COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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食糧を武器にしたモンサントの世界戦略の脅威 PART II

2008-06-21 16:33:52 | Weblog
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PART Iから続く)

PART II目次
6.モンサントによる科学的データの改ざん
7.ラウンドアップ・レディー大豆の安全性検証の実態
8.知的財産として種子の特許権を追求するビジネス戦略
9.インドにおけるモンサントのビジネス戦略
10.メキシコのトウモロコシの遺伝子汚染
11.南米パラグアイへの除草剤耐性大豆の侵出
12.NHK合瀬解説委員の論評
13.考 察

6.モンサントによる科学的データの改ざん
 発売後10年で、除草剤耐性大豆はアメリカで栽培される大豆の90%に達した。アメリカでは市販されている食品の70%が、遺伝子組換え作物由来の成分を含んでいる。安全性についてFDAバイオテクノロジー部門の責任者だったジェームス・マリアンスキーは、モンサントから提出されたデータをFDAの科学者が精査したから問題ないと豪語するが、ロバンが「モンサント社」と「科学的データの改ざん」でGoogle検索すると17万4000件をヒット、EPAの報告書にダイオキシンの発がん性の研究結果の改ざんで摘発されたという情報も見つかった。
 1949年、ウエストヴァージニア州ニトロのモンサント社2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)製造工場で爆発事故が発生、被害を受けた従業員の皮膚に塩素挫創と呼ぶ病変が発生した。(注:塩素挫創は我が国のカネミ油症患者にも発生が認められている)。原因は2,4,5-T製造に副生されるダイオキシンによるものであった。2,4,5-Tは枯葉剤Agent Orangeの主要成分のひとつで、ベトナム戦争では南部森林地帯にダイオキシン400キログラムを含む枯葉剤が散布され、数千人のアメリカ人を含む300万人が被害を受けた。戦争終結後30年の現在でも、がんや重度の遺伝的機能不全による被害者が増え続けている。1978年、ベトナム帰還兵達が枯葉剤を製造していた複数のメーカーを提訴した。モンサント社はニトロの工場の爆発事故で被災した従業員としなかった従業員のがん発生率に差がないというデータを提出した。EPAのケイト・ジェンキンズ博士はEPA科学諮問委員会に、研究が正しく行われたかどうか再調査するように要請したが受け入れられず、却って嫌がらせを受けた。1990年代になって、従業員をグループ分けした際、二つのグループ間で差が出ないようにして、データの捏造が行われたことが判明した。

7.ラウンドアップ・レディー大豆の安全性検証の実態
 ラウンドアップ・レディー大豆が在来種と実質的に同等であるから安全であるという根拠とされた論文は、モンサントの研究者達がアメリカ栄養学会に発表した、下記のものであった。
Hammond BG, Vicini JL, Hartnell GF, Naylor MW, Knight CD, Robinson EH, Fuchs RL, Padgette SR. (Monsanto Company, St. Louis, MO 63167, USA.), The feeding value of soybeans fed to rats, chickens, catfish and dairy cattle is not altered by genetic incorporation of glyphosate tolerance. Journal of Nutrition, vol. 126, 717-727 (1996).
 ノルウェーベルゲン大学のイアン・プライムは非常に価値が薄く、科学的に何も実証されていないお粗末な研究と次のように酷評している。a) 動物実験のよって大きな変化が起きないことが、”いくばくか”明らかになったとあるが、ほとんど100%近い保証が必要である。b) 臓器の所見で色が濃くなっていることを除けば、肝臓は正常だったとあるが、顕微鏡で組織像を調べていない。c) 老齢ラットが使われているが、変化を調べるなら若いラットを使うべきであった。
 このように不十分な安全性の検証にもかかわらず、遺伝子組換え作物は南北アメリカ、アジア、オーストラリアなどで作付けが進み、10年間で栽培面積は100万平方キロに達した。その70%は除草剤耐性遺伝子、残りは殺虫性遺伝子をそれぞれ導入したものである。

