「グラン・ガラ」(7月22日)-1


  お盆休みに入ったし、忘れないうちにぼちぼち書こか~。

  この公演の正式名称は「第3回グラン・ガラ・コンサート 私たちはひとつ!!」、英語表記は"GRAND GALAⅢ"です。会場はオーチャード・ホール。


 第1部

 『アルレキナーダ』よりヴァリアシオン(音楽:リッカルド・ドリゴ、振付:マリウス・プティパ)

   二山治雄

  二山君は去年のローザンヌで1位獲って話題になったあの男の子です。その後にユース・アメリカ・グランプリでも1位獲って、今はサンフランシスコ・バレエ・スクールに留学中とのこと。

  『アルレキナーダ』って、衣装からすると道化かピエロ人形の話ですかいな?二山君は往年のエリマキトカゲを想起させるでっかいフリルの襟、カボチャみたいにふくらんだ袖の白いブラウスに、下はなんだったっけ?色や模様は忘れたけど、膝丈ズボン、白いタイツ、黒いシューズだったかな。

  まず、この衣装がよくない。二山君の顔が巨大フリルの噴水の中に完全に埋没。袖もボリューミー過ぎて腕の動きがまったく見えず。更に、膝丈ズボン、白タイツ、黒シューズという、脚が短く太く見えてしまう禁断のコーデ。

  そういうわけで、二山君の踊りについては結局よく分かりませんでした。ジャンプの際の開脚が180度以上ということはよーく分かりましたが。踊りの全体が見えないような衣装はいけません。

  ずいぶんと小柄なようだけど、まだ若いんだから悲観することはないと思います。東洋人は欧米人よりも身体の発育が遅く、特に男子は女子よりも遅い。また欧米人でも、パリ・オペラ座バレエ団のマチアス・エイマンみたいに、20代で身長がぐんと伸びた例もある。それに二山君は顔が小さく、頭身のバランスがいいので、体型的にも決して不利ではないのでは。

 『海賊』よりメドーラとアリのパ・ド・ドゥ(音楽:リッカルド・ドリゴ、振付:ワフタング・チャブキアーニ、アレクサンドル・チェクルイギン)

   オレーサ・シャイターノワ(キエフ・バレエ)、ブルックリン・マック(ワシントン・バレエ)

  くすんだ金のハーレム・パンツを穿いたブルックリン・マックが舞台上に走り出てきた瞬間、ガタイの良さ、自信に満ちた堂々たる態度、強いオーラ、圧倒的な存在感に目を奪われました。二山君には気の毒なことでしたが、直前に踊った二山君との大きな差を冒頭からはっきり見せつける形になりました。「コンクールで1位だった子」と「プロのダンサー」とはやはり大きく違うのです。

  メドーラ役のシャイターノワは白と藍色がグラデーションになったチュニック・ドレス姿。アリ役のマックは姿勢こそ奴隷でしたが、押しがかなり強くて、今にもメドーラを強引に口説きかねない感じのアリでした。横にコンラッドがいたら怒ったろうなー。

  マックのパートナリングの能力は非常に優れています。「ろくろ回し」なんか、シャイターノワがいつまで回るのかと思ったほど。頭上リフトも磐石。マックを初めて観たのが、確か2013年の第1回「グラン・ガラ」でした(去年は観に行けなかった)。マックは2年前よりパートナリング能力が上がったような気がしました。それともシャイターノワとの相性がいいのだろうか。

  シャイターノワは四肢が長く、身体が柔軟で(←キエフ・バレエのダンサーについてこんなこと書いても意味ないんだけど)、まずシャイターノワのアラベスクを見て驚嘆。まるで腰から脚が生えてるみたいな感じでした。どーゆう背骨と股関節をしてんのか。

