electric

思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

第5、第7交響曲

2007-11-25 22:06:02 | 音楽・映画
ベートーヴェン
交響曲第5番「運命」、交響曲第7番

カルロス・クライバー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

数ある交響曲群の最高峰に君臨する、言わずと知れた超名曲。「運命はかく扉を叩く」とベートーヴェンが言った、冒頭の”運命の動機”を知らない人はいないだろう。重く悲劇的な運命を暗示するような第1楽章、一転して華やかで美しすぎるとも思える第2楽章、3楽章に”運命の動機”が再び現れ、勝利の響きを奏でる4楽章へと至り、フィナーレは興奮の坩堝と化す。
カルロス・クライバーとウィーン・フィルによる演奏はこの曲の決定版の一つと言える。開始から終曲まで息をもつかせぬ演奏である。手に汗握るとは正にこのことだ。高らかに鳴り渡る4楽章の冒頭は、あのフルトヴェングラーも脱帽だろう。他に「運命」の名演を残している指揮者として、ベーム、イッセルシュテット、ホルスト・シュタイン、小沢征爾などがいる。そして不動の演奏と称されるフルトヴェングラーを忘れることはできない。それともう一つ注目に値するのが、1968年にピエール・ブーレーズが録音した特異な演奏である。信じ難いような遅いテンポで進み、第3楽章のリピートも行っているので長大な「運命」ができあがった。当時賛否両論が巻き起こったが、私はこの演奏は歴史的名演の一つだと思う。

ベートーヴェンの交響曲の中では、激しく感情的な「運命」や標題の付いた「田園」とは対照的に、第7交響曲は論理的な音の積み重ねによるピュアな音楽の美しさが再認識できる曲。まず初めにリズムありき、この音楽の基本がよく分かる。
今でこそこの曲の定番とされている、クライバーとウィーン・フィルの演奏であるが、初めて世に出た時は、衝撃的であったものの、必ずしも絶賛を得たわけではなかった。多くの評論家はむしろ否定的であり、その主たる言い分は、長い演奏の歴史の過程で切り捨ててきた音もあり、それを今更掘り起こすのは賛成できないというのもであった。実際に聴いてみると確かに色んな音が出てきて、おっ!と思う所もあるが、それは決して誇張されたものではなく、その他の音とうまく調和しており、いささかもバランスを崩してはいない。それに実はそんなことは大した問題ではなく、この演奏の真価は、指揮者と演奏家が一体となり、また曲と一体となって初めて放出される音の力にある。この点で第5番「運命」と全く同様であり、この演奏も第7交響曲の決定版の一つと言えるだろう。クライバーの7番と5番がカップリングされ一枚のCDで聴けることは、何とも幸せなことである。
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