突発SS 予感

(あれ？)
いつもちゃんと鍵の掛かっている義兄の家の玄関。
ドアノブを回すとカチャリと扉が空いた。
玄関を入ってすぐの三和土には買い物してきたのか
幾つか袋が整理されず置かれたまま。
常日頃整理整頓された部屋に暮らしている義兄に
しては珍しい。
靴を脱ぎ廊下を歩く。
1階には台所と居間に風呂場に寝室。
目当ての義兄はいない。
ふと、声に気付いた。
二階からだ。
確か二階には義兄の『あちら』の客達が使う部屋がある。
一部屋は秀一も良く知る子供の部屋でもある。
声を頼りに向かうと案の定。
子供ー鬼の子修羅の部屋。
修羅を縦抱きしながら背中を軽く叩き小声で歌っている。
子守唄、ではない。
どこか寂しげな感じだ。
ずっと一緒にいる、と歌いながら
別れを決意している様な。
過ごした季節は煌めいていて眩しくて
滲んで何も言えなくなる。

そんなこと言われたら。
ー何だか。
優しい歌なのに。
秀一は慌てて部屋の扉を開いた。
「・・・秀？」
あまり驚いてなさそうに義兄が言う。
「あ、いや。
修羅寝かせてた？」
「買い物中に眠くなっちゃったみたいでね。
パパも居ないし少し不安定かな。」
そう言いながら修羅をベッドに下ろすと足元に丸まっていた
毛布を肩まで掛けた。
「で何の様？」
「あ、や秀兄が使ってた教科書貸して欲しくて。」
「オレが使ってたって・・・内容とか変わってるだろ？
あんまり役に立たなくないか？」
「秀兄のなら先生達のより使える。」
修羅を起こさない様にと階段を降りながら話す。
何時もの義兄だ。
だけど。
「秀兄。」
「んー？」
ごくりと唾を飲み込む。
「何処にも行かないよな？」

子供の様な表情で義兄は秀一を見返す長い睫毛が縁取る瞳がゆっくりと
伏せられた。
とん。と足が床に着く。
くるりと振り向いて義兄は言った。
「・・・行かないよ。」
「そっか。」
まだ暫くはね、と義兄が心のなかでだけ呟いたのに
秀一が気付くことはなかった。



〜真面目だー！
まあいつかはだと思いますがまだ時期ではないのです。
多分秀一が入社決まったら位で魔界移住かな、と。
因みに蔵馬さんが歌っているのは『まほろまてぃっく』の
1期オープニングテーマ『かえりみち』。
YouTubeあたりで聞いて戴けると泣けます。
あていうかまほろまてぃっく読んで！エロスだけじゃないから！
ちゃんと感動したから！いつかは別れなきゃならない人達の
話しですので。『かえりみち』ほんとに良い曲ですよ。
子守唄にしてたのはわたくしですが。