ルール


D800E + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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上海での交通マナーは滅茶苦茶であったと書いた。
出張に同行したのは数人であったが、視察中、大型のバスをチャーターして移動した。
運転手はサングラスをかけた中年の太ったおやじさんだった。
安全運転をする人だから安心してほしいと、最初に紹介されたのだが・・・

基本はクラクションを鳴らして相手を抑え込み、先に車体を突っ込む・・という運転であった。
我々日本人は顔色を失い、堪らず「あっ!」「ぶつかる!」と口から漏れてしまうことさえあった。

強引に隣の車線に割り込むと、バスの車体が長いので、隣にいた車のボディがこちらの後部側面に接触しそうになる。
その度に相手が急ブレーキで避ける・・という具合だ。
譲り合おうという気持ちは皆無で、先に入った方が勝ち・・の原則にのっとっている。

歩行者も同じ原則に基づいて行動しており、車の行き交う何車線もある道を平気で横断してくる。
車がクラクションを鳴らしながら走ってくれば、一度そこで立ち止まり、体をかすめるように車が通過すると、またひとつ車線をまたぐ・・という具合だ。
そのため道では、絶えずクラクションが鳴り響いている。
それがそこでの交通ルールなのだ。

夜にクルージングに行く予定でいたが、会議が長引き、時間的に厳しくなってきた。
仕事で来ているのだから、間に合わなければ中止でもかまわなかったのだが、運転手のおやじさんが気を利かして、何とか間に合わせようとしてくれた。

車で溢れる高速道路を、クラクションを鳴らしまくりながら、右へ左へと車線変更を繰り返して飛ばした。
大きなバスがそれをやるのだから、ハリウッド映画の中のような運転であった。

圧巻だったのは、片側3車線の幅の広い一般道路で、反対車線では向こうから横一列で対向車が来ているのに、いきなりハンドルを切り、巨大なバスを道の真ん中でユーターンさせた時だ。
対向車はブブブーとクラクションを鳴らしながら、一斉に急ブレーキをかけて停まった。
バスは巨体で道を塞ぎながら大きく方向転換し、何事もなかったかのように逆方向に走り出した。
急いでるのだから、仕方ないだろうという感じだ。
乗っている日本人は、声を出すことも出来ずに唖然としていた。

クルージングの時間にぎりぎりセーフで間に合うと、運転手のおやじさんは「どうだい」と誇らしげな顔をした。
自分は優秀なドライバーと皆から思われていると、信じて疑わない表情であった。

ここで考えていただきたいのは、これが当たり前の社会からいきなり日本に来た場合、そう簡単に行動パターンを変えられないということだ。
彼らが日本国内で一見横暴な行動をとっても、必ずしも悪気がある訳ではないのだ。
それでないと生きていけない社会から、ほんの3時間ほどで別世界の日本に到着してしまうのだから、戸惑いの方が大きいだろう。

3日間ほど上海にいただけの僕でさえ、羽田に帰り着いてリムジンバスに乗った時、その運転があまりにジェントルで、しかもクラクションの音がしないことに違和感を覚え、この運転手はロボットなのではないかと、一瞬顔を確かめたほどなのだ。



今日の時計ベルト。
2針式のジャガー・ルクルトのアンティークに、バンビの「クーリスト」のスムースカーフのブラックをつけた。

暑い夏の季節を意識した新型ベルトである。
発表されてから、店頭に並ぶのをずっと待っていたが、ヨドバシに入荷したのをみつけて早速購入した。

表素材には、日光の下でも20度以下をキープするという、特別なカーフが使われている。
裏材はメッシュ状に編み上げた特殊繊維で、熱や水分を吸収拡散しやすい特質を持つという。
抗菌防臭加工も施されている。

要するに「ひんやり感のある時計ベルト」という画期的な商品なのだ。
まさに日本のメーカーならではの力の入った製品である。
早速今日一日腕につけて、効果の程を確かめてみた。
ちょうど気温も高く、非常に暑い一日であった。

確かに快適である。
冷たいとまではいかないが、ひんやりした感触が裏材を通して腕に伝わってくる。
その状態が常にキープされるので、夏の時計ベルトに特有のイライラするような暑苦しさがない。

肌に直接触れるメッシュ繊維の裏材も、汗をよく吸ってくれる。
ラバーのように、ペタペタとまとわり付く嫌な感じがない。
サラリとした肌触りで非常に好感が持てる。

機能的には申し分のない製品だと思う。
問題は表面の革の質感で、ご覧のように何とも安っぽい。
高級な時計と組み合わせるのが、ちょっと躊躇われるほどである。

防水加工を施した同社のスコッチガードのシリーズにも言えるのだが、表面の特殊加工のせいか、革の質感がかなり損ねられているように思う。
革というより人造物のような質感で、それが安価なクラスの製品のように見えるのが辛いところ。
型押しモデルも用意されているが、そちらは見るからにスタンプを押したような仕上がりだったので、今回はプレーンなカーフの方を選んだ。

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