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Couleurs de la France(フランスの色彩)

2010-10-17 22:10:35 | 書籍紹介
フランスのカラリスト、Jean-Philippe Lenclos(ジャン・フィリップ・ランクロ)氏。地域には地域の色があるという“色彩の地理学”を提唱し、独自の環境色彩に関する方法論を構築された方です。私の師匠はランクロ氏のアトリエに研究留学をしていました。今から35年以上前のことになります。

ヨーロッパ全土、さらには世界各国のまちなみの詳細な色彩調査を実施し、その調査の様子や結果をまとめた写真集が3冊、刊行されています。残念ながら現在は絶版になっており、古書でしか入手できないようです。

全編フランス語ですが、各ページにはカラー写真や図版が満載で、私の中ではこれは立派な写真集の扱いです。今から10年以上前、シリーズ1巻目のフランスの色彩、2巻目のヨーロッパの色彩、合せて2万円位だったと思いますが、入手しておいて良かったと思っています。



購入した当時は、“ヨーロッパの街並みはなんて美しいのだろう”という思いが圧倒的であり、時折開いては自身が日頃眼にしている周辺の街並みとのあまりの違いに溜息をついたりしていました。2巻目のフランス全土になると、それぞれの街並みが本当に個性豊かで、美しい自然景観と共に風景画のようであることに心打たれたこと、今でも鮮明に覚えています。

ですが、3巻目の“世界の色彩”が発行されたあたりから、自身の環境色彩に関する考え方が変わって来ました。この世界の色彩には日本の街並みも紹介されています。室津という古い漁村なのですが、木造の住宅が建ち並ぶ日本の伝統的な街並みが、ランクロ氏の色彩調査によって紐解かれ、切り取られた色彩が美しいカラーパレットを構成しています。

ランクロ氏の色彩調査の手法(素材にも注視し、ミクロな視点で色を取り上げていく)は仕事を始めた時から教え込まれていましたし、日本の古い街並みの調査も体験していました。ですが、最初の10年くらいは『自分自身の眼では見ていなかったのかも知れない』、と今になって考えています。色々な情報や景観とはこうあるべきであるという思い込み、固定観念。その国や地域の歴史や文化に対する知識の少なさが見る眼を曇らせていたのだと思います。

そこにあるものをありのままに捉え、新しいものに繋ぐべき要素があれば、それを拾い上げ丁寧に磨いて汚れを落とす様な気持で、新しい素材や形に置き換えていく。まちは生きており、私が暮らす日本・東京という都市はその生き物としてのスピードが、若干(ある部分は相当)早いのだということ意識しなければなりません。
今を生きる自身の眼の前にある風景を、その成り立ちを正しく公正に見つめること。今はこの本を見返すたび、欧州に対する羨望ではなく、丁寧にまちを見ることの大切さを教えられる思いが強くあります。
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