蜘蛛


LEICA X1

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ある展示会場での出来事。
ふと足元を見ると、とんでもない大きさのクモが一匹這っていた。
その大きさといったら、女郎蜘蛛どころではない。
女性か子供が、掌を広げたくらいある。
タランチュラと見紛う大きさだが、体は灰色で少しスマートだ。
それがゆっくりと脚を動かして、地面を移動していた。

こんなクモ、見たことが無い。
一瞬カニかと思った。
人によっては、卒倒するところだろう。

直感的に、どこかで展示されている東南アジアからの輸入品の箱から出てきたのではないかと思った。
よく猛毒の外来種が入ってきたと騒ぎになるあれだ。
どうしたものかと思ったが、下手に騒ぐと場所が場所だけに、大騒動になりかねない。
仕方がないので、誰も気付かないうちに、僕一人で捕まえることにした。

しかし毒でもあったら大変である。
慎重にやらなければならない。
展示ブースの設営作業に使われたらしい透明な粘着テープが、机の上に置いてあったので、それを借りてテープを数十センチ延ばして、クモを上から押さえつけた。
クモは逃げる間もなく、あっさりテープと絨毯の間に挟まれた。

テープにクモの体がくっついたろうと思い、少し持ち上げてみると、まったく粘着力が利いていないようで、隙間からひょいと飛び出してきた。
慌てて再度テープを引き出して、逃げていくクモの上から押さえた。
クモは透明なテープが見えないらしく、避けることもなく、再度地面に押さえつけられた。
逃げられないように次々にテープを出して、交差させて何枚も上から貼り付けた。

しかしこの後どうしたものか・・・
テープをめくると、クモはすぐに隙間から飛び出してくる。
足元の絨毯には何本ものテープが×の字を描いて貼られており、その中央には押さえつけられたクモが動けなくなっているのが見える。
このまま残酷につぶしてしまう事も出来るのだろうが、後始末が大変だし、毒でも吐かれたら大事である。

考えた末、紙コップをふたつ用意した。
そのひとつを出口に用意して、ゆっくりとテープの一部をはがした。
案の定クモは即座に飛び出してきて、紙コップの中に飛び込んだ。
すぐにもう一個の紙コップを上から重ねて蓋をした。
そしてテープでグルグルと巻いて、逃げられないようにした。
何とか手に触れることなく、捕獲に成功した。

すぐにパソコンをインターネットにつなぎ、巨大なクモについて調べてみた。
すると意外なことに、どうやら日本の在来種であることがわかった。
毒はなく、むしろ益虫であるという。
見たことのない巨大なクモであったが、案外日本のあちこちに生息しているようだ。

どうしたものかと思ったが、細部まで比較したわけではないので、その種類であるという確証はない。
万一有害な外来種であったら困るので、逃がすことはせず、そのまま廃棄処分にした。
ちょっと可哀相であった。
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