エジプト


D3 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

大きな画像

学生時代にエジプトに行ったことがある。
軍のパレードを観覧中のサダト大統領が、銃撃を受けて暗殺されてから、まだそれほど経ってはいなかった。
階段状になったコンクリートの観覧席が、死体の山になった衝撃の映像が、強く脳裏に残っていた。

エジプトは、当時比較的安全な国だと言われた。
しかしかなり荒っぽい場所であったのは確かだ。

大きな2本の道路が合流するところでは、高速で走っている大量の車が、ボディをカタカタとぶつけて、互いにけん制し合いながら1本に合流していく。
チップを巡りガイドと口論になり、多く取ろうとする手から、無理矢理取り上げたりもした。
街を歩いていると、近寄ってきたアサルトライフルを持った兵士から、タバコをせびられた。
ギョッとするほど無機質な、灰色のバラックが並ぶ貧民街の横を、何度も車で通過した。

僕が泊まっていたホテルは、その後起きた反乱で破壊されてしまった。
燃えているホテルを日本のテレビで見て、唖然としたのを覚えている。
現地で見学した遺跡では、数年後に観光客への銃の乱射事件があり、大勢の人が亡くなり、日本人も犠牲になった。

ガイドに連れられて歩いている時、ある広場を横切った。
ガイドが思い出したように、「ここでサダトが殺されました」と言った。
驚いて周りを見ると、たしかにあのコンクリートの観覧席が目の前にあった。

「ここでサダト大統領が・・・」
サダトは我々の間では評価の高い人物であった。
しかし激しい貧富の差に苦しむ現地の人たちには、そんなことは関係がなかった。
その温度差を、ガイドの無感情な顔が表していた。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )