実情


D810 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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米国の知人から聞いた話。
彼の業界では、大手A社、B社、C社の3社が業界トップの位置にあり、互いにライバル関係にあった。
それぞれ長い歴史と伝統を持つ会社である。
そこに新進気鋭のX社が入ってきた。

X社の製品は、新素材を使用しているのが特徴であった。
旧来の素材を使ったA社、B社、C社とは違う、革新性、エコロジーを売りとしていた。
広告を大々的に打ち、これからはこちらの素材の時代だと宣伝した。

実はこの業界では、数年おきに新しい素材が開発されており、その度に新素材のブームが起きる。
しかし数年経ち、そのブームが落ち着くと、また旧来の素材を使った製品に戻る・・ということを繰り返していた。
歴史の長い旧来の方式は完成度が高く、時間が経ち冷静になってみると、やはり以前のものの方がいい、ということになるのだ。

しかし今回のX社の製品は、エコロジカルな素材という時代に合った特徴を備えており、今までの性能競争だけに終始した素材とは違う側面を持っていた。
そのため進歩的なユーザーたちがX社の製品に飛びついた。
今回は一時的なブームではなく、継続的な新しい波になり得るのではないかと、業界でも注目されていた。

X社は特定の客層を掴み、業界での地位も向上していった。
売上は上がり、会社の規模も大手の3社に並ぶものとなった。
今後はX社が加わることで、4強となると思われていた。

ところが、ある日突然、X社がC社を買収したという発表があった。
それは多くの人を驚かせ、同時に戸惑わせるニュースであった。
なぜなら革新性を謳うX社の製品は、伝統的な作りのC社の製品とは相反するものであったからだ。
なぜ今になってX社がC社を欲しがるのか、主張と矛盾しているのではないか、と皆が噂した。

C社は経営難に直面しており、そこにX社が乗り込んでいき、事実上のっとる形になったようだ。
X社にとっては、C社を安く手に入れることができる、いいタイミングであったのだろう。
知人は、X社の意図するところが知りたくて、業界のトップにも聞いてみたという。
恐らくX社は、いつか新素材のブームが終わって、また旧来の方式に戻る可能性を危惧し、今のうちにC社の技術や設備を入手したかったのだろう、という見解であった。

ところが、その買収劇の最中にいる人物から、別の情報が入ってきた。
X社の目論見は、別のところにあるという。

X社はその業界に参入するに当たり、早急に自社の地位を確立させたかった。
最終的には、自社が業界を制覇するのが目標なのだ。
しかしまともに市場でライバルと戦うとなると、時間のかかる消耗戦となり、互いに傷つき被害も出る。
それなら3強の一角を買い取ってしまい、それを生かすのではなく、潰してしまえばいいと考えたというのだ。
結果的にその方がお金はかからない、という判断である。

実際買収後は、C社の役員、関係者はほぼ追い出されてしまい、長い歴史を誇ったC社は事実上解体してしまった。
C社の製品の製造は、すべて外注に出す事になり、製造工場も閉鎖された。
まだC社というブランドこそ残っているが、完全に骨抜きにされてしまったと言える。

X社はもともと頭脳派の集団で、かなり冷徹な性格を持つ会社だという。
どちらが金銭的に有利であるかを計算し、温情のまったく入らない決断を下す。
彼らは自ら現場でものを作ったことはなく、机上の計算のみで動く人間の集団なのだ。
商品は進歩的なユーザーたちに支持され、地球環境保護に貢献するクリーンなもの、と思われているが、知人にはむしろダーティな連中というイメージが強いという。
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