ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

2020年07月03日 | 生殖内分泌

PCOS = polycystic ovary syndrome

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は原因不明の慢性的な排卵障害であり、月経異常や不妊症の原因となります。PCOSは生殖年齢女性の5~10%と非常に頻度が高く、不妊症の診療上重要な疾患です。



多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の特徴
臨床症状/合併症:

①月経異常(無月経、稀発月経、無排卵周期症)
②男性化(多毛、にきび、低声音、陰核肥大)
③肥満
④不妊
⑤2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、メタボリック症候群
⑥子宮内膜増殖症、子宮体癌

内分泌・代謝検査:
①血中男性ホルモン値が高値
②血中LH基礎値が高値、FSH基礎値は正常かやや低値(LH:黄体化ホルモン、FSH:卵胞刺激ホルモン) 
③インスリン抵抗性、耐糖能異常
 
卵巣所見:
①多数の小卵胞があり、卵巣が腫大
②内莢膜細胞層の肥厚・増殖、間質細胞の増生



多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断基準
以下の①~③のすべてを満たす場合を多嚢胞性卵巣症候群とする
①月経異常
②多嚢胞卵巣
③血中男性ホルモン高値、またはLH基礎値高値かつFSH正常

注1)月経異常は、無月経、稀発月経、無排卵周期症のいずれかとする。
注2)多嚢胞卵巣は、超音波断層検査で両側卵巣に多数の小卵胞がみられ、少なくとも一方の卵巣で2~9mmの小卵胞が10個以上存在するものとする。
注3)内分泌検査は、排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に、1cm以上の卵胞が存在しないことを確認の上で行う。また、月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低いことに留意する。
注4)男性ホルモン高値は、テストステロン、遊離テストステロンまたはアンドロステンジオンのいずれかを用い、各測定系の正常範囲上限を超えるものとする。
注5)LH高値の判定は、スパック-Sによる測定の場合はLH≧7mIU/mLかつLH≧FSHとし、肥満例(BMI≧25)ではLH≧FSHのみでも可とする。測定キットによりLHやLH/FSH比のカットオフ値が異なることに注意を要する。
注6)クッシング症候群、副腎酵素異常、体重減少性無月経の回復期など、本症候群と類似の病態を示すものを除外する。
(日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会、2007)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療指針
PCOSの治療は、現在妊娠を希望している場合と、そうでない場合とで異なります。また、PCOSで肥満のある方ではまず体重の管理を十分に行います。

挙児希望のあるPCOS女性の場合:
肥満例(BMI≧25)では、まず栄養指導・運動療法などによる減量を指導します。4~8週間で5~10%の減量を目標とし、3~6か月間継続します。減量により高男性ホルモン血症や排卵障害の改善を認める場合があります。
非肥満例(BMI<25)では、排卵誘発薬であるクロミフェン(クロミッド)を第一選択として使用します。クロミフェン抵抗性の排卵障害を認める場合は、アロマターゼ阻害薬(レトロゾール)、FSH低用量漸増法による排卵誘発、または腹腔鏡下卵巣多孔術なども検討し、妊娠に至らない場合は生殖補助医療(IVF-ET)を考慮します。PCOSの方に対する排卵誘発では、常に多胎のリスクと卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症に注意が必要です。
排卵誘発法 FSH低用量漸増法 卵巣過剰刺激症候群

挙児希望のないPCOS女性の場合:
PCOSの患者さんは月経異常を放置していると子宮体癌のリスクが高くなることが知られています。無月経や無排卵などの月経異常の状態が続く場合は、子宮体癌を予防する目的でホルモン療法が必要となります。プロゲステロン製剤を毎月7~12日間内服して月経を誘発する黄体ホルモン補充療法(ホルムストローム療法)が基本で、これを長期的に行います。月経異常と同時に多毛やニキビの症状を改善したい方には低用量経口避妊薬を用いる場合もあります。


(日本産科婦人科学会:生殖・内分泌委員会、2009)

産婦人科診療ガイドライン・婦人科外来編
CQ326 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断と治療は?

1. 日本産科婦人科学会による診断基準(2007年)に基づいて診断する。(A)
2. 挙児希望がない女性に対しては
 1) 肥満があれば減量など生活指導を行う。(B)
 2) 定期的な消退出血を起こさせる。(B)
3. 挙児を希望している女性に対しては
 1) 肥満があれば減量を勧める。(B)
 2) 排卵誘発にはまずクロミフェン療法を行う。(B)
 3) 肥満、耐糖能異常、インスリン抵抗性のいずれかを認め、かつクロミフェン単独で卵胞発育を認めなければ、メトホルミンを併用する。(B)
 4) クロミフェン抵抗性の場合はゴナドトロピン療法または腹腔鏡下卵巣開孔術を行う。(B)
 5) ゴナドトロピン療法を行う場合は、低用量で緩徐に刺激する。(B)
 6) 排卵誘発としてアロマターゼ阻害剤を使用する。(C)

参考文献:
1) データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2) インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症(改訂3版)、苛原稔編、2016
3) 産婦人科診療ガイドライン・婦人科外来編2020、日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会、2020

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