シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

永遠の僕たち

2012-01-13 | シネマ あ行

両親を事故で亡くし、それ以来ふさぎ込んでいるイーノックヘンリーホッパーは、自分もその事故で死にかけて臨死体験をしたからか、日本人の特攻隊の幽霊のヒロシ加瀬亮が見えるようになり、たびたび二人でゲームをしたり話をしたり、一人の(二人の)世界にこもっていた。外出と言えば知らない人のお葬式に出ることくらい。とあるお葬式でアナベルミアワシコウスカと出会う。アナベルは余命いくばくもない病にかかっていた。

イーノックの周辺には死んだ両親、幽霊のヒロシ、お葬式、余命いくばくもない少女、と「死」ばかりが漂っていた。他人のお葬式に出かけていくというのは不謹慎で悪趣味なことなんだろうけど、イーノックにとってはある種のセラピーのようなものだったのかもしれないな。

イーノックが出会いやがて恋に落ちるアナベルは余命いくばくもないが、日々を淡々と生きている。よく映画の題材になるような生あるうちにしたいことをやりまくろう!とかそういったアクティブな行動は取らないけれど、アナベルは自分の好きなことをきちんと分かっていてその気持ちに忠実に生きているような少女だ。彼女が大好きな鳥や虫のスケッチをしたり、学名を覚えていたり、ハロウィンのお菓子を「目」「科」「属」「種」に分けていたりするシーンが素敵だった。

普通の高校生とはかなり違う青春を描いた作品で、主人公を演じる2人の演技が光る。物語の進行がとても静かなので、この2人の演技が下手だと目もあてられないということになりかねない。ミアワシコウスカの演技力というのはすでに証明済みだと思うけど、このヘンリーホッパーという子については未知数だった。しかし、イーノックという掴みどころのない役を非常にうまく演じていたと思う。

見に行く少し前に彼がデニスホッパーの息子だということを知ったのだけど、そう思って見るとなるほど顔立ちがよく似ている。デニスホッパーは汚い感じの役が多い人だったし、ワタクシの世代ではすでにおじさんだったからなかなかこの息子ヘンリーの顔と比べにくいと思う人もいるかもしれないけど、デニスホッパーの若いときにとてもよく似ている。ヘンリーを見ているとデニスホッパーもあれでなかなかの男前だったのかなと思ったりする。それにしてもデニスホッパーの息子と知った時には「息子?孫の間違いじゃないの?」と思って調べてみたら54歳のときの子だった。そりゃ、孫でもおかしくないわな。

イーノックが見る幽霊を演じた加瀬亮だけど、ワタクシは彼のプロフィールを知らなかったので、英語がネイティブな感じでびっくりした。帰国子女?と思って調べたけどアメリカにいたのは7歳までなんだよねー。だとしたら、あれは彼の努力の賜物なのか?もちろん下地はあっただろうけど、7歳だったら忘れちゃわないかな?なぜイーノックが見たのが日本の特攻隊だったのかは分からないけど、あの頃の日本人の奥ゆかしさというものがこの作品の不思議な感じによく合っていた。

ガスヴァンサント監督は60歳近い人なのに高校生の瑞々しさやぎこちなさを見事に捉え、いつまでも衰えない感性と彼の優しさを作品に投影して見せてくれる。

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