北海道新幹線の開業に向けた作業で、青函トンネルを走る在来線の旅客列車が数日、運休します。しかし貨物列車は、運休することなく走り続けます。これは何を意味するのでしょうか。

旅客列車を止めて貨物列車を運行

 本州と北海道を結ぶ青函トンネル。現在は在来線が通っていますが、2016年3月26日からは北海道新幹線が走り始める予定です。

 これに伴って必要となるのが、地上設備を新幹線用に切り替える作業。JR東日本・JR北海道の両社は2015年9月16日、新幹線の開業4日前にあたる2016年3月22日から開業前日の3月25日まで、青函トンネルを通るすべての旅客列車を運休して、この作業を行うと発表しました。

 ところが、これを受けてJR貨物は2015年9月18日、青函トンネルを通る貨物列車について、2016年3月22日以降も通常通り運転する方針を明らかにしています。

 旅客列車は運休させるにもかかわらず、貨物列車は運休させないのです。

青函トンネル、その一般には見えにくい価値

 現在、青函トンネルを通る1日の列車本数は、旅客列車が30本に対して貨物列車は51本。年間およそ450万トンの貨物が、青函トンネル経由の鉄道輸送に頼ります。これは津軽海峡をフェリーで渡るトラックの輸送量に、ほぼ匹敵する数字です。

 鉄道貨物で北海道から本州に発送されるのは、おもに乳製品や農産物、それに紙製品や自動車部品など。本州から北海道に到着するのは、宅配貨物や食品、衣類、書籍に雑貨などです。

 鉄道はフェリーに比べて、季節や天候に左右されず安定的に運行できる強みもあります。いまや青函トンネルの貨物列車は、1日たりとも“止められない”存在になっているのです。

貨物列車へ配慮する新幹線

 このように、青函トンネル経由の貨物輸送があまりに重要なため、北海道新幹線の開業後も、貨物列車は新幹線と線路を共用して運行が続けられます。

 ただし在来線と新幹線はレールの幅が異なるため、共用区間では在来線の2本のレールにもう1本レールを追加する「3線軌条」が採用されました。

 しかしながら、新幹線と貨物列車の線路共用には課題も残ります。

 新幹線は260km/h、貨物列車は110km/hと互いに大きな速度差があるため、すれ違う際の風圧によって、貨物列車の荷崩れなどが懸念されるのです。

 そこで、上下線のあいだに隔壁を設置したり、新幹線規格の車両に在来線の貨物列車をまるごと積んで運ぶ「トレイン・オン・トレイン」方式などが考えられていますが、いずれも決定打とはなっていません。

 国土交通省の審議会では「当面、青函共用走行区間は140km/hでの走行とする。ただし将来の速度向上を目指して検討を継続」するとしており、現在のところ共用区間では、貨物列車のために新幹線がスピードを落とさざるを得ない状況になっています。


いつからでしょうかねぇ、自分が、旅客列車よりも貨物列車に興味をいだくようになったのは…。