  アリのヴァリエーション。冒頭のアラベスク。半爪先立ちが高く、後ろに上げた片脚も高し。そのままでキープ。きれい。後半でマックはやりたいほーだい、跳躍の瞬間にびっ!と180度開脚しながら回転して着地、を複数回。客席から驚きの声が上がり、早くも拍手が出る。最後は片膝立ちの姿勢のまま、上半身を後ろに思いっきり反らせてキメのポーズ。後ろに反らせた上半身は美しい弓なりの形で、後頭部は床に着かんばかり。割れんばかりの大拍手となった。

  マックにここまでやられては、シャイターノワがかわいそうではないか、と思ったのだけど…。

  メドーラのヴァリエーション(テンポが速いほうの音楽。『ドン・キホーテ』の森の女王のヴァリエーションと同じじゃないほう)。

  シャイターノワも負けてなかった。リズミカルにステップを踏みつつ、音楽の「ため」に合わせて、随所にバランス・キープをさりげなく、しかし余裕たっぷりにかます。トゥで立ったままの軸足の前、後ろ、前、後ろ、と、交互に片方の爪先で細かくステップを踏み、更に回転しながら同じ動きを続ける。そしてその動きを加速させていく。ここで客席から拍手が湧き起こった。お、拍手出た!と思ったら、シャイターノワの爆速回転&舞台一周でやっぱり大きな拍手。こうしてシャイターノワはマックの「添え物」にならなかったのである。

  コーダ。マックがジャンプしながら再登場。高い。脚もよく開いてる。上体まっすぐ、手足もまっすぐ。連続回転の後は再び高くジャンプし、両脚を前後に開いたプリエのような姿勢で空中で1回転した。床から2メートルくらいも浮いているように見えた。客席から大きなどよめきが起こった。

  続いてシャイターノワのフェッテ。こちらも無事成功。ただし、直前にマックがやった跳躍が凄すぎて、印象が薄くなってしまった感は否めません。でも上げた片脚の角度が90度、つまりほぼまっすぐに脚を伸ばしていて(ザハロワみたいなやつね)、私の大好物な形のフェッテでした。  

 「DEUX」(音楽:ジャック・ブレル、振付:クレール・ブリアン)

   エレーナ・エフセーエワ(マリインスキー劇場バレエ)、アンドレイ・エルマコフ(同)

  この作品は男性のソロと男女二人によるパ・ド・ドゥ部分からなるようで、今回はパ・ド・ドゥが踊られました。エフセーエワはサーモンピンクのキャミソールワンピース、エルマコフは白いシャツに黒ズボンと「レ・ブルジョワ」みたいな衣装でした。エフセーエワはすっかり大人の女性らしい美しさに。

  このガラのために振り付けられた「世界初演」作品ということです。この手の「世界初演」モノにはトンデモ作品が多いので、まったく期待していませんでしたが、この「DEUX」は存外に良い作品だと思いました。

  男性が女性を振り回す複雑なリフトが多用されており、エフセーエワの手足が描いていく流線が非常に美しかったです。あとは、エフセーエワが身体を丸めた姿勢からエルマコフに持ち上げられて、その瞬間に手足を直線的に一気に伸ばしたり、エルマコフの両肩を縦断(?)するように身体を移動させたり。

  他にも特徴的なリフトがありました。エルマコフの手のひらの上をエフセーエワが階段みたいに上るとか、エルマコフの大腿部にエフセーエワが身体を斜めにして立つとか。手足をまっすぐに伸ばし、微動だにしないエフセーエワの姿勢の美しさが際立つ作品でした。

  ただ、新作だけに二人の練習が足りなかったのか、リフトの処々にガタつきやもたつきが見られました。すべてのリフトがスムーズに行けば、もっと見ごたえがあるだろうなと思いました。この「DEUX」はまた再演してほしい作品です。


 『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ(音楽:チャイコフスキー、振付:マリウス・プティパ)

   マリーヤ・アラシュ(ボリショイ・バレエ)、アレクサンドル・ヴォルチコフ(同)

  終始ぐだぐだ(笑)でした。アラシュはまだ根性で頑張っていましたが、悲惨だったのがヴォルチコフ。アダージョでのサポートとリフト、ヴァリエーション、コーダでのソロ、すべてが絶望的な出来。

