やり残し


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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帰ってきた。
大分疲れていたが、自宅に荷物を置いて、会社に向かった。
溜まっていた仕事が、閉口するほどいっぱいあった。
端から片付けていったが、それでもいくつかやり残した。

夜になって帰宅すると、電話が追いかけてきた。
居間から静かな寝室に移り、得意先の取締役と長く話した。
今回の出張は疲れたが、世の中が大きく動きつつあるのを肌で感じ、得るものも多かったように思う。



クロケット&ジョーンズのアイラ。
トリュフ色のアンガス・グレイン・レザー。
リッジウェイ・ソール。
サイズは7-1/2E。

ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが、映画「007スカイフォール」の中で使用したとされる靴のひとつである。
さすがはクロケット&ジョーンズで、作りが繊細で品がいい。
似た外観のトリッカーズのカントリー・コレクションとは、同じ英国製ではあるが、ある意味正反対の靴といえる。
精悍な顔つきでありながら、無骨さはほとんど感じさせない。

靴店のセールで安く売られているものを入手した。
年末年始の売り出しで、このモデルも値引きの対象になっていた。
人気はあるらしいが、新商品に入れ替えるために、現行のラインナップから外すという。
これだけの作りであれば、まったく文句は無いし、実際店員さんも、今回のセールの目玉のひとつと感じているようだ。

サイズは7-1/2を選んだ。
実はこの色のモデルは、既にそのサイズしか残っていなかった。
履いた感じは少しルーズフィット気味で、幅はきっちりであるが、指の周辺は少し余裕がある。
靴下に厚めのモノを履いて程よい感じで、もうハーフサイズ小さくてもいいかという大きさ。
この靴を履く季節なら、靴下も厚手になるはずだから、まあいいだろうということになった。

少しきつ目のサイズを選び、時間をかけてフィットさせていくのが、正しい靴の履き方だという。
ここしばらくそれを意識して、小さ目の靴を選ぶようにしていた。
しかしその結果、靴擦れのきつい洗礼を、何度か受けることとなった。
もともと自分の足の形に合っていない木型の場合は、小さ目を選ぶと後から補正のしようがないことがわかった。

今回は在庫が無かったこともあるが、ピッチリのサイズからハーフサイズ上げた大きさである。
初日からほとんど負担を感じずに履くことのできる、緩めのフィッティングである。
何年も履き込んで、だんだんと形を合わせていくのは理想であるが、これだけ靴を持っていると、それが可能とも思えない。
自分の年齢を考えると、最初から心地よい大きさを選ぶ方が正解かもしれない。



ソールはリッジウェイ。
ダイナイトと並ぶ、紳士靴用ラバーソールの代表格だ。
有名な94%の表示が中央に見える。
発売当初の天然ゴムの含有率だそうだが、現在は技術的に向上した結果、ゴムの配合率は変わっているようだ。
それでもトレードマークとして、昔の型がそのまま使われている。

7-1/2のアイラは、試着の段階の印象では、幅が引っかかるわりにヒールが緩めなのが気になった。
踵が吸い付くようでないと我慢できない人だったら、NGを出すところであろう。
しかし、何しろこのサイズしか残っていないのだから仕方が無い。

タンの部分が薄手の革一枚で、レースを解くと前にだらりと垂れ下がってしまう。
タンのサイドも縫い合せてなく、水が浸入しそうで、何だか頼りない印象を受ける。
ところが、それ故に足入れがスムースで、ブーツとは思えないくらい、すっと履くことが出来る。
このことが、この靴の性格を物語っているかもしれない。

いざ歩き出してみると、履き心地は驚くほど快適であった。
足全体を優しく包み込む、吸い付くようなしなやかさで、当るところがほとんどない。
レースをきつく締めて歩行しても、ブーツにありがちな足首から上の違和感は非常に少ない。

緩いかと思った踵も、靴全体がしなやかなため、思いの外しっかりついてきてくれる。
甲の部分で固定する、ブーツならではの履き味が楽しめる。
硬いトリッカーズのカントリーブーツとは、対極の存在であると感じた。

トリュフと呼ばれる魅力的なダークブラウンは、様々な服装に合わせやすい色である。
なかなか重宝する靴だと感じた。
ヘビーデューティというより、お洒落でカッコいいブーツである。
実のところ、すっかり気に入ってしまった。


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