本日のアダム・クーパー3


  本日最終日でした。本当に当日券が売り切れだと貼り出してあったので驚きました。立ち見券も出ているという話でしたが、どこに立ち見席があるのかは分かりませんでした。

  キャストたちは全員が超リラックスしているようでした。楽日名物のおふざけやお遊びもありました。でももちろん度を越すものではありませんでした。振付を即興で変えて踊ったり、演技をほんのちょっと変えたり、アドリブでセリフを追加したりなど。

  ああ、みな楽しんでるな、と思い、観ている側も楽しくなってしまいました。

  アダム・クーパーの踊りは、今日は体力をセーブせずに大盤振る舞いでした。ピルエットの回転数も普段より2回は多かった気がします。

  第一幕最後の「雨に唄えば」では、降りしきる雨と床にたまった水の中で、いつまでもぐるぐる回っていました。その姿に、客席から一斉にため息が漏れました。

  第二幕の「ブロードウェイ・メロディ」の最後でもぐるぐる回り続けているので、へー、こんなに回れる人だったのか、やればできるんじゃん、と感心しました(←ごめんね)。

  やっと踊りがキレキレになってきたのに、もう終わりなのは残念です。

  コズモ役のステファン・アネッリも今日はやりたい放題で、"Make'em Laugh"ではクーパーが思わず「はっはっは~!」と声を立てて笑ってしまったほどでした。"Moses Supposes"では、アネッリが発声教師の陰からアドリブで頻繁にギャグを入れてくるので、クーパーは笑いをこらえるのに必死なようでした。

  そういえば、今日の発声教師役はいつものルーク・ダウリングではありませんでした。こんなことを書いて申し訳ないですが、滑舌がダウリングほど良くありませんでした。それで「チェダーチーズがチェスナットでうんたら」の早口言葉もちょっと不明瞭でした。でもそのかわりに超早口で一息に発音してみせ、観客の拍手を引き出すことに成功しました。

  第一幕の「グッド・モーニング」が終わると、例によって万雷の拍手と大喝采。キャシー役のエイミー・エレン・リチャードソンが仰向けに横たわったまま、両手で顔を覆いました。泣きそうになってしまったのでしょう。アネッリも横たわったまま腕だけを上げ、観客の拍手と喝采に応じました。

  休憩時間には、スタッフが総出で水のふき取り作業です。最後に2人のスタッフだけが残るのですが、これはどうもイギリス側のリーダーと日本側のリーダーのようです。作業が終わると、二人はがっちりと握手をし、イギリス側のリーダーが日本側のリーダーの腕をぽんぽんと叩きました。それを見ていた観客の間から大きな拍手が湧き起こりました。イギリス側のリーダーはハンチング帽を手で上げて会釈をし、親指をぐっと立てて嬉しそうにほほ笑みました。

  最後のシーン、キャシーはリナの吹き替えをしていたことが明らかになっていたたまれなくなり、舞台から下りて駆け去ろうとします。それをドンが呼び止め、観客に向かって「みなさん、その女性を止めて下さい!彼女こそが真のスターなんです!キャシー・セルドン!」と叫びます。観客が拍手します。その拍手が今日はいつにもまして大きく、リチャードソンはまたしても泣き出しそうな表情になっていました。

  カーテン・コールは、今日はすぐに総スタンディング・オベーションになりました。最終日とあって、何度も行われました。観客の拍手が止まなかったせいもあります。最近よくある、主催者側による「無理やりスタオベ」ではありません。みなが熱狂的な拍手を送っています。

  カーテン・コールがくり返されるたびに、拍手は逆に大きくなっていきます。私も、まだ終わらせてなるものか、と必死に拍手しました。隣の男性客たちも「ヒュー!」と何度も叫んでいます。

  シンプソン社長役のマックスウェル・コールフィールドは渋くニヤリと笑い、キャシー役のリチャードソンはついに手で両眼の涙をぬぐいました。リナ役のオリヴィア・ファインズも手で涙をぬぐっていました。

  途中で、バチン!という音とともに、お祝いの金色のテープが客席に大量に舞いました(記念に1本持って帰りました)。

  いつもはクーパー、アネッリ、リチャードソンの三人だけがカーテン・コールの最後に残るのですが、今日はキャストたちが全員舞台上に残りました。そして、いつものように観客に水をぶっかけると、次にはなんとキャスト全員が互いに水のぶっかけ合いを始めました。主役、脇役、アンサンブルの関係なくです。

  アダム・クーパー(43歳、妻子あり)は主にアネッリと水をぶっかけ合っていました。しまいには水の中に大の字になって寝っ転がるキャストも出る始末(笑)。ガキのように水かけ合戦をやっているキャストたちの様子に、観客は大爆笑でした。

  最後にアダム・クーパーだけが残り、客席に手を振りながら舞台奥の扉へと向かいました。いつもは扉は開けっぱなしなのですが、今日は扉が閉められました。クーパーは両側からゆっくりと閉まっていく扉の陰に立ち止まって、扉が閉まるまで観客に手を振り続けていました。やがて扉は完全に閉まり、『雨に唄えば』日本公演が終わりました。

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