8.知的財産として種子の特許権を追求するビジネス戦略
 モンサント社は2000年以降の毎年、自社のビジネス戦略が倫理的に間違っていないと声明を出しているが、最も問題になっているのは知的財産としての種子の特許権である。アメリカでモンサントの種子を購入する農家は、特許権を尊重するテクノロジー同意書に署名せねばならず、どんな場合でも収穫した種子を翌年に撒くことは許されない。アメリカ大豆協会のホフマン副会長は、ロバンのどうやって検証するかの質問に意味ありげな笑いを浮かべて答えをはぐらかした。図らずもどこかの農家に種子が見つかった場合は、その農家とモンサント双方に納得の行く形で解決するよう努めることになっている。しかし、ワシントンの食品安全センターの追跡調査によると、少なくとも100軒の農家が特許権侵害で提訴され、多くの農家が破産したという。モンサントは農家の畑の作物を抜き打ち検査するための組織(遺伝子警察)を創設し、違反摘発を進めるとともに、密告も推奨している。番組ではインディアナ州の農民が、近隣農家との信頼関係が崩壊したと、モンサントを非難している。1995~2000年にかけて、モンサントは世界の50余りの種子企業を買収した。扱う種子はトウモロコシ、綿花、小麦、大豆以外にトマトやジャガイモも含まれており、いずれはモンサントが種子市場を独占し、全てを遺伝子組換え品種にしてしまうおそれが出てきている。

9.インドにおけるモンサントのビジネス戦略
 モンサントはインドのような発展途上国には、より高品質でより多くの収穫が期待できる作物を栽培するため、バイオテクノロジーが不可欠と主張している。モンサントは1999年、世界第三の綿花生産国インドの大手種子企業マヒコを買収し、2年後にインド政府からボルガードという商品名で、BT綿の販売許可を取得した。これは、パチルス・チューリンゲンシスという細菌(BT)由来の殺虫性毒素を導入した綿で、蛾の幼虫を寄せ付けない性質がある。2006年に南部のアーンドラ・プラデーシュ州でBT綿に病害で大きな被害がでた。BT綿と在来種綿の比較調査を行っていた二人の農業経済学者は、BTの毒素遺伝子が導入された際に、何らかの相互作用が起こって、綿の木を枯らす病気への抵抗性が弱まったのではないかと推測し、モンサントのWebサイトでは殺虫剤使用量78%減・収穫量30%増と謳っているが信用できないと語っていた。インドの綿の種子市場はモンサントの支配下にあり、農民達には以前はあった在来種の種子より4倍も高価なBT綿の種子を買う以外の選択肢がない。小規模農家は借金して種子を購入するので、凶作の場合は破産に追い込まれる。マハラシュトラ州ビダルバ地区では、米作地域の自殺者は多くないが、綿作地域では2005年のBT綿導入後の1年で600人、2年目は半年で680人の自殺者が出ている。2006年12月にはビダルバ地区で暴動が発生し、数十人が逮捕された。綿の価格は低迷し、来年はBT綿の栽培をやめたいかの問いかけに、画面の農民全員が手を挙げていた。
 ヴァンダナ・シヴァは、1993年にもう一つのノーベル賞といわれるライト・ライブリフッド賞(The Right Livelihood Award, )を受賞し、自殺の種子(Seeds of Suicide, Zed Books Ltd, 2005/12)を著したインドの女性科学者で、遺伝子組換え作物の普及に強い異議を唱え、伝統的種子を守るためにナブタニヤ(Navdanya)運動を主宰している。シヴァは1960年代に食糧増産のために進められ、インドでは失敗に終わった緑の革命(高収量品種と機械化)を厳しく批判した。特許権に守られた遺伝子組換え作物の導入を、第二の緑の革命と呼んで厳しく非難している。緑の革命は公共セクターによって進められ、肥料や農薬の売り上げを増やす隠された目的はあったが、主目的は食糧の安全保障にあった。第二の緑の革命は食糧安全保障とは無関係に、モンサントの増収だけが重要視されている。モンサントが開発に取り組んでいるBT遺伝子導入作物は20種類ほどあり、オクラ、ナス、米、カリフラワーなど手当たり次第で、種子を知的財産として所有できるという規範を確立してしまえば、特許使用料を徴収できる。栽培する全ての作物や種子をモンサントに依存することになる。種子を支配すれば食糧を支配することになる。爆弾や大砲より強力で、世界を支配する上でこれ以上の方法はないと警告している。
 モンサントはWebサイト上で、誠実、対話、透明性、共有を公約に掲げて行動していると反論している。続いて1993~2000年にCEOを勤めたロバート・シャピロの「世界中の国々が、次のような疑問に納得の行く答えを見出そうとしている。遺伝子組換え作物は環境に安全か、植物、昆虫、鳥類にどのような影響を与えるか、在来種と交配したらどうなるか。モンサントはその答えを導くためのあらゆる警戒に注意深く耳を傾けて行きたい」とのスピーチが入る。しかしロバンは、「在来種への遺伝子汚染は、自然界の秩序の一部と言っている」とのWebサイトの情報を指摘する。

10.メキシコのトウモロコシの遺伝子汚染
 メキシコはトウモロコシの在来種が世界でもっともよく守られてきた国で、オアハカ州南部だけでも150種のトウモロコシを見ることができる。農民達は種子を買わずに、翌年用に収穫したものの中から良いものを撒いてきた。ところが北米自由貿易協定(NAFTA)によって、国内で栽培を禁止してきた遺伝子組換えトウモロコシの大量輸入を阻止できなくなり、市場に出回るトウモロコシの40%を占めるようになった。遺伝子組換えトウモロコシはアメリカ政府から多額の補助金を受けているので、在来のものの半額で売られている。地元農民は、遺伝子組換えトウモロコシによる在来種の破壊と世界支配の目論見で、思い通りにされたら多国籍企業から肥料や殺虫剤を買わねばならない。在来種なら使わずに育つのにと憤っている。
 カリフォルニア大学バークレー校のイグナシオ・チャペラとデヴィッド・クウィストは、オアハカ州の在来種トウモロコシが遺伝子汚染されていることを見出し、2001年11月にイギリスの権威ある科学誌ネイチャーに論文を掲載した(David Quist and Ignacio Chapela, Transgenic DNA introgressed into traditional maize landraces in Oaxaca, Mexico. Nature, vol. 414, 541-543 (2001))。 ところが出版後、ネイチャー誌宛に論文の信憑性を問題視する大量の抗議文が寄せられ、きわめて異例のことながら掲載は取り下げられ、チャペラは大学から解雇されてしまった。しかし、チャペラの論文にはメキシコで強い関心が持たれ、国立生態学研究所の調査でメキシコの五つの地域のトウモロコシにラウンドアップ耐性遺伝子やBT毒素遺伝子による汚染が確認された。研究所のエレナ・アルバレス・ブイヤ博士が実験的に問題の遺伝子を在来種トウモロコシに導入したところ、自然界に見られない形の花を咲かすものが現れた。メキシコの農村では、先住民組織代表の青年が畑に異常がないか十分注意し、形状の異常なトウモロコシを見つけたら直ぐ雄しべを取り除くように呼びかけていた。しかし、トウモロコシの花粉は風で遠くまで運ばれて受粉するので、自然界に放たれた遺伝子組換えトウモロコシが在来種と交配するのは不可避であり、伝統的在来種に制御不能な影響が及ぶことが恐れられている。
 後になってネイチャー誌の論文掲載取り下げの一件は、モンサント側が仕組んだネガティブ・キャンペーンであったことが分かった。イギリス南部の遺伝子作物監視団体GM Watchのジョナサン・マシューズによると、論文を掲載したネイチャー誌出版の前日、ある人物から世界中の科学者宛に「メキシコのトウモロコシが汚染されたと聞けば、活動家達は好き勝手なことを言うだろう」という電子メールが送られ、翌日には別の人物が「チャペラは科学者である前に活動家だ」という記事をWebサイトに掲載した。二人のIPアドレスを辿って行くと、一人目はモンサントを顧客に持つ広告代理店、二人目はモンサントセントルイス本社の人物であった(Monsanto's dirty tricks campaign against Chapela - Interview with GM Watch founder, )。マシューズは、邪魔立てするものは誰でも信用を失墜させる、ひとかけらの倫理観もない卑劣なやり方だったと語っている。マシューズによる糾弾はイギリスのマスコミには報道されたが、モンサントは無視した。そのWebサイトでは、食糧問題と環境問題を完全に調和の取れた形で解決すると主張し、実際的経験がバイオテク依存的、伝統的、および有機の農業システムの共存が単に可能なだけでなく、平和的に進んでいることを実証していると表示している。

11.南米パラグアイへの除草剤耐性大豆の侵出
 2007年、南米の除草剤耐性大豆の作付面積は40万平方キロに及び、10年前に正式に栽培を認可したアルゼンチンのほか、いつの間にかブラジルやパラグアイにも広がった。パラグアイは2005年に除草剤耐性大豆の栽培を認可したが、輸出先のヨーロッパで表示が義務付けられたためで、実情はひそかに持ち込まれたものが既に合法的に栽培されていたのも同然であった。モンサントはパラグアイで生産される大豆についても特許使用料を徴収する権利を得た。パラグアイでは農地の70%を人口の2%が所有し、小規模農家の排除が容赦なく進んでいる。至る所で飛行機や大型散布機から散布された除草剤が小規模農家の居宅や畑のすぐ近くまで迫り、住人、家畜、家禽の健康被害を起こし、作物を枯らしている。毎年10万人が農村から都市のスラムに移住している。世界ではBSE発生による植物性飼料への切換えやバイオ燃料ブームによる大豆価格の急騰で、遺伝子組換え大豆の需要が急速に高まっている。
 小規模農家代表のホルヘ・ガリアノはバイオテク農業と伝統的農業は相容れない農業モデルであり、前者は地域社会や小規模農家の暮らし、生物多様性、生きるために必要な天然資源を破壊し、貧困と死をもたらす。モンサントの目的は農民抜きの農業で世界の食糧を支配し、農民から自給自足能力を奪っている。自分達の農業を続けるべく、家族、地域、祖国を守るため闘わねばならないと語った。ロバンが続けた。パラグアイの人々だけでなく、我々も闘わねばならない。2007年、モンサントは世界50ヶ国で18000人を雇用、株価は上昇し、利益は10億ドルに上った。株主には年金基金や銀行だけでなく、無数の個人投資家も含まれている。
 ルバンがモンサントに取材申込みの電話を入れたが、建設的ものになると思えないと拒絶されて、ドキュメンタリーが終わっている。

12.NHK合瀬解説委員の論評
 終了後、NHKの合瀬解説委員が以下のように述べている。多様な植物資源確保は人類生存に不可欠であるが、世界的価格競争で、より少ないコストでより収穫の多い品種への集約化が起こっている。農業が始まってからおよそ1万種の植物が使われてきたが、今日では150種の作物で人間が養われている現状から、国連が品種減少に強い懸念を示している。一方、増え続ける人口を養うために高生産性を持つ品種の開発は不可欠である。遺伝子組換えはそれを実現する重要な技術の一つで、食糧安全保障の上で、遺伝子組換え作物をどう位置づけるかを、改めて考える時に来ている。

13.考 察
 筆者は根っからの遺伝子組換え作物反対論者ではない。乾燥や塩害に強い植物の開発に、遺伝子組換え技術が役立つ可能性は否定できない。しかし目的はあくまで飢餓と貧困の撲滅にあり、健康と環境安全について十分過ぎるほどの検証の上で実施されねばならないと思う。このドキュメンタリーは、遺伝子組換え作物に批判的立場で作られており、モンサント側の見解はほとんどWebサイト上の綺麗事に限られているので、両側の意見のバランスを取って構成したものとは言えない。しかし、データの改ざん、出鱈目な安全性評価、アメリカ政権内部との癒着、執拗な特許権追及、卑劣な反対派の駆逐、伝統的農業を破壊された農民達の困窮、自然交配による汚染や、有りうる非合法的手段による実質的栽培面積の拡大など、下手なテレビドラマを凌駕する迫力と説得力があった。手当たり次第に知的財産として種子の特許権を取得するモンサントの戦略は武器より強力な、これ以上はない食糧による世界支配になるというヴァンダナ・シヴァの警告は、物事の核心を突いている。世界の農地を化学物質まみれにしてしまうような遺伝子組換え技術への依存は、絶対に避けるべきである。


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1 コメント

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Unknown (あずーる)
2008-10-26 03:13:51
はじめまして♪かなり詳しくかかれているのでTBさせてもらいました。知れば知るほど恐ろしいですね。

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