落し物 1


SIGMA DP1Merrill

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昨年の夏、佐野のアウトレットで買ったベルトがある。
お店で展示されているのを見て、何となく欲しくなった布製のベルトだ。
ゴムのように伸びる材質で、金属製のDリングに通して使う。
グリーンの縞模様で、少し若向きではあったが、気に入って購入した。
そういう気分だったのだろう。

ところが使ってみると、自分には向いていない事が分かった。
引っ張るとどんどん伸びてしまい、僕の体型では、お腹の位置にズボンを維持できないのだ。
常にズボンが落ち気味になり、強く締めようとしても、ベルトが伸びてしまうので、ちゃんと固定したという感触が得られない。
いい加減嫌になってしまい、使うのをやめ、廊下の上着掛けに引っ掛けて、そのまま1年以上放置していた。

2週間ほど前、出張に発つ際、空港に行くバスの時間が迫っており、慌てて家を出なければならなかった。
ところが、スーツケースの取っ手にバッグを固定するベルトが、どこかに入ってしまいみつからない。
時間がないので、廊下にさがっていたグリーンのズボンベルトを取り、それでバッグを固定した。
案の定ベルトが伸びて、しっかりと固定することは出来なかったが、もはや猶予はなく、そのまま家を飛び出した。

危惧していた通り、途中でベルトを失くしてしまった。
空港で手荷物検査を受ける際、スーツケースからパソコンを出すために、ベンチに座って荷を解いた。
そのまま保安検査場のカウンターに向かったが、その途中か、あるいはベンチで作業した時に、ベルトを落としたらしい。
中に入って、ゲートまでかなりの距離を移動してから気が付いた。

どうしようかと思ったが、それほど気に入っていたベルトではないし、取りに戻るのも面倒に感じた。
結局そのまま出張に出かけてしまった。
数日後、帰宅途中に再度空港を利用したが、今回もバスの出発時間まで10分しかなく、しかも夜遅かったため、落し物の申し出をするのは諦めた。
仮に拾得物として届けられていても、手元に戻るまでの手続きに、かなりの時間がかかるだろうと思ったのだ。

それきりベルトの事は忘れてしまった・・・かというと、そんなこともなく、実は機会あるごとに思い出していた。
気に入らないベルトであったが、ものを失くすというのは、やはり愉快なことではない。
1年も廊下にさがっていたのだから、使わないまでも、何となく愛着も感じていた。
誰かに拾われたか、あるいはゴミ箱に捨てられて、燃されてしまったか・・・
そう思うと、何となく寂しさも感じる。

まあ、この話にはまだ続きがある。
実は現在進行形なのだ。
それについては順次ここに書いていく。
というわけで、つづく・・・(笑)
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