  ヴォルチコフのパートナリングはかな~り頼りなく、ぎこちなくて、「ろくろ回し」でしょっちゅう軸が斜めになってしまったアラシュが、途中でヴォルチコフに本気でブチ切れるんじゃないかとヒヤヒヤしました。ヴォルチコフは一人で踊るときも動きがかな~り重たい感じでした。ただ演技も覇気がなく頼りなさそうだったのは、おバカ王子のジークフリートですからちょうどよかったと思います。

  たぶん、バレエ団が夏休みに入ったら、身体も夏休みモードになってしまって、思うように動かなかったんだと思います。前にもボリショイのプリンシパル二人が、ファルフ・ルジマトフが日本で開いたガラ公演で踊ったとき、おんなじようにひどかったんでびっくりしたんだよな。奇しくも、演目も同じ黒鳥のパ・ド・ドゥ。

  男性のほうはルスラン・スクヴォルツォフでしたが、女性のほうの名前は忘れました。今にして思えば、あの二人も身体が夏休みモードになっちゃってたのでしょう。今さらだけど、(たぶん)ボロクソ書いちゃってごめんね。

  アラシュはメイク薄めで、目をかっと見開いて、鋭い視線で王子と観客を睨みつける演技で通しました。でももしかしたら演技じゃなかったかもしれません(笑)。  

  (その2に続く。『カルメン組曲』はそこでね)
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )


« 『兵士の物語... 「グラン・ガ... »


 
コメント
 
 
 
ジョナサン・オリビエさん (みーしゃ)
2015-08-11 23:18:15
ボーン版の「白鳥の湖」でスワンを演じたことがある
ジョナサン・オリビエさんが、交通事故で亡くなったそうですね。
「ザ・カーマン」の千秋楽にバイクで向かっていた途中に、事故に会い即死?だったようです。
何と、劇的な事件なのでしょう!

スワンを演じたダンサーが38歳で亡くなるなんて…
直接の関係はないけど、何だか悲しいですね。
 
 
 
人の死というもの (チャウ)
2015-08-12 14:34:46
ジョナサン・オリヴィエさんが交通事故で亡くなったとのこと、私もニュースで読みました。

38歳という若さです。本人はどんなにか無念であったろうと思います。

また、オリヴィエさんには奥様と子どもさんたちがいらっしゃると知りました。

いつもと同じように元気に仕事に向かい、いつもと同じように家に帰ってくるはずだった夫が、父親が、突然死んでしまった。残された家族の方々は、どんなにショックを受け、打ちのめされていることでしょうか。

これは「劇的」ではなく、みーしゃさんもおっしゃっているように、ただただ「悲しい」ことです。

私の父も40歳の若さで亡くなりました。脳卒中で、ほぼ即死だったそうです。朝いつもどおり出勤し、夕方に職場で倒れて病院に搬送され、翌朝に遺体となって帰宅しました。

母はショックのあまり、父の死の前後の記憶がいまだに曖昧です。立ち直るのに10年かかった、と言っています。

オリヴィエさんの家族、親族、友人、ファンの方々が、時間をかけて、徐々に悲しみと苦しみとから立ち直っていけるようお祈りいたします。
 
 
 
たまたまですが、今日は… (みーしゃ)
2015-08-12 21:56:21
日航ジャンボ機墜落から30年の日です。
あの飛行機に乗った方の家族も、突然の死を受け入れることは、なかなか出来なかったでしょう。

節目、節目に放送される番組や手記を見ていると、突然人生を断たれてしまった方々の無念さと、残されたご遺族のその後の人生を考えると、何とも言えない気持ちになります。

チャウ様のお父様もずいぶん若くして亡くなられたのですね… お母様も、どれだけショックで途方に暮れていらしたことでしょう。 

オリヴィエさんの記事が日本の新聞に載ったことで、少しでも多くの方々が彼のために祈ってあげてほしいと思います。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。