよ。プレーンのベーグルよりカロリーがありますからね。

「ゴマのベーグル嫌だ」

「いつも食べてるじゃない?」

私は分かっていました。この言葉の裏側にある意味をね。でもその言葉はKittyから言って欲しかったの。

「これプレーンベーグルよりカロリーとっても高いのよ!」少し声色が変化していました。でもすぐに落ち着いてこう言いました。

「でも、それは摂食障害が原因だもんね。食べなきゃね」

そう言って静かにべーグルを食べ始めたの。

Kittyを誇りに思いましたよ。この子は自らの意思で今拒食症を克服しようとしてたのですから。もう時間の問題だと思いました。勿論いい意味でね。

6月に遂にその日が訪れました。Kittyが私の職場に電話をかけてきたんですよ。たった2単語を言うためにだけにね。でも私にとっては世界でもっとも美しい響きの2単語でした。

「I'm hungry!(お腹すいた)」

「やったー!!」思わず仕事場で叫んじゃいましたよ。

「やったよーママ!!」Kittyも学校で叫んでましたけどね(笑)

その2週間後には完全に目標体重を維持出来るようになっていました。夏も秋も体重が落ちることはありませんでしたよ。医者からも完治のお墨付きを頂きました。それでもKittyは継続してセラピストに会いに行くことを望みました。完治と言っても何かあれば直ぐに元に戻る可能性はあるし、心の安定をはかるのは良いことですから嬉しい選択でした。友達からのパーティーの誘いはあるし、友人とも家族とも楽しい食事をすることが出来ています。

でも最近夢を見ましたよ。怪しげな家で私がKittyを必死で探していました。やっとの思い出見つけ出したKittyはKittyではなかった…

「夕飯食べなかったの?朝食は!?」

「食べてないよ」笑顔でKittyは答えました。

まだどこかでおびえてる私がいるのかもしれませんね。

実際あの悪魔はまだ私たちの生活を見てると思っています。陰からこっそりとね。でもそれでいいのかもしれません。安心して忘れてしまうよりはね。3ヵ月後、1年後、3年後にまたあの悪魔が再び姿を見せない保証はありますか?Kittyは絶対再び拒食症になりませんか?本当に完治したのですか?何1つ私は正しい答えを知りません。

朝ベットから起きてキッチンに行き、卵を割って目玉焼きを作りミルクとバターとジャムを用意する。それが今私に出来る全てのことなんですよ。