アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト Aプロ(2月18日)-1
「ラリナ・ワルツ」(振付:リアム・スカーレット、音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー)
アリーナ・コジョカル、ローレン・カスバートソン、ロベルタ・マルケス
ヨハン・コボー、スティーヴン・マックレー、ワディム・ムンタギロフ、セルゲイ・ポルーニン
振付者のリアム・スカーレットというのは、プログラムによれば、ロイヤル・バレエの現役団員で、まだ25歳の若さの男性ダンサーのようです。
この作品は、今回の公演のために作られたものだそうで、もちろん今回が世界初演(というほどご大層な作品でもないですが)です。
男性ダンサーは黒のシャツにタイツ、女性ダンサーは純白のチュチュという衣装です。この衣装にふさわしく、振付も正統派クラシカルな動きで、ダンサーたちが入れ替わり立ち替わり踊っていきます。
音楽はオペラ『エフゲニー・オネーギン』第二幕冒頭のワルツです。だから「ラリナ・ワルツ」という作品名なのでしょう。
華やかな音楽に乗せた美しい振付の踊りです。このようなガラ公演で、観客をウォームアップさせるのにはふさわしい作品だと思います。
いくらロイヤル・バレエやイングリッシュ・ナショナル・バレエのダンサーたちでも(←ごめん)、今回出演しているのは精鋭ばかりです。みなすばらしい動きで、ダイナミックで華麗に踊っていました。
「ゼンツァーノの花祭り」(振付:オーギュスト・ブルノンヴィル、音楽:エドヴァルド・ヘルステッド、ホルガー・シモン・パウリ)
ヨハン・コボー、ロベルタ・マルケス
コボーの踊るブルノンヴィル、まさに「待ってました!」という感じでした。ごめん、マルケスのほうは、あんまり見てなかったです。
ペアを組んで踊る相手としてのコジョカルに言及するとき、コボーは自分との年齢差を口にすることが多いです。
つまり、自分のほうがかなり早く引退することを念頭においているようなのですが、男性ダンサーの年齢が最初に出るのは跳躍力のような気がします。その他の動き、たとえば回転や足の細かい動きなどは、40代以降でもそんなに衰えることはないんじゃないでしょうか?
コボーの踊りは非常に見ごたえがありました。上半身を動かさず、両腕もかすかに内側に曲げて前に垂れた姿勢で、脚だけを動かして踊っていきます。両足を細かい複雑な動きで打ちつけたり、上半身の直立不動を保ったままジャンプしたり、節度と品の良さを感じさせる動きで回転し、足元が崩れることなくぴたっと静止したり、ほんとに精緻で端正。
ああ、コボーの踊る「ラ・シルフィード」が観たいよ~。
『眠れる森の美女』より「ローズ・アダージオ」(振付:マリウス・プティパ、音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー)
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー、スティーヴン・マックレー、ワディム・ムンタギロフ、セルゲイ・ポルーニン
ふと気になったのが、ヨハン・コボーはこれで3作品連続出演なわけで、いつ衣装を着替えているのか、と。
前の作品のカーテン・コールに出なかったりしたので、その間に手早く着替えているんでしょうね。大変だな~、と他人事ながら思いました。
両手に花、という言い方がありますが、これはその逆で、しかも倍増してる(笑)。4人の王子がこれほど豪華キャストなローズ・アダージオは他にあるまい。さすがロイヤル・バレエの女王、コジョカル様です。
4人の王子がすでにこの面子だと、本命王子が出てくる第二幕を待つまでもなく結婚してもよさそうだ。
王子役の4人はあのヘンテコ衣装で出てくるのかと思ったら、そこは工夫していて、4人とも現代風の白いシャツに黒いズボン、腰に紅いバラの花を一輪挿しこんで登場しました。そーだよね、あのヘンテコ衣装だと、あれだけで荷物が無駄にかさばるもんね。この衣装は、小才のきいた工夫だと思いますが、なんかハンパにダサいのがまたいいですね。特に真紅のバラ一輪には、昭和のホストクラブを彷彿とさせる場末感が漂っていました。
この紅いバラの王子4人を見て、なぜか「オレたちひょうきん族」の「フラワーダンシングチーム」を思い出しました。(黒い海パンに工事現場用ヘルメットをかぶり、紅いバラを口にくわえて踊ってた連中。…若い人はわかんないよね。ごめん。)
コジョカルは淡いピンクのチュチュ姿です。
4人の王子の中に、「オーロラ姫サポート担当王子」がいるじゃん。あれはやっぱりヨハン・コボーでした。このへんから、コボーがコジョカルの保護者というか、ほとんどお父さんに見えてきました。コボーは頼りがいがありそうだし、包容力もありそうです。サポートも磐石。ろくろ回しサポートなんか、何回転するの~!?というくらい、コジョカルがぐるぐる回ってました。
コジョカルのバランス保持力も物凄かったです。ぜんぜんグラつかないんですね。最後は王子の手を借りずに、アティチュードからアラベスク。
ただ、今のロイヤル・バレエで上演されてるモニカ・メイスン版はこうなってるんですか?イギリス系統の『眠れる森の美女』では、オーロラ姫は王子たちの肩を支えにせず、自力でアラベスク・パンシェをすると思い込んでたのですが、コジョカルは王子たちの肩に手を置いてやってました。
細かいことだろうけど、自力アラベスク・パンシェは、イギリス系統の『眠れる森の美女』で私が好きな点の一つなので、ちょっと残念でした(細かくて本当にごめんね)。