スナイパー


D800E + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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昔サバイバルゲームというものをやった時期がある。
その時の友人で、自分はスナイパーだ・・と公言する人がいた。

狙撃銃(もちろんトイガンであるが)を一丁だけ持って、ゲームフィールドである林の中に単独で入っていく。
迷彩服で偽装して草薮に溶け込み、ゲームの間じわりじわりと移動して、悟られないように敵陣に近付いていく。
そして一発必中で敵を狙うのである。

所詮おもちゃの銃なので、外観は狙撃銃でも、他の銃に比べてそれほど射程距離が長いわけではない。
しかしその雰囲気を楽しんでいるのだ。
確かに無闇に弾をばら撒くのに比べて、ずっと知的なやり方であるし、実際やっている当人もかなりのインテリであった。
まさに職人的といえるだろう。

これはカメラの撮影と似たところがある。
特に超望遠での撮影は、遠距離から標的を狙う、それもある一瞬を捉えてシャッターを押すという点で、狙撃とそっくりといっていい。
相手がこちらに気付いていない・・というところも、実によく似ている。
恐らく撮影者も、そのスナイパー的な快感を楽しんでいるはずだ。

フィルム時代は、ランニングコストが高いこともあって、写真一枚の価値が全然違った。
一回シャッターを押すことの重みが、今とはまるで違っていた。
必然的に、撮影者はスナイパー的にならざるを得なかった。

ところがデジタル時代になると、写真一枚にかかる金額は、事実上ゼロに近い。
厳密にはゼロではないのだが、後からとんでもない額を請求されて青くなることはない。
好きなだけ撮ることが出来るのである。

当然撮影の形態も、スナイパー型から乱射型に変わってくる。
狙撃銃ではなく、サブマシンガンである。
ほとんどの人が、デジタル時代への移行と共に、大なり小なりそういう変化を遂げたはずだ。
臨機応変に、新しい時代のテクニックを自分のやり方に取り入れたわけだ。

しかし職人気質の人には、スナイパー的な一発必中型の撮影を好む人も、きっといるに違いない。
それこそがいい写真を撮る為の条件である・・という信念を持ち、頑固にフィルム時代の形を崩さない人。
写真が「作品」を撮ることであるとしたら、メンタルな部分は極めて重要であるから、それもひとつの道であるのは確かだ。
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