どうしたベルディヒ


  いや、もちろん良い意味でさ(笑)。

 全豪オープン男子シングルス準々決勝 トマーシュ・ベルディヒ対ラファエル・ナダル

   6-2、6-0、7-6(5)


  ベルディヒは対ナダル戦、なんと17連敗中だったそうな。フェデラーの対ナダル連敗記録(確か5連敗とかじゃなかったっけ)よりひでえじゃねえか。それが、250でもない、500でもない、マスターズ1000でもない、グランド・スラムという大舞台で、劇的なストレート勝利。

  ベルディヒの勝因はずばり、ウェアのデザインが普通に良かったことと帽子をようやく脱いだことだと思われます。

  

  帽子を脱いだベルディヒ、う~ん、やっぱりティムラズ・ガバシュビリに似てる。基本的にフランケンシュタイン顔なんだよな。

  これは冗談半分、真面目半分で、ウェアはともかく、帽子を脱いだことは象徴的だと思います。ベルディヒがどんなコートでも常に帽子をかぶってプレーしていたのは、おそらく仮面効果(自分を外部から遮断することで安心できる効果)のためもあるんじゃないかと感じていたんです。帽子を脱いだってことは、もう仮面効果は必要なくなったのかもしれません。

  私は以前ベルディヒのことが嫌いでしたが(フェデラーの天敵だから)、ベルディヒは実はグラス・ハートの持ち主だろうと徐々に思うようになりました。どの大会でもいいところまで上がるのになかなか優勝できないのは、いまいち気の弱いところがあるからでしょうし、悪意があると受け取られがちだった言動も、自信のなさの裏返しだったのでしょう。

  去年のツアー・ファイナルズの際、参加選手たち8人がテームズ河に浮かんだ船上に一堂に会するイベントがありました。そのときにベルディヒが率先して選手全員を集めてセルフィーを撮りました。スマホをかざしたベルディヒの明るい笑顔を見て、この人は本当は良い人なんじゃないかという思いをいよいよ強くしました。

  85年生まれのベルディヒは今年で30歳を迎えます。テニス選手の30歳はキャリアの境目とみなされています。バレエ・ダンサーの40歳みたいなもんですな。29歳を迎えた去年からそれを意識してか、ベルディヒは自分のキャリアに集中したいという理由で、デビス・カップに参加しませんでした。でも、その気持ちがなかなか成績に結びつかないようでした。

  今日の対ナダル戦、終わった今でこそベルディヒの「圧勝」と表現できるでしょうが、試合が終わるまで油断できないのがナダルという選手の怖さです。現に第3セットは接戦となり、ナダルは何度もピンチに陥りながらも、驚異的な精神力でそれらをしのいでいました。タイブレークも最後のポイントが決まるまで結末が読めませんでした。

  日本人の判官びいきで、今まで17連敗もしているのなら、今度こそはベルディヒに勝ってほしいと私は思い、ベルディヒを応援していました。しかし、会場は大多数がナダルの味方で(ナダルが劣勢だったせいもあるでしょうが)、ナダルがポイントを取ると大喝采と拍手の嵐が湧き起こるのに対し、ベルディヒがエースやウィナーを決めてポイントを取っても、実にささやかな拍手の音が静かに響くばかり(笑)。

  ベルディヒ、ほんとに人気ねえなあと思いつつ、でもくじけずにがんばれよ、根負けするなよ、自分から崩れるなよ、と心の中で応援してました。第3セットのタイブレーク、ベルディヒはさぞ緊張したことだろうと思いますが、最後までよく耐えました。ベルディヒがミニブレーク1つという僅差で勝った瞬間、思わず拍手しちゃいました。

  私はこれからもベルディヒを応援するかもしれません(ただし、フェデラーと対戦する場合は除く)。ベルディヒ、少なくとも私の中では空気脱却です。今日の劇的な勝利、本当におめでとう。

  フェデラーはベルディヒを見習うべき。更に、ナダルに勝ってきた他の選手たち全員を見習うべき。彼らはナダルを突き放して見ている。当然のことながら、対戦する以上はナダルを「敵」とみなして、恐れることなく勇猛に戦って勝った。フェデラーは、「ラファ」との「お友だちごっこ」をいいかげんに卒業しなくてはならない。ナダルに対する生ぬるい「友情」を切り捨てないと、これからもずっと勝てないよ。

  それにしても、これでボトム・ハーフは誰が決勝に進むのか読めなくなったなあ。

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