月下美人（八分咲き）
私は生来、生き物が嫌いです。
怖いというか、気持ち悪いというか、とにかく苦手なのです。
虫類が嫌いなのは言うまでもありませんが
犬や猫も例外ではありません。
そんな我が家でも、12年間ほど真留子という犬を飼っていたことがあります。
ちなみに、漢字を使うようにとの姑からのお達しにより
まるこ改め真留子になったのでした。
（犬にいつ漢字の出番があるというのでございましょう）
犬を飼うようになったのは、子供にせがまれてというパターンだったのですが
何せ、私が犬に触れないため
当初の約束通り、中学生と小学生だった息子たちは
懸命に世話をしたものでした。
犬嫌いな私も、徐々に慣れてはきましたが
なかなか触ることはできませんで
長い間、挨拶係としてのお役目を頂戴していた次第にございます。
朝起きると、真留子おはよう～
散歩に行く真留子を見たら、行っといで～
エサの用意ができたら、真留子ごはんだよ～
てな感じでございます。
そんな状態でしたから犬の首輪が外れて脱走されたときなど
犬好きのお隣の方に頼んで、捕まえてもらったり
病気かどうかの判断もお隣の方にしてもらっておりました。
私は、そんな風でしたし
散歩担当係の夫も特に犬好きと言う訳でもなく
唯一、頼みの綱であった次男が結婚してしまうと
真留子は絶望したのか家出をしてしまったのでした。
散々、探し回ったのですが
行方不明のまま、今日に至るというわけでございます。
さてさて
昨夜、長男が改まった顔をして私のところにやってまいりました。
オフクロ・・・と言ったっきり、10秒ほど間がありました。
な・・なんだろう！？
いよいよ結婚でもする気になったというのか！？
三十路独身男が改まると言えば、結婚話と相場は決まっております。
そうかそうか。いよいよ決めたのか。
あまり嬉しそうな顔をしていないのは、照れ隠しか！？
それとも、この話しにくそうな雰囲気は・・
もしやもしや
できちゃった婚なのか！？
まぁ、それも致仕方ありますまい。
結婚の踏ん切りがついたのだから善しとしようじゃないか。
いいよいいよ。母さまはそんなことにはもう驚かないよ。
てなことを考えていたのでございますが・・・
オフクロさあ、犬飼っちゃダメ？ ときたもんだ。
えっ！？ ええっ！？ えええっ！？
やっぱり、ダメだよねぇ・・・・・・・・・・・・・しょげている長男。
こどもかっ！
突然どうしたのかと尋ねましたらば
職場で貰い手を探しているとのことでした。
足が短くて茶色の毛で・・
どうやらミニチュアダックスフントのことらしいのですが
犬種も知らないような長男や犬嫌いな私しかいない家に連れて来られても
犬の方だって、いい迷惑でしょうし、お隣の家だっていい迷惑です。
そんなこと百も承知のはずなのに
どういう心境の変化なのでしょう・・・
結婚を諦めた女性は犬を飼うなどと言いますが
まさかおのれ～結婚をしないでこのまま我が家に居座るつもりではあるまいな！？
だとしたら忌々しき問題でございます。
結婚したらアパート住まいになるのですぞ。
犬なんて飼える道理がありますまい。
結婚話しが出そうにない長男にダブルで釘をさしておきました。
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