シンデレラ

  今日は新国立劇場バレエの「シンデレラ」(フレデリック・アシュトン版)を観てまいりました。いや~、すてきでした~

  まず、私はオーケストラ(東京フィルハーモニー交響楽団)を心の底から讃えたいです。このあいだのマリインスキー・バレエの公演、演奏したマリインスキー劇場オーケストラは、実にひどかったですからね(劇場専属のオーケストラがバレエ公演で演奏する場合はこれだから厄介です)。

  それに比べて、プロコフィエフのあのロマンティックでドラマティックな音楽を、きれいに美しく演奏した東京フィルハーモニー交響楽団は本当にすばらしいです!

  ところで、シンデレラの義姉たちがダンスのレッスンを受ける場面で、伴奏のヴァイオリン弾きとして登場したお二人は、実際の団員さんではないのでしょうか?なんかヴァイオリンの音の通りがぜんぜん違ったように思ったのですが。

  シンデレラはロイヤル・バレエのアリーナ・コジョカル、王子も同じくロイヤル・バレエのフェデリコ・ボネッリが踊りました。

  アリーナ・コジョカルは非常にすばらしかったです。まさしくロイヤル・スタイルのバレエで、アシュトンのトリッキーなステップの踊りを、完璧に踊りこなしていました。それに、久々にあのロイヤル・バレエ独特のアラベスク(身体が微妙に前のめりになっていて、手足のポーズが直線的)を目にして、ああ、ロイヤル・バレエだー!と思いました。

  ただ、最初は彼女のトゥ・シューズの音がうるさくて、やがて新国立劇場バレエのダンサーたちが、ほとんどトゥ・シューズの音を立てずに踊りながら登場してくるにつれて、コジョカルのトゥ・シューズの音も静かになっていった気がします(笑)。

  残念だったのはフェデリコ・ボネッリで、今年の夏にスターダンサーズ・バレエ団のピーター・ライト版「くるみ割り人形」の公演で観たときには、とても魅力的で王子オーラが発散されていたのですが、今日はなぜか精彩が感じられませんでした。

  ソロの踊りではバランスが不安定でジャンプも低く、コジョカルとの踊りでも、両者のタイミングがバッチリ合っていたとは思えません。回転するコジョカルの腰を支えてサポートするところでは、コジョカルの身体が斜めになっていました。コジョカルを持ち上げるところでも、「よっこいしょ」という感じのもたもたした動きで、ちょっと夢から覚めちゃいました。

  なまじコジョカルの調子が良かっただけに残念で、コジョカルとボネッリはふだん、どのくらいの頻度でパートナーを組んでいるのかは知りませんが、これならコジョカルの恒常的なパートナーであるヨハン・コボーを招聘したほうがよかったと思います(コボーのスケジュールが合わなかったのかもしれませんが)。

  ひとくくりにしてしまって申し訳ないですが、新国立劇場バレエのダンサーたちは、相変わらずの整然とした見事な群舞と、各々が高いレベルの踊りを披露していて、本当にすばらしかったです。
  四季の精の踊りでは、冬の精を踊った寺島ひろみさんが、安定していてきびきびとした、いかにも冬の精らしい踊りを見せてくれました。

  そして、道化を踊ったグリゴリー・バリノフは、今回もやわらかくて弾むように踊っていました。シンデレラの強烈な義姉たちにどつかれるコミカルな演技も笑えました。

  ぜひとも触れておかなくてならないのは、シンデレラの上の義姉を踊ったマシモ・アクリさんです。下の義姉は篠原聖一さんでしたが、やっぱり演技がおとなしくて、体のデカさ、目をむいた表情のコミカルさ、凶暴・強烈なキャラクターと三拍子揃ったアクリさんのおかげで、義姉たちが退屈な(ごめん)「シンデレラ」のストーリーを随処で引きしめていました。

  最後にひとつ驚いたこと。アシュトン版「シンデレラ」の著作権は、アシュトンからマイケル・サムス(マーゴ・フォンテーンの主なパートナーの一人)に譲渡され、マイケル・サムスの死後は、彼の未亡人であるウェンディ・エリス・サムスが所有しているそうなのです。

  ウェンディ・エリス・サムスも元ロイヤル・バレエのプリンシパルで、アシュトンから直接の指導を受けて「シンデレラ」を踊ったそうです。今回の公演では、彼女が演出と監修を行なっています。

  そのせいか、今回の公演と去年のロイヤル・バレエ日本公演での「シンデレラ」とは、舞台装置や踊りの一部に違いがありました(舞台装置と衣装はロイヤル・バレエからのレンタルらしいですが)。特に王子の踊りはかなり違っていたように思います。

  今回の公演は、ロイヤル内部で世代を経て引き継がれたアシュトン版「シンデレラ」ではなく、アシュトンがまだ健在だったころの「シンデレラ」オリジナルの姿を綿密に再現しているのではないか、と思いました。だとしたら、貴重なものを見せてもらいました。
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コメント
 
 
 
ヴァイオリンの先生は・・・ (アリス)
2006-12-23 23:56:18
はじめまして、アリスと言います。バレエはあんまり詳しくなくて、音楽のほうが得意です。

さて、文中にあるヴァイオリンをもった音楽の先生2人ですが、あれは間違いなく本物ですね。トップではないですが、上手に弾いていたので、拍手してあげても良かったかもしれません。

プログラムにも、オーケストラの団員がずらっと並んでいるところに、「バンダ」(別働隊のこと)として、2人の名前が載っています。
 
 
 
やっぱり! (チャウ)
2006-12-24 01:16:58
アリスさん、はじめまして。コメントをどうもありがとうございます。

なるほど、「バンダ」というのは「別働隊」を意味するのですね。私は「バンダ」という語を辞書で引いたのですが、載っておりませんでした。

ヴァイオリンを弾いていたお二人は、ちゃんと18世紀風の衣装を着て、かつらをかぶっておられましたね。

今日観た公演では、お二人がヴァイオリンを弾いている最中に、デカいほうの姉が近づいて色目を使っていました(笑)。
 
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