離婚後の生活を考えたときの最大の心配事は、自分のことよりも子どものことではないでしょうか。ここでは、子どもと生活していくために重要な「養育費」について紹介しましょう。

■そもそも養育費とは?

 養育費とは、子どもを育てるのに必要な費用のことをいいます。衣食住に必要な経費や、教育費、医療費、最低限度の文化費、娯楽費、交通費など未成熟子が自立するまでにかかるすべての費用が養育費に含まれます。

 誤解しがちなのは、養育費は別れた配偶者のために支払うものではなく、あくまでも子どもが持つ権利であるという点です。また、親権がどちらにあろうと、両親の資力に応じて支払いをしなくてはなりません。

 ですから、たとえば離婚を決める際に「離婚さえできれば、養育費は要らない!」と妻側から提案したとしても、子どもが親から扶養を受ける権利は放棄できません。養育費は「子どもの権利」であり「子どもに対する義務」ということになのです。

■養育費は、どうやって決まる?

 養育費は、夫婦がふたりで話し合って決めるケースがほとんどです。「支払いの期間」「支払い金額」「支払い方法」という3つの要素を軸に協議します。

 金額を決定するにあたっては、「現在、子どもを育てるためにかかっている費用」「今後の成長にともなって発生する費用」「夫婦それぞれの財産」「今後の収入や経済状態」などを検討します。

 大切なのは、取り決めた内容を書面に残しておくということ。口約束で終わらせないためにも、法的な強制執行力のある「強制執行認諾約款付きの公正証書」にしておくことをおすすめします。

 なお、話し合いで決まらないときは、離婚と同じく家庭裁判所の調停を利用して決定することができます。調停でも決まらなければ、裁判に持ち込む覚悟も必要でしょう。あいまいなまま放っておくことは、自分と子どもの将来にとって大きなマイナスになると考えていいでしょう。

■養育費の相場は、どのくらい?

 養育費の相場は、夫婦によってさまざまです。収入が異なれば、生活水準も変わってくるため、一般論で「一律いくら」ということは言えないからです。必要経費の算出と夫婦間の分担額の算出をしたうえで養育費を計算することが一般的でしょう。極端な話、一方に経済力がなければ、他方が全額負担することもあります。

 東京家庭裁判では、養育費早見表を発表しています。年収と子どもの人数、年齢によって標準的な養育費の金額が出ていますので、目安にしてもいいでしょう。

□養育費の目安の一例

・年収500万円のサラリーマンがパート年収100万円の妻に支払う場合(子ども1人、0〜14歳)……月額4〜6万円

・年収800万円のサラリーマンが専業主婦の妻に支払う場合(子ども3人、いずれも未成年)……月額16〜18万円

■養育費の支払い期間と支払い方法は?

 養育費の支払い期間は、基本的には「子どもが社会人として自立するまで」とされています。ただし、それは未成年を意味するものではありません。「高校を卒業するまで」「18歳になるまで」「20歳の誕生日まで」「大学卒業まで」など、親の財力や家庭環境のよっても決定の基準は変わります。

 いずれにしても、子どもの生活レベルや環境が離婚前に比べて落ちるようなことがないように配慮するのが大人のつとめではないでしょうか。

 養育費を確実に受け取るためには、支払い方法をしっかり決めておくことも大切です。「一括払い or 月払い」「振り込み or 手渡し」など、細かいと思うことまで具体的に取り決めておくことで、後々のトラブルを回避できることも多いでしょう。

■養育費の支払いが滞ったら、どうする?

 「払う約束をしたものの、待っていても相手から支払われない」というケースでは、慰謝料や財産分与と同様に相手に請求することができます。

 具体的な方法には、相手に対して内容証明郵便を使って相手の支払いをうながす方法があります。

 それでも支払われない場合は、家庭裁判所に養育費の支払請求調停・裁判を申し立てたのち、強制執行力のある調停調書や審判書で決め直します。裁判で家庭裁判所の調停や審判で決められた養育費の支払いを守らない人に対しては、一定の制裁金を支払うように裁判所が履行勧告・履行命令を出して心理的に強制する制度もあります。

 覚えておきたいのは、養育費は将来分の給与まで差し押さえが可能ということです。つまり、一度、取り決めた養育費が一度でも支払われなかった場合には、一回の手続きで継続的な収入について将来分も差し押さえができるというわけです。差し押さえの上限については、「給料の2分の1」が上限とされています。

 ただ、離婚した際の条件に納得できていなかったり、面接交渉がうまくいっていない場合は要注意。法的な方法をとるとかえって意地になってしまう人も多く、仕事を休まれるケースさえあります。

 そのためには、パートナーの性格を予測することが大切でしょう。法的におさえつけることを目的とするのではなく、親として子どもの将来のために支払う気持ちを促すよう形にして文章をつくること。または、つくってもらうことがよい結果につながることがあります。

岡野 あつこ


とりあえず、メモ代わりに…。