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「長野でのんびり翻訳生活」の野望

翻訳とか原書を読む会とか

本当にフィクションなのか

2007-08-30 09:09:42 | 読んだ本

ようやく『Never Let Me Go』読了。イシグロ、イシグロ、と言っているわりには、これが2冊目のイシグロとは、自分でも意外だ。

時代もテーマも全く違うにもかかわらず『The Remains of the Day』のStevensの思考が思い出されるのは、きっとそれがイシグロ特有の思考回路だからだろう。

「このミステリーがすごい!2007年版」の海外編BEST10で、本書の訳本『わたしを離さないで(早川書房)は第10位に挙げられている。けれど、いわゆる謎解きとは一線を画す。アーサー・C・クラーク賞の候補になったくらいだから、SF色が強い、ということか。

柴田元幸氏は解説でこう書いている。

『日の名残り』までは、要するに現実に何が起きたのかを解き明かすこともある程度大きな要素だったのに対し、その後は次第に、一人の人間の頭のなかで起きていることが主要な関心事になってきたとも言える。

 その意味では、今回の『わたしを離さないで』は、いわばカズオ・イシグロ自身の頭のなかで醸造された奇怪な妄想をとことん膨らませ、持ち前の緻密な書きぶりを駆使して強引かつ精緻に最後まで書き切ったような迫力がある。P.346

その「奇怪な妄想」が決して彼だけの妄想ではなく、どこかの国のどこかの場所で実際にありえそうなこと、決してないとはいえないことだからこそ、多くの読者が思わずページをめくってしまうのかもしれない。同じようなテーマで、ジョディ・ピコが『My Sister's Keeper』(邦題『わたしのなかのあなた川副智子訳 早川書房)を書いている。これも読んでみたい。

Never Let Me Go』を翻訳し『わたしを離さないで』という作品に仕上げたのは土屋政雄氏。ひとつの作品で二度楽しめるのは、すばらしい翻訳家がいるおかげだ。ちらっとページをめくると、「です・ます」調で書かれている。えっ、出だしからわたしの『Never Let Me Go』と違う。はて、本当に違うのか、違うのならどう違うのか。土屋先生はどうやってイシグロの世界を見せてくれるのか。さぁ、『わたしを離さないで』を楽しむとしよう。


Getting Out of the Box

2007-08-29 10:38:07 | 翻訳のこと

鏡を見れば、ここのブヨブヨとあそこのブヨブヨは一目瞭然。本当に痩せたいのなら、いくらでも方法はある。ビリーに入隊したっていい。

でも、厄介なのは、何が根本的な問題なのか自分でわかっていないことだ。確かに運動すれば、あそこもここも減るに違いない。でも、ブヨブヨがついた原因がわからないと、またきっと同じようにブヨブヨがついてしまうのではないか。

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トライアルやらコンクールやらに落ちると、自分の訳文が一定の基準に達していないことはわかる。そりゃそうだ、インプットもアウトプットもまだまだ不十分だもの、当然の結果だろう。

でも、どうももっと根本的な問題が潜んでいるような気がする。それがわからないと、たとえ、たくさん読んでたくさん訳したところで、翻訳の技術は上達しないんじゃないだろうか。無駄な努力を繰り返すことになるんじゃないだろうか。

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こうやって、頭の中であれやこれや考えては、やらない自分(やろうと思ってもできない自分)を正当化してきたような気がする。おかげで、言い訳だけはうまくなった。正当化に失敗すれば、恥ずかしげもなく文句すら言い始める。とうとう、27年間接客サービスの現場を見てきた人物から「今までに会ったことがない(最悪な)クレーマー」の称号さえもらってしまった。

でも、もういい加減、箱の中から抜け出そうか。


そんなはずはない

2007-08-28 23:56:45 | 翻訳のこと

気づいたのは朝5時半の散歩のとき。中央通りのガラス屋さんにある大きな鏡の前を歩いていると、姿勢のやけに悪い巨体が目の端に入った。ギョッ。思わず足が止まる――「いや、まさか、あれって“わたし”じゃないよね」

まずはお決まりの否定から。実は、鏡をよく見なくなってからもう18年ほど経つ。だから、脳裏にある自分の姿の残像は、都合のいいことに、頻繁に写真を撮っていた18年以上前のままで、それ以降ちっとも更新されていない。もちろん今、自分が「臨月状態」なのは重々承知、あっちのブヨブヨも、こっちのブヨブヨも感触付きの現実世界のもの。それでも、「ここまでひどくはないんじゃないか」と頭が勝手に否定してしまう。 

「そんなはずはない」と思ったら、もうどうしようもない。中央通りにあるウィンドウというウィンドウに自分の姿を映しながら歩いた。怪しいおばさんと化す。真剣になったおかげか、比較的短時間で否定段階を通り過ぎると、一つの結論に達した。そうか、真実は脳裏にあるんじゃない、この鏡の中にあったんだ……。

爽やかな朝のウォーキングが、悟りのウォーキングになった。

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真実の姿を知ったところで、即座に現状を改善できるわけじゃない。でも、真実の姿を知らなきゃお話にならない。

全身を映し出す姿見のように、自分の翻訳のどこがどう悪いのか、はっきり映し出してくれる鏡があればいいのにね。まっ、覚悟がなければ覗けないと思うけど。


変身の謎

2007-08-26 06:36:48 | 翻訳のこと

昨日は、月1回のあさま組の会合。この会の名前の由来は、「あさまに乗っても(長野―東京間の往復運賃を払っても)行きたいくらい価値のある勉強会」だ。その我が師の本Mind パフォーマンス Hacksが大ヒットを飛ばしている。こういう(どういう?)本がしっかり注目されるなんて、日本の読者も捨てたもんじゃない。さぁ、皆さんもご一緒に「ポチッとな」。金銀セットでどうぞ。

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昨日の当番(別名「俎板の上の鯉」)は王子だった。

とにかく彼の変身っぷりには脱帽である。一体何があったのか(インプットを増やしたのか、アウトプットを増やしたのか、両方を増やしたのか、何かのきっかけで書く視点が変っただけなのか、はたまたステキな彼女ができたのか……)結局わからずじまいだったけれど、翻訳の腕が上がっていることだけは間違いない。大きな壁にぶちあたり続けているわたしにとって、彼の存在は希望の光だ。「若いっていいわねぇ、何でも吸収できて……」なんて思わない(ちらっと思ったって否定する)のが自分のいいところだと思う。

ちなみに、(狭義の)あさま組にはわたしの希望の光が王子以外にもあと3名いる。っつうことは何? わたしは光に溢れた希望の国の住人っつうことかい? 

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「量をこなす」は最近のテーマだ。Live Earth Concertsの『地球温暖化サバイバルハンドブック』つながりで偶然知り合ったいわなさん(実はその前に2度ほどお顔を拝見していたのだが……世の中狭すぎ)とも、「英語を読む絶対量が足りない」なんていう話をした。

そこへもって、楽しみにしていた『プロフェッショナル 仕事の流儀13』が届いた。お目当ては漫画家の浦沢直樹さんだ。「プロフェッショナルとは……」という問いに対して、「締め切りがあること。そして、その締め切りまでに最善の努力をする人のことじゃないかしらと答える浦沢さんに、さすがプロだ、かっこいいと痺れた。

本をめくっていると、茂木さんのコメント、

「なぜか作品の量と質は比例する。ある程度の作品を生み出し続けていないと、質も高まらない」とさわやかに断言する浦沢さんの姿勢に、……(P.114

が目に飛び込んだ。そうなんだ、まちがいなく量と質は比例する。

結局、読んで訳すしかない。


9月8日

2007-08-24 13:45:14 | 翻訳のこと

昨日の続き。

マック信者には申し訳ないが、「この本を読まなきゃ」と思ったのはスティーブ・ジョブズの本だからではない。井口さんの本だからだ。翻訳を仕事という観点で見るようになったのは、おそらく彼の「二足の草鞋の履き方がきっかけだったように思う。それからは掲示板やMLで彼の発言を読み(げっ、ストーカーか)、「そうか、翻訳者って職人なんだ」とぼんやりと遠く厳しい世界を思い描いた。

その彼の本が出たというのだから、買わずにはおられまい。ちょうどジョブズがスタンフォード大学の卒業式ですばらしい祝辞を卒業生に送った頃だったので、ジョブズが旬だったこともある。しかし、ページを開くまでにあまりにも時間を要したために、さらに二冊(『ウィキノミクス』、セキュリティはなぜやぶられたのか)も訳本が出版されてしまった。ひぃぃぃ。

一度直接話を聞きたい、聞きたい、と思っていたら、青山で話をされるという。そんなわけで、急遽、9月8日に青山詣でを決行することにした。どうか、14,000円払って行く価値がありますように。翌日は師の直接講義だから、なんと2連チャンだ(しらなんだ、この「連荘」って麻雀のテクタだったのか)。

もし午後4時から青山に行かれる方がいらしたら、是非お声がけを!