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聖教新聞(2016/11/23)〈介護〉 認知症の人が落ち着く言葉 ㊤

2016年12月17日 22時40分46秒 | コラム・ルポ

〈介護〉 認知症の人が落ち着く言葉 ㊤

2016年11月23日 聖教新聞

“引き算介護”で納得を
認知症相談センターゆりの木 代表 右馬埜節子さん
 
   

 認知症の人が落ち着く言葉掛けや接し方として“引き算介護”を提唱する、認知症相談センターゆりの木・代表の右馬埜節子さん。2000人以上の認知症の人との出会いから生まれた、効果的な対応を右馬埜さんに聞きました。(写真は本人提供。㊦は30日付に掲載予定)

生きざまが出る

 認知症介護の家庭では、娘を「お母さん」と思い込んでいる父親や、自宅にいるのに「家に帰る」と言う母親に、「『お母さん』じゃなくて娘でしょ」「ここが自宅よ」と説得を繰り返し、本人も家族もストレスをためてしまうケースがよくあります。
 介護者がいつも振り回されたり、問題がこじれたりする原因は主に、認知症への理解不足にあるといえます。
 認知症とは、一言でいえば「忘れる病気」です。私たちも、物忘れをすることがありますが、認知症はそれが脳の病気によって起きます。
 私たちは生まれた時から、脳という“記憶のつぼ”に知識や経験をためていく「足し算の世界」に住んでいます。
 ところが認知症になると、このつぼが上から壊れ、中にためた記憶や新しい体験がこぼれ落ちる「引き算の世界」に。数秒前の出来事すら覚えていない一方で、数十年前の出来事を覚えていることがあります。つぼが上から壊れるので、底に残った過去の言動が表れやすくなるのです。
 私が自宅を訪ねた元税理士の70代男性は、認知症で計算もできなくなっていました。デイサービスに通うのを勧めても、当時は5月なのに「3月は確定申告で忙しいから」と拒否。外出させたい家族は焦るばかりでした。
 認知症の人には職歴や生活歴など、人生の象徴的な部分――すなわち「生きざま」が色濃く出ます。中には、戦中のつらい体験と思われる動作を繰り返す人も。その様子を見た私は、尊敬と愛着を込めて「ぼけざまは生きざま」と思うようになりました。

つもりや疑いも

 認知症になり、まだ現役で働いているつもりの状態を私は“つもり病”と呼びます。何日も入浴していない人が、お風呂を勧められても「昨日入ったのでいいです」と断る場合も同じで、本人は入ったつもりになっているのです。
 お風呂に入らないと、体が臭くなったりして誰でも気分が悪くなるものですが、認知症だとそうとは限りません。脳機能が損なわれているため感覚が鈍くなるからです。
 その影響で①ズボンの上にステテコをはくような、ちぐはぐな服装②家の中が“ゴミ屋敷”③ひげや髪が伸び放題④何日も化粧を落とさないで上塗りする――といったことも。突然、無精になったように見える特徴があります。
 また、認知症は徐々に進行する病気なので、発症初期は「正常に振る舞えるときもあれば、分からなくなるときもある」ということが。いわゆる「まだらぼけ」です。
 このとき、真っ先に異変を感じるのは、実は本人。変な状態を悟られたくない気持ちから、閉じこもりがちになる人もいます。夫婦二人暮らしだと、家の中で頻繁に相手を捜す人も。1人でいるのが不安なのです。
 さらに「家族に財布を盗まれた」、妻や夫が「浮気している」など、あらぬ疑いをかける場合も。疑われた人は身に覚えがないので否定しますが、いくら本当のことを言っても疑いは晴れません。
 これらの言動は“認知症のサイン”かもしれないので、注意しておきましょう。

寄り添うウソで

 認知症の人が一度“こう”と決めると、いくら「説得」しても聞き入れないものですが、本人が「納得」すれば、すんなり動いて心も穏やかになることがあります。
 先ほどの事例の元税理士に私は「すみません! うちの申告もお願いします」と言いました。すると「いいよ」と二つ返事。その後、税理士としてデイサービスに通うようになったのです。
 このように納得を引き出す方法を私は「引き算する」と呼んでいます。簡単にいえば「ウソをつくこと」。認知症の人に正しいこと(事実)を分からせようとしても、混乱するばかり。言う側もストレスがたまって疲れます。そんなときは「ウソも方便」で、相手の引き算の世界へと歩み寄ってみてください。
 「ウソ」というと聞こえが悪いですが、ウソには「欺くウソ」と「寄り添うウソ」があります。認知症の人の命や生活を守るには寄り添うウソが“架け橋”となるのです。
 中には、「相手にばれたら困る」「認知症の人が傷つくのではないか」と思う人もいるでしょう。でも、認知症は「忘れる病気」ということを忘れないでください。時間がたてば忘れるし、傷つくこともありません。うまくいった方法は何度でも使えます。
 感情的にウソをつけない人もいますが、私は共に生きる“知恵”だと考えます。ウソの奥に優しさがあるかどうかが問題ではないでしょうか。
 ぼけ方も十人十色なので、誰にでも必ずうまくいく方法はありません。自分ならではの成功例を作って“引き算名人”になってほしいですね。

 うまの・せつこ 1943年、岡山県生まれ。「認知症相談センターゆりの木」代表、㈱日本エルダリーケアサービス執行役員。93年から認知症専門の相談員として介護の仕事に携わる。2003年に「デイホームゆりの木中野」を設立し、その後、認知症相談センターを併設。現在、中野区地域連携型認知症疾患医療センターの専門相談員を兼務し、研修・指導・講演等も行う。


 

これから当地の義父と実家の両親とに、備えておかないといけないことだからね。 

 

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