白鳥の湖

  休憩時間は延長です(笑)。

  今日(8日)、マリインスキー・バレエの「白鳥の湖」を観てきました。オデット/オディールはウリヤーナ・ロパートキナでした。ジークフリート王子は、予定ではダニーラ・コルスンツェフだったのですが、彼は足を怪我してしまったそうで、当日になってエフゲニー・イワニチェンコに変更になりました。

  マリインスキー・バレエの全幕物の公演では珍しくないのか、他にも4人のキャストが変更になっていました。でも、大きな白鳥役でアリーナ・ソーモワが急遽出演して、明らかに他の3人とは違ったすばらしい踊りを披露していました(他の3人ももちろんすばらしかったですが)。

  変更になったのはキャストばかりではなく、舞台装置もでした。予定ではイーゴリ・イワノフの装置だったはずが、「本日の公演ではシモン・ヴィルサラーゼの装置を使用いたします」という紙が貼ってありました。同じ作品なのに、舞台装置を何種類も持ってきたのでしょうか?

  当日になっていきなりジークフリート王子役が変更になって、ロパートキナとのパートナーシップはどうなのかな、と少し不安でしたが、結局は何の問題もありませんでした。

  代役で出演したとはいえ、エフゲニー・イワニチェンコはとても落ち着いており、ロパートキナに対するリフトとサポートは非常に安定していました。テクニックも無難にすばらしかったです。
  特に良かったのは、ジークフリート王子の役作りがとても細かかったことです。一瞬たりともジークフリート王子であることを忘れない、隅々まで行き届いた綿密な演技を見せてくれました。

  ロパートキナは、オデットのときもオディールのときも清潔感溢れる優雅な気品が漂っていました。

  オデットのときは表情を微妙に変えるだけですが、それでもオデットの悲しい身の上と心情が溢れ出ていました。第三幕のラストでは、王子に抱え上げられながら、毅然とした表情でロットバルトを見下ろし、ロットバルトはそれではじめてたじろいで魔力を失っていくのです。

  オディールのときは、あからさまに邪悪な表情を浮かべることなく、あくまで気高さを保って王子の心を惹きつけていく演技をしていました。それが、王子がオディールに愛を誓った途端、目を大きく見開いて、はじめて邪悪な微笑みを浮かべるのです。とても迫力がありました。

  ロパートキナはテクニック的には体育会系ではないようで、黒鳥のパ・ド・ドゥでは、王子に腰を支えられてアティチュードをしてから、そのまま両脚を交互に前に高く上げる、という踊り方をしていました。

  ただし、彼女のバランス・キープの能力には驚くべきものがありました。片足ポワントでポーズを取ったまま、1秒以上も静止しているのです。彼女の身体はビクとも動きません。黒鳥のパ・ド・ドゥのヴァリアシオンで回転するときも、ゆっくりなスピードなのに、決して足元はグラつきませんでした。

  それから、ロパートキナの腕はしなやかに波打ち、実に美しかったです。また音楽に合わせる能力にも秀でています。音楽に少し遅れても、瞬時に踊りをアレンジして合わせてしまうのです。アレンジといっても、振付を変えるのではなく、踊り方を変えるのです。それが非常に巧みでしかも美しく、踊りの途中であるにも関わらず、ブラボー・コールが飛んでいました。

  第一幕の王子の友人たちによるパ・ド・トロワでは、ウラジーミル・シクリャーロフが登場しました。さすがに王子のご学友ですから、「オールスター・ガラ」のときのように、これ見よがしに力任せなテクニックを見せつけるのではなく、あくまでお行儀よく品位を保って踊っていました。

  あとは道化役のアンドレイ・イワーノフがすばらしかったです。第一幕最後での連続ピルエットは目にも止まらぬ超高速で、観客の大喝采を浴びていました。

  白鳥の群舞はとてもすばらしかったです。みんな動きがよく合っていて流麗だったし、そのせいかポワント音も響いたことは響きましたが、あまり気になりませんでした。むしろ、たとえばシルヴィ・ギエム一人のポワント音のほうが、彼女たち全員のポワント音よりもデカいくらいです。

  マリインスキー・バレエの「白鳥の湖」はずっと観たかったので、今日その夢がようやく叶って、とても満足しています。
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