キエフ・バレエ『バヤデルカ』(12月26日)(仮)


  予想を裏切る(?)すばらしさでした。実は、どーせ大したことないだろ、と思ってたんです。エアで土下座して謝ります。ごめんなさい。

  ニキヤ役のナタリア・マツァークは、いつものように時おりムラが見られた(いきなりガクッと不安定になったり、かと思うと直後は完璧に踊ったり)ものの、技術は申し分なし。そして相変わらず美しい(惚れ惚れ~)。演技にもうちょっと深みがあればもっとよかったなー。

  ガムザッティ役はエレーナ・フィリピエワ。待ってました!この人がいるだけで舞台がビシッ!と引き締まります。あの優しい顔でニキヤを見据え、そのままニキヤにどんどん詰め寄っていくところは迫力満点。ニキヤを殺すことを決意するシーンでは、眼だけをカッと見開いて、前を睨みつけていました。そのときのフィリピエワの表情が超怖かったです。目が合ってしまった(気がする)。ひええ。

  フィリピエワの踊りもやはり別格でした。ポーズひとつとっても全然違う。磨きに磨き抜かれて、艶々とした輝きを放っている感じでした。微塵も隙なし。

  大僧正役のセルギイ・リトヴィネンコも圧倒的な存在感のある人でした。大僧正はこのくらい大きくて個性的な人でないといけないと思います。でも、顔に黒いペンシルで何本もシワ描きまくり(笑)。描きすぎだよ(笑)。いいけどね(笑)。

  本日の収穫その一。マグダウィア役のヴィタリー・ネトルネンコ。この人はすごいっすよ。明日もマグダウィア役で出演するようなので、まあ見て下されい。

  なのに、マグダウィアの踊りの振付が小ぶりなものに変更されているのは実に残念。第一幕の儀式での踊りで、マグダウィア独特の両足揃えたあの回転がなかった。第三幕冒頭のマグダウィアの火の踊りも、なぜか狭いところ(幕と舞台の縁の間)で踊らされていて、あれはなんとかならんかいな。

  本日の収穫その二。太鼓の踊り!!!!!去年のマリインスキー劇場バレエ日本公演『ラ・バヤデール』のヘタレな踊りとはぜんっぜん違う。ダンサーがみんな気合い入れて全力で踊ってる!ああ漲る元気と躍動感!そして、明日の公演ではなんとフィリピエワがこの踊りに加わる予定。楽しみ~。

  本日の収穫その三。ソロル役のデニス・ニェダク。あら?名前打ち込んで変換したらパッと出たぞ。以前にも観て記事に書いたことがあるんだな。でも覚えてない。

  文字入力といえば、Baidu IMEが、ユーザーが打ち込んだ日本語(全角ひらがならしい)を、ユーザー本人に無断で、ユーザーのPCから自社サーバーに自動送信させてた(つまり勝手に記録取ってた)件がニュースになりました。ニュースが報じられたタイミングからすると、わざと首相の靖国参拝にぶつけて中国を牽制しようとした感がありますが、やっぱりヤバい入力ソフトだったか、というのが正直な感想。

  私のPCにもいつのまにかBaidu IMEが入っていました。無料ソフトをダウンロードしたときにインストールさせられたようです。Baiduは中国の「百度」のことだから、百度製の文字入力ソフトだろうことは分かりました。いつのまにかインストールさせられた、しかも中国製。だから不気味に思って絶対に使いませんでした。でもアンインストールもしないでいました。

  それが、今日のニュースを見て速攻アンインストールしました(更にPCの中を検索して、Baidu関連のフォルダやファイルはみな削除。IME以外にもけっこうあるよ)。今日は膨大な数のユーザーが、Baidu IMEをアンインストールしたに違いない。

  中国で普通にやってるのと同じ感覚で、ユーザーが打ち込んだ文字の記録を勝手に取るなんて、そういうことしちゃダメなんだよ。記録した文字列は日本国内のみで管理している、と百度側は言ってるらしいけど、誰が信じられる?記録のデータを中国側に提供してるんじゃないか、って疑われるのが当たり前でしょ?ぷんすか。

  でも、こんなことをするのは百度だけとは限らないだろうけどね。  

  デニス・ニェダク、顔はダンサーには割とよくいる感じですが、ハンブルク・バレエのアレクサンドル・リアプコに似てる。まず最初に気づいたのは身体の柔軟性。それが身のこなしや踊りにしなやかさとして出てます。マリインスキー劇場バレエのイーゴリ・コルプに動きが良く似てる気がしました。ニェダク、凄まじく上手いです。パートナリングも上手でした。が、こちらはまだコルプほどではないかな。

  ニェダクはコルプほどクセがあってアクが強いことはありません。かといって没個性ということもなく、演技が非常に良かったです。ソロルという人物をしっかりと表現してました。顔や雰囲気がリアプコに似てるので(?)、ノイマイヤーの『椿姫』のアルマンとかもイケるんじゃないの?この人。

  本日の収穫その四。第三幕、影の王国の群舞がこの上なくすばらしかったです!最悪、影たちが登場するシーンで将棋倒しが起きるんじゃないかと思ってましたが、もちろんそんなことはありませんでした。群舞は整然として揃っており、バランスを崩したダンサーは、皆無とはいいませんが極めて少数でした。しかもそんなに大きく崩れてはいません。

  演奏のテンポは全体的にかなり遅いです。第三幕の影の王国も非常にゆっくりな演奏でした。ところが、ダンサーたちの動きは明らかに遅い演奏を前提としたもので、それが凄まじく美しかったのです。不思議なことに、後になればなるほどダンサーたちの踊りがすばらしくなっていきます。踊っていくうちにいよいよ集中していくんでしょうね。

  いや、すばらしかった。

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