スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」の配信が始まった22日、列島各地は、画面を見ながらキャラクターの「捕獲」を楽しむ若者らであふれた。一方で、「歩きスマホ」をして夢中になるあまり、立ち入り禁止区域に入ったり、転倒する人も続出した

警報機鳴る 敷地に侵入する…

 22日午後0時半ごろ、京都市上京区の京都御所で、大学1年の男子学生(18)が塀に近づいたため、侵入防止用の警報音が鳴り響く騒ぎがあった。警察官に注意されると、男子学生は「珍しいポケモンが出てきたので近づいてしまった」と話したという。

 同じようなトラブルは全国で相次いだ。

 熊本地震で被災した熊本城では午前11時半ごろ、20代とみられる男性が、立ち入り禁止区域へ侵入しようとした。案内人が危険だと説得すると、男性は立ち去った。市は任天堂に対し、城の敷地でポケモンが現れないような措置を取るよう申し入れた。

 このほか、宮城県大崎市三本木で午後3時ごろ、市営住宅の敷地に、ポケモンGOをプレー中の中国人男性2人が侵入した。

 一方、情報セキュリティー大手のトレンドマイクロ(東京)はポケモンGOの偽アプリを20日までに43種類確認したと明らかにした。最も悪質な偽アプリはダウンロードすると外部から遠隔操作し、端末情報を抜き取る機能があった。

自転車で走り回り20匹ゲット

 トラブルをよそに、列島各地は画面を見ながらキャラクターの“捕獲”を楽しむ若者らであふれた。

 任天堂の本社がある京都市の京都御苑(同市上京区)。友人2人とプレーした京大4年の男子学生は周囲を2時間ほど歩き回っていたというが、「夢中になりすぎて危険だなと思ったので車が通っていないところの方が安全だと考え、京都御苑に来た」という。

 神戸の観光地、神戸北野異人館街では、男子大学生(22)が自転車に乗りながら市内を移動し、キャラクター20匹以上捕まえたといい、「バッテリーを携帯し充電しながら遊んだ。遊ぶときは自転車を止めた」と話した。

 国内外からの観光客でにぎわう奈良市の奈良公園では、大学2年の女性(20)が奈良市内の大学から自宅へ帰る途中、東大寺境内に珍しいポケモンがいると思って立ち寄ったという。大学の階段ではゲームをしていた学生が転倒しているのを見たといい、「周りの状況に注意してやろうと思う」と話していた。

 琵琶湖を臨む大津市のなぎさ公園にはゲームを楽しむスウェーデン人の会社員男性(35)の姿も。「琵琶湖では、魚など湖ならではのポケモンも多く面白い」。和歌山市毛見の紀三井寺公園に来ていた高校1年の男子生徒(16)は「外出すればするほどポケモンを捕まえることができる。当分は遊び続けたい」と笑顔をみせた。

「ポケモンに罪はない…」

 「ポケモンに罪はない。安全に楽しんで」。人気ゲームの配信と祇園祭が重なった京都市は「歩きスマホ」が事故につながりかねないとして、そんな異例の呼びかけに乗り出した。

 22日は、24日の後祭の山鉾巡行を控えた宵山期間で、市内には多くの観光客が詰めかけている。山鉾などが建ち並ぶ京都市中心部で、委託されたスタッフが、プラカードに「歩きスマホはおやめください」と書かれた紙を貼り付け、注意を呼びかけた。

 京都市観光MICE推進室の担当者は「ゲームが悪いわけではないが、祇園祭の山鉾には貴重な文化財もある。注意して歩いてほしい」と話した。

 また、出雲大社(島根県出雲市)はポケモンGOの境内での使用を禁止するとホームページに掲載。広島市は、平和記念公園(同市中区)にある原爆ドームの敷地内など立ち入り禁止区域の監視強化を要請した。

 このほか、原子力規制委員会は、ゲームをしながら原発など原子力施設に近づいたり、敷地内に入ろうとしたりする人が現れることを念頭に、警備を強化するよう事業者に求めた。


「やれやれ…」と思ったけど、ちょっとプレイしてみたいかも…。