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遺恨の譜

2018-06-21 01:39:32 | 読書録

遺恨の譜

講談社

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歴女を中心に人気のある幕末ですが、その幕末の闇を描いた短編集です。
あれだけの時代の変革を伴ったのですからきれい事で済まされるわけがないのは承知をしていますが、実際にそれを目にすれば暗いものが胸に残ってしまいます。
坂本龍馬、高杉晋作などの一部を除けば生き残った者のみが名を残した刻でもあり、裏を返せばその陰に隠れてほとんど名を知られない志士たちも少なくありません。
そういった志士たちの奮闘があってこその維新、その無念がひしひしと伝わってきます。

表題となっている遺恨の譜、よりも、古心寺の石、の方が心に響きました。
福岡藩の支藩である秋月藩、その重臣である臼井亘理はしかし藩内の守旧派から西洋亘理と蔑まれ、そして憎まれるほどの先進的な考えの持ち主で、信頼をしてくれる藩主の命で京都での政治工作、大久保一蔵や三条実美らの知己を得て出遅れていた秋月藩の地位を確かなものとします。
しかしその藩主の心変わりにより守旧派に暗殺され、後にその嫡男が実行犯を討ち果たした事件は「最後の仇討ち」とされているとのことです。
数年前にドラマ化をされたようですがwikipediaで見てみれば原作ではさらっと書かれている仇討ちをメインにしているようで、しかしこの作品はそこまでに至る臼井亘理の省みる一癖はありながらも藩を第一に考えた開明的な行動力、を敵対していた水上小四郎の目を通して描いています。
時代の流れから取り残された田舎藩の頑迷さ、と言ってしまえばそれまでですが、薩摩藩や長州藩であっても同様の対立はあったわけで、その田舎ゆえに、また維新前に世を去ったことで志士の間でも名高かった臼井亘理が忘れ去られている、維新の嵐でも出てきた記憶がない、その現実を痛感させられました。


2018年6月19日 読破 ★★★★☆(4点)



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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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History teaches us nothing (あーるつう)
2018-06-24 10:55:44
村長さん、ご無沙汰しております。
あーるつうです。

「老後」を始められたとのこと、長いお勤めお疲れ様でした。定年をかなり前にしてのご勇退だったご様子、「老後」ではなく【隠居】の方がしっくりと馴染むような、いかがでしょうか。

自分は幕末関連は好みのジャンルでは決してなく、せいぜい「燃えよ剣」を一気読みした位でしょうか。潮目を読めなかった会津、意見が違えば殺してしまえの短絡的発想などなどが引き起こす悲劇、ちょっと苦手なんですよね。
埋もれた歴史を掘り起こす、そこから学ぶことは、きっと現代という大きな転換期、後に歴史となってから大きく舵が切られたのだったと気付く時に、愚かであったと思うことを少しでも減らすために必須なのだろうと思うことしきりです。
名を残すことのなかった人々の奮闘と無念、うーん、星4つか、うーん。

事故の影響はもうないのでしょうか、遅まきながらお見舞い申し上げます。
夜間のお仕事も始められたとのこと、体調管理にはくれぐれも怠りの無いようお願いします。

お返事 (オリオン)
2018-06-25 01:06:32
印籠でも作りますか、助さんと格さんも欲しい(笑)
短絡的な発想がもたらす悲劇、この作品はまさにそういった題材が多いです。
また会津からすれば裏切り者、恨み骨髄に徹す、の薩摩の表裏卑怯なところも描かれており、そういう意味ではあまり幕末ファンの視点では受けがよくないかも。
沖田総司の最期、に見せる人間臭さと言いますか、ちょっと身近に感じられるエピソードはいいかもしれません。