シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

マイウェイ~12,000キロの真実

2012-01-16 | シネマ ま行

試写会が当たったので行きました。

韓国の京城(現在のソウル)からフランスのノルマンディーまで、日本、ソ連、ドイツの3つの軍隊の軍服を着て戦った男の話。宣伝ではノンフィクションのように言われていますが、監督が1枚の写真にインスパイアされたというだけで物語そのものはフィクションのようです。

日本領だった時代の韓国。軍人を祖父に持つ長谷川辰雄(のちのオダギリジョー)とその家の使用人の息子であるキムジュンシク(のちのチャンドンゴン)は、二人ともマラソンが得意ということでお互いライバルだったが、当時韓国は日本の属国だったため辰雄のほうは完全にジュンシクのことを見下していた。戦前の国粋主義教育に加え、ジュンシクの父親が辰雄の祖父夏八木勲を暗殺した疑いをかけられたこともあり、辰雄はさらにジュンシクや韓国人への憎悪を燃やしていく。

やがて二人とも青年へと成長し、オリンピックの選考会が行われる。ジンシュクは辰雄を負かしたにもかかわらず、日本側はジンシュクが他選手の進路妨害をしたとして辰雄を優勝とする。そのことに怒った韓国の群集は暴動を起こし、その罰として彼らは日本軍に強制的に徴兵される。

日本兵としてノモンハンで戦うジンシュクの前に現れたのは大佐になった辰雄だった。辰雄の国粋主義には磨きがかけられており、「皇軍は何があっても撤退しない」と言い、ソ連軍との激しい戦いの中で撤退しようとする仲間たちを次々に殺していった。その結果、彼らはソ連軍に捕虜として捕らえられてしまう。

辰雄が狂ったように皇軍は!、皇軍は!、と叫ぶ姿にはちょっと吐き気を感じてしまった。カンジェギュ監督が悪意を持ってこういう構成にしたのかどうかは分からないが、韓国人の国民感情を満足させるための作りというのがところどころに見えて、ワタクシは普段右寄りではないと思っているけど、それでも「ん?」と思うところが多々あったりもした。

ソ連軍の捕虜になってから、日本の軍隊で韓国人を虐め抜いていた者たちが、韓国人にやり返されるところがあるが、この辺りはまぁ人間の感情としては仕方ないかなという気はした。ここで、ジンシュクの親友だった男キムイングォンはユダヤ人収容所における“カポ”のような役割を果たしていた。彼は自身も囚人の身でありながら、囚人たちを監視する特権的な役割を果たしており、戦争が人間を変えてしまう様を描いている。

ここでソ連軍として戦うか死かいう選択を迫られ、ソ連軍として戦うほうを取るのだが、ジンシュクはいいとしてもあれだけ「皇軍、皇軍」と叫んでいた辰雄があっさりソ連軍に入ることを選んだことにも非常に違和感があった。あれだけの国粋主義者ならば「天皇陛下、万歳!」と叫んで死ぬほうを選ぶと思うのですがね。辰雄の主義なんてそんなもんだったんでしょうか。韓国人を虐めまくっていた日本軍の軍人山本太郎に「大佐はソ連軍の軍服がよくお似合いで」と皮肉を言われていたが、そう言いたくなる気持ちもよく分かる。ソ連軍の上官が自分と同じようなことをしているのを見て辰雄は我が身を振り返るのだが、それもあの時代の国粋主義者にしては随分ヤワだなという印象だった。

ソ連軍が壊滅状態になったとき、ジンシュクと辰雄は共に逃げ途中バラバラになってしまうが、どちらもドイツ軍に入っており、ノルマンディーで再会する。そこには連合軍のノルマンディー上陸作戦が迫っていた。

まーとにかく戦闘シーンの長いこと。リアルは戦闘シーンというのが自慢の作品のようだから、それはそれでいいのかもしれないけど、それに費やす時間を少しは人間関係をもっと掘り下げる時間に充てたほうがずっといい作品になったと思うのだけど。子供のときは仲良かったのに戦争のために敵味方に分かれた二人という話ではなく、辰雄とジンシュクは初めからいがみ合っていたのに、それが氷解するきっかけも印象としては薄く、後半になって急に“友情物語”的な演出をされてもワタクシは全然ついていけなかった。ここに納得できた人には良い作品だったんじゃないかなと思います。

アメリカの捕虜となっても助かるように最後にジンシュクが辰雄に自分に成りすませと言って死んでいくシーンは悪くはなかったですが、その後辰雄がジンシュクとしてオリンピックに出場するというところはちょっと都合よく作り過ぎじゃない?と感じました。

 

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