第11回ジャパンCダート(5日、阪神11R、GI、3歳上オープン国際、定量、ダ1800メートル、1着本賞金1億3000万円=出走16頭)藤田伸二騎手(38)=栗・フリー=が騎乗したトランセンドが鮮やかな逃げ切り勝ち。1番人気に応え、初挑戦でGI制覇だ。1分48秒9(稍重)は阪神開催となった08年以降のレースレコード。安田隆行調教師(57)は厩舎開業16年目で初のGIタイトル獲得だ。トランセンドは来春、ドバイで世界の強豪に挑む。クビ差2着はグロリアスノア、GI9勝馬のヴァーミリアンは14着に大敗した。
鮮やかなブルーと赤の勝負服が、まっさらなままゴールを駆け抜けた。スタンドに向けて左手を挙げ、ナンバーワンをアピールする藤田伸二騎手。そのゴーグルにも、汚れはない。ライバルに一度も先頭を譲ることなく、GI初挑戦のトランセンドが逃げ切った。
「1番人気に応えられたことが嬉しい。プレッシャーはあったけど、スピードがあるので、この馬のリズムを崩さないことを考えていた」
1番人気を背負い、他の15頭からマークされる展開と立場。それにも藤田騎手は馬とレースに対する集中力を切らさなかった。1000メートルの通過は60秒ちょうど。「大きな馬で、ストライドも大きいから、速い気がしない」とジョッキーが言うペースは、例年よりも速かった。ラスト3ハロンも36秒6とメンバー中5番目に速い時計。勝ちタイム1分48秒9は、阪神開催となった08年以降でのレースレコード。急追するグロリアスノアをクビ差しのぎ、頂点に立った。
「今回は外国馬もいないし、GIのここは勝ちたかった。これでGI馬になったからね。これからはひとつひとつ負けられない気持ち」
藤田騎手はチャンピオンとなった相棒とプライドを持って、これからの戦いに臨む姿勢を示した。
涙が止まらなかったのが、安田隆行調教師だ。厩舎開業16年目にして悲願のGI初制覇。騎手時代の1991年、デビューからコンビを組んだトウカイテイオーで皐月賞、ダービーを無敗で優勝したが、調教師としてGIに縁がなかった。
「感極まりました。胸がいっぱいです。ジョッキーの頃には涙が出なかったのに…」
涙をぬぐう姿に、関係者からの握手攻め。喜びの輪の中心で、夢見心地だった。
「自分の競馬をして負けたら仕方ない。このレースに向けて、目一杯の仕上げでした。今回はチャレンジャーのつもりでしたが、これでチャンピオン。これからは慎重にレースを選んで、海外も視野に入れていきます」
日本のチャンピオンとして、来春のドバイワールドC(3月26日、メイダン、GI、AW2000メートル)挑戦を調教師は打ち出した。日本を代表する中距離ダートのスピード馬となったトランセンド。今度は大逃走劇で世界を沸かせる時が来る。(柴田章利)