不審物


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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帰宅のため、駅の近くに借りている駐車場に車で入っていった。
5、6人の警察官がいるのが見えて、ギョッとなった。
車で近付いていくと、何と僕の借りている場所に集まっている。
何人かは地面にしゃがみ込んで、何か作業をしている。

見ると何やら白い袋が足元に散らかっている。
コンビニやスーパーなどに置いてあるレジ袋だ。
何かが詰まった大きめの袋が地面に放置されており、それ以外にタイヤの付いたボロボロの台車に乗った袋もある。
警察官たちはそれらを調べているようだ。

「何かあったんですか?」
車に乗ったまま、窓を開けて聞いてみた。
「そこは私の借りている場所ですが・・・」

全員の視線が一斉に僕に注がれた。
ひとりの警察官が寄ってきて、車に乗ったままの僕の脇に立ち、いろいろと質問を始めた。
どうも駐車場に不審物が放置されている・・という通報があったようだ。
よりによって僕の借りている場所に。

「ここはあなたの場所なんですね」
「はい、今朝までここにこの車を停めていました」
「その時点では、ここに不審なものはありませんでしたか?」
「はい、私の車がここに停めてあったので」
「あなたが車を移動したのは何時ですか?」
「ええと・・・朝9時少し前ですね。8時半から9時の間です。8時45分くらいかな・・・」

質問は次々に続く。
不審物・・と言っても、ホームレスが引きずって歩いているような袋だ。
薄汚れていて、台車にはペットボトルなどもぶら下がっている。

確かにこの駐車場には、時折怪しげな人物が入り込んでいるのだ。
夜などは薄暗いので、隠れて何かをするには都合がいいのだろう。
ひとりでタバコを吸う会社員、高校生のカップル、時には車のタイヤ止めに座り込んでお酒を飲んでいる人もいる。
僕の車が入ってくると、嫌々その場から退散する。
この白い袋も、恐らくホームレスがここに捨てていったものだろう。

とは言え、不審物である以上、何が入っているか分からない。
爆発でもしたら大変なので、警察も大袈裟なほどの対応をせざるを得ないのだろう。
しかしどうやら、これは単なるゴミだ・・という結論に達しつつあるようだ。
そのため僕への質問も、それほど厳しいものではなかった。

両隣の駐車エリアについても聞かれた。
朝の段階でそこに車が停められていたかどうか。
その場所はどんな人が借りているのか・・・

時間に関しては、乗ってきた電車の時刻からかなり正確に割り出して答えることが出来た。
隣の車があったかどうかについても、冷静に思い出してみると、今朝駅から駐車場に向かって歩いている時に、向かって左側の車が無い光景を見たのを思い出した。
もし事件などに巻き込まれて、警察からいろいろと聞かれても、思い出せなくて困るだろうな・・と普段思っていた。
しかし実際に聞かれてみると、緊張して脳の動きが活性化するのか、意外に次々と記憶が蘇ってくる。

流石に借りている人の素性までは、ほとんど会ったことが無いので分からない。
多分こちら側は個人の方で、反対側はどこかの会社が借りているのだと思うが、詳しくは分からない・・と答えた。

手前の人は会ったことが無いが、いつも僕が停めやすいようにと、自分の車をなるべく端に停めてエリアを広げてくれている。
だから常識のある個人の方であると考えた。
反対側は会社のマークの入った車が停められていたことがある。
何度か運転者と遭遇しているが、いつも同じ人ではないので、どこかの会社が借りて、車を共有していると思われる。
いつの間にか、こちらも探偵のような考察を始めている(笑)

警察官が不審物をどかして、僕の借りているエリアを開けてくれた。
皆の注目の中、きれいに一発で車をバックで入れて止めた。
車を降りて、「もう行っていいですか?」と聞いた。

どうぞ、もう結構ですよ、と簡単に言われた。
連絡先を聞かれることも無かった。
僕には嫌疑はまったくかけられていないようだ。
もう少し探偵ごっこが出来るかと思ったのに残念だな・・・(笑)
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