詐欺


D810 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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知人の高齢の女性が、危うく詐欺に遭うところだったという。
自宅に電話がかかってきて、国から振り込まれた還付金を取られそうになった。
相手は社会保険関係の機関のような名を名乗ったという。

ご存知の通り、この手の詐欺は横行しており、あちこちでお年寄りが騙されている。
こんな手口に騙される方が悪い・・と言う人がいるが、そういう人の方がかえって騙されやすいという。
本物か詐欺か見きわめてやろうとする人の心理を逆手にとり、いかにも本物らしく見える条件を上手に提示してくるのだろう。

電話の内容は、あちらのミスで還付金の額が少なすぎたので、追加のお金を振り込みたい、ということだった。
恐らくけっこうな額を提示し、まずはこちらの心を揺れ動かすのだろう。
そのためには一時的にお金が必要になり、取りに行くので現金で手渡してほしい、というところに巧妙に話を持っていく。

ここで問題なのは、「○○さんの還付金は○○銀行に振り込まれていますね」と相手が言ったことだ。
さらに近所にあるその銀行のATMを、受け渡し場所に指定されたという。
そのATMでお金を引き出して渡して欲しい、ということだ。
「私は行けないのですが、うちのしっかりした担当を取りに行かせますので」
と丁寧に言ったという。

相手は還付金が振り込まれた銀行を知っているのだ。
それで知人も半分信用してしまった。
もちろん電話番号と名前も知っている。
受け取り場所に近所を指定してきたということは、住所も知っている可能性が高い。

しかし知人は、誰かに受け取りに行かせるという時点でおかしいと感じ、娘に一度相談しますと言った。
あちらはそうはさせまいと、色々なことを言ったようだが、知人は相談してからと押し切って何とか電話を切った。
当然それが詐欺であることを、娘さんからも指摘された。

それにしても、相手はこちらのデータをかなり知っていた。
その事に恐れを感じた知人は、それ以降は電話がかかってきても出なかった。
実際その後何度か、その番号から電話がかかってきたようだ。

いくつかの情報が、セットで相手の手に渡っている。
一体どこから、それらの情報が漏れているのだろう。
ATMでお金を下ろしたお年寄りの跡をつけて、自宅や名前、電話番号を突き止めて、還付金を貰ったと見込んで電話をしているのだろうか。
あるいはコンピュータ上のデータがハッキングされたり、内部資料が悪意ある人によって売り渡されたことも考えられる。

知人はそれ以降電話が鳴るたびに心臓がドキドキするようになってしまった。
相手が自分の跡をつけてきたのかと思うと、怖くて夜は外に出られなくなったという。
軽いPTSDのような状態だ。

数千万円という多額のお金を騙し取られたお年寄りのニュースをよく聞くが、被害者の精神状態はその後どうなるのだろう。
高齢者でそれだけの衝撃を受けたら、それをきっかけにかなりの確率でボケてしまうのではないだろうか。
この手の詐欺は、金銭的被害だけでは済まないはずである。

僕もこの話を聞き、いつもお金を下ろしている近所のATMのことを思い出した。
そのATMは広い駐車場の隅にあるのだが、目の前には常に何台かの車が停められており、時々車の中にひっそりと座っている人がいるのに気付く。
もちろん誰かを乗せてきて、用事が済むのを待っているだけなのかもしれない。
しかしお金を出し入れするのを見張るなら、あの場所はうってつけであると気付き少々ゾッとした